未帰還者35
大山が不満そうにそう言ったのを西園君が手で制した。
「いやいや、大山さん。このカードゲームはここからが怖いんだよ」
「まぁ、上手く引けばの話だけどな」
「またまた、そんなに低いレベルのクリーチャーしか居ないならそのデッキ、もう決まってるじゃん」
流石に現役バトラーの西園君には此方の魂胆がバレてるみたいだな。
もうこうなっては4枚のデッキで打開するには切り札を引くしかない。
だが、その切り札はとっくに裏側の失点カードになってしまっているかもしれない。
今までの素早さがなくなって、ゆっくりカードを引いた。
そして更にカードを3枚裏側にして置いた。
もうデッキは1枚っきりだ。
「本当に!?勝ち!?」
そういって西園君が身を乗り出した。
よほど嬉しいらしい。
そんなに興奮する事だろうか。
「まぁ、仕方ないよね」
俺は捲ったカード以外のカードを片付け始めた。
最後に引いたカード…クリーチャーレベル1、墓場の番人。ブラック・セメタリー・ファング。
西園君は2回目の登場、レベル5スピアーエンジェル。
「僕はじめてだよ、アーベルンゲンだした試合で負けたのは!」
「まあ、数少ない逆転効果持ちだからね」
墓場の番人。ブラック・セメタリー・ファングは、捲った後、自分のデッキから3枚を裏側で捲ってその上に置かなければならない。
その後自分のデッキが30枚を下回ったならレベルが7になる。
3枚捲って0枚になったらそこで負けになり、試合終了。
俺のデッキ枚数は1枚だ。
更に数字比べで勝った時、お互いに自分の捲ったカードをデッキに戻して混ぜる。
ブラック・セメタリー・ファングが出た時のお互いのデッキ枚数を入れ換えた数になるまで、裏のままめくる。
つまりデッキの残高が敵味方で入れ替わり、今まで表側で出したカードも墓場の番人の効果では裏側でめくる為に、失点がお互い増えるのだ。
よって、西園君のデッキは墓場の番人を出した時の俺のデッキ枚数である1枚になる。
失点カードは49枚。
次のクリーチャーを出したら、デッキが無くなる為に失点49枚で試合が終わる。
その為どうやっても俺の勝ちになる。
効果を使うと、今まで使った切り札を敵味方問わず再利用できる可能性があり、
引いたタイミングが悪いと自分の失点を急激に増やして自らの首を絞めかねないと言う理由で、使いづらいカードとして見捨てられていたのだが。
イラストと効果のユニークさで俺は好んで使っていた。
此方の出したカードのイラストには、墓の上に死神が退屈そうに座ってローブからドクロの虚空な双眼でどこかを遠望しながら鎌を担いでいた。
ドクロの癖に退屈で死んだような顔をしているような哀愁漂う印象を受ける、そんなイラストだった。




