未帰還者33
「げげっデカイ虫……」
大山はバッタを見て酷く尻込みして居る。
虫は苦手らしい。
この隙に置いていこうか等と考えたが直ぐにやめた。
どうせお互い、行き先はわかってるんだ。
逃げたところで見つかってしまうだろう。
そうして考えてる間にバッタは反対側にある青々とした田んぼに飛び込んで行った。
恐らく水地は苦手だろうから草に飛び写ったのだろうが、綺麗に擬態して消息がわからなくなった。
2人してバッタを見送ってからはお互い言葉もないままに西園邸にたどり着いた。
「庚君!……大山さんもいらっしゃい!」
玄関で出迎えたのは今回は、やたらとニコニコした西園君本人だった。
前回お邪魔した際、全くの空気だった大山は名前がでるまで少し間を要した。
「急にすまないな」
部屋に通され、腰を下ろしてから通過儀礼の様な挨拶をした。
「大丈夫だよ、どうせ暇だもん」
「なら学校来なよ、休み時間バトルしようぜ」
なんて楽しそうに言ってやると、デッキをシャッフルしながら西園君は少し眉を下げた微笑みを向けた。
どうやら早くカードで遊びたいらしい。
「あはは。まあまあ、早速だけどバトルやろうよ」
向こうは単に俺の事をカードゲームができる楽しい相手位の認識しかないだろう。
もう、我慢しきれないようだ。それだけ西園がカードゲームに入れ込んでると言うことか。
俺は了承して、鞄から輪ゴムで留めたカードの束を自分の正面に横向きに置いた。
デッキをこう置くのは最初期のルールである、スピードだ。
デッキの上からカードをめくり続け、やり取りをするのだ。
西園君もデッキを角が向かい合い、カード一枚分の隙間を空けてチェック柄になるように置いた。
このカードゲームを簡単に説明すると、同時にカードを捲ってデッキの前に置く。
カードに書かれたクリーチャーレベルと言う数字が大きい方が勝ちで勝った方のカードに書かれた数字の分、負けた方はデッキからカードを裏向きのまま捲っていく。
この時点で、特別な効果を発動するカードもある。
どちらかのデッキが尽きたらそのゲームは終了。
捲ったカードの内、裏向きのカードを数えて裏向きが多い方が敗けといった具合だ。
西園君はカードバトル本当に楽しみだったようで、やや顔が上気していた。
お互い、自分のデッキに手を添える。
「せーの…」
「「バトル!!」」
バトル開始の声が重なると同時に素早くカードを置いた。
此方のカードはカード上部に、3と大きく書かれその下に頭が沢山ある竜が描かれたカードを引いた。
クリーチャーレベル3、ヒュドラベビー
相手も3と書かれたカードだった。
絵柄はタンバリンを持った天使だった。
クリーチャーレベル3、リトルミューズ。
お互い一番目のレベルは同じなので、お互いとも自分のデッキからレベルの数だけ裏向きでカードを捲る。




