死神2
難なく目的の品を手に入れ、家路を急ぐ。
駅から自宅までの方が学校の帰路に比べて大分距離がある。
実際、近いからあの学校にしたのだ。
そう言えば、最近行方不明者が増えてるそうだが、こういう帰路の途中で事件に巻き込まれるのだろうか。
日射しが眩しくなってきた。
もう夏休みだし、全力で過ごさなくては。
だらだらするのも良いが、疲れた時だけにしよう。
明日は詳しい予定を立てて実用的な生活を……。
「あっ」
俺の思考は、目の前に存在する害悪のせいでそこで止まった。
「えっ………」
自宅の前の通りで、女の子の声に反応してそちらに視線を移した。
「大山……さん」
先ほど、別れたはずの大山が玄関のドアノブを握っていた。
しまった。真っ直ぐ家に帰るだろうと考えていたのに、コイツも寄り道してやがったとは。
しかも帰宅する時間が被っただと?
「あれ~?学校から帰る時、そっち方面からだと遠回りだよね~?」
なんか知らんが勘ぐってるぞこの女。
そもそも何故直ぐに帰らない?
何かニヤニヤしながら半目で見てくる大山に、普段温厚で済ましてる流石の俺も、内心殺意を覚えた。
直線上ではないが、自宅との間に大山が存在するのがまた厄介だ。
強引に行くにはやや無理があるかもしれないが、やるしかない。
「どーこでなーにしてぇ……」
「お帰りなさい大山さん」
つかつかと自宅に突撃しながら、違和感のない台詞で棒読みかつ口早に遮る。
まったく……そもそもこの女はイレギュラー過ぎる。
隣の家に住んでるなんてまったく馬鹿げてる。
大山はドアノブから手を離して通りに出ようとしてる。
素早く加速する俺、というか短距離ながら全力疾走した。
「逃がすかあ!」
道に素早く大山が両手を広げて妨害を試みる。
このままじゃ突っ切れそうにない。
ならば!
左に大きくステップを踏む。
「見切ったわよ!」
バカめ!
左に大きく曲がって大山を引き付けておきながら、足のスナップと重心移動を余すことなくつかって右へスイッチする。
その注意がそれ、がら空きの右側へ全速力で抜けた。
「フェイントだよ」
すり抜き様に一言言ってやった。
「しまっ!?」
驚愕しながら足をもつれさせ、大山が転んだのを後ろ目にしながら駆け抜けた。
もう間に合わないだろう。
俺の家は目の前だ!
鍵を出して挿し込み玄関のドアに滑り込み素早く閉めて鍵をかける。
一連の動作、僅か0.8秒。
……だと思うくらい速かった。
今が人生で多分一番高速で動いた気がした。
勝利の余韻と大山を撒いた安堵から深呼吸をし、靴を脱いで2階に上がる。