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紅蓮色の空  作者: 蒼の矛
未帰還者
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未帰還者27

雲が一つも無い空。

何か良いことが待っているような気がする程だ。


良いことなんかあるものかと、にらみ返した。

段々と突き抜けるような青い空が俺を嘲笑っているような気がしてきた。


なんだかムカつく。理不尽に腹が立った。


苛立ちを風で払拭するように寺まで10分程原付を飛ばしていく。


こんな白昼堂々とオフの先生に見つからないだろうな?


本当は校則で駄目だから、昼間は余り乗らないようにしているのだが……。

妹の送り迎えだとか、有事に遠方に親戚に会いに行くだとか、車が乗れないんだからとか、様々な最もらしい理由を着けて、学校側には内緒で移動手段として原付を買って貰った訳だし……。


本来2乗りも禁止されている原付だが、別によかった。


勿論、送迎なんかしない。


俺は買って貰う前の日には大枚叩いて免許を取って来ていた。


自分一人でどこへでも行きたい欲には抗えない。

この辺りは駅までいかないと、住宅や空き地ばかりで何もなくて退屈だし。

遠くの廃墟に惹かれて入り浸って時間を潰せたしなあ。


寺の下の茂みに原付を停めて、手摺が蜘蛛の巣でコーティングされた階段を登る。

津波のように押し寄せる蝉時雨にため息をついて、寺を目指す。

昨日居た人物はここを通らなかったはずだ……なら、どこから?


木漏れ日に照らされた石の階段は本当は、石ではなくモルタル製の様だとわかった。


黒くくすんで凸凹しているので、てっきり石製の足場を並べただけだと思っていた。

なんだかこうしてみると、この場所も心地好い。

木漏れ日が良いアクセントになっていて、なんとも言えない安堵感が身体を満たしていた。


右手には、森のうっそうとした闇の中に大きな水溜まりの様に日が差した場所があり、そこに苔と蔦に覆われた大木が立っている。

その蔦には白い花が咲いている。まるで、別の世界に迷い混んだ様だった。

この光景が美しいとさえ思った。


自分一人の世界に入り込める。

巨大な遺跡が大口を開けて待っている気がした。


遺跡や廃墟は神秘的だったりして、なんとも表現できない魅力がある。


自分の部屋よりよっぽど落ち着くのだ。


寺まで着くとその気持ちを心の底にしまって、目の前の本殿を目指した。


大山は徒歩だろうから、まだ来ないだろう。


ミイラから情報を得る。


……人喰い寺。

本当に人喰い寺が人を喰って、彼らはその被害者なのか。


本殿の中は屋根が割れて、日の光が真ん中を照らしていた。

劣化したのか、黒く変色した仏がミイラを見下ろしている。

その横の掛け軸は外れて、ミイラの下敷きになっていた。

それとは反対側に袈裟や杯等の仏具や、提灯や小さな神輿と言った祭具の類いが押し固められている。


どうやら祭事の関係者が住職だったようだ。

今はその祭りはやらないのだろうか…

それとも祭具は新調してあるのだろうか。


見下ろすと、俺が時計を触った女性は左手を失ったままうつ伏せに倒れていた。

黒いタンクトップに短いジーパンで、いかにも今風な格好だ。


……え?


おかしい、これはどういった事だ

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