未帰還者26
妹はどうやら、朝から出掛けている様だ。
アイスココアを注いだグラスを手に自室の机に着くと、迷わず昨日の事を思い返す。
あの赤いヤツ。
黒い羽、ハンマーのような円柱の肩、赤い服、黒い顔。
それから、ミイラ化した死体。
今ここで考えてみると状況証拠だけで、それ以外の裏取りが何も取れていない。
まず、寺にあったもの……。
中にはいると本殿の中にはミイラになった死体が複数あった。
正体不明のあの赤い奴……。
くそ、これだけでは仕方がない……。
事件の全容が全然明らかにならないな。
これはもう一度、あの死人だらけの寺に行く他ないな。
西園の事もしらべないと……
竹中なら何か知ってるだろう。使うか。
そう思って竹中にメールを送信した。
「ん?」
電子音が定期的に鳴り、携帯が震える。
これはメールではなく、電話の着信だ。
「竹中か?早いな」
「事件は現場で起きてる!行こう紫苑!」
うっわ……大山だよ……。
通話ボタンを押したら、昨日散々聞いたあの忌々しい声がした。
思わずゾワっと鳥肌が立つ。
気持ち悪い、気持ち悪い……。
チクショウ、出る前に画面見りゃよかった……。
自分の迂闊さに一瞬たじろいでしまったが、俺は気付けにココアを一気飲みしてから、捲し立てた。
「掛け間違いだ。俺はお前に紫苑呼ばわりされる覚えはない。別の紫苑さんと間違えているんじゃないか」
「そんな事ないよー。私、紫苑って名前の友達は紫苑だけだもん。うふ!昨日は一緒に帰ってくれてありがとっ!」
くっ……昨日おぶって帰った事か。
あれはああでもしないと、色々不味かった。
大山をあのまま残して帰って、もし何かあったら俺が責任を問われる可能性があったからだ。
それを勘違いして、この女は付け上がっているのだ。あれだけの罵声を浴びせたにもかかわらずに。
やっぱり、リスクを省みず置いておくべきだったか。
だがもう、そんな後悔は役に立たない。
「なんの用だ」
「冷たいなあ紫苑は。まあいいや。昨日のお寺に行くんでしょ?」
「さあな」
「じゃあ、今度こそ私と行こうよ!」
「一人で行ってこい」
俺は電話を切った。
つくづく読めない奴だ。
馴れ馴れしいし着信拒否にしてやろうか。
名前呼びも止めないし。
一緒に寺には行かないと言った筈だ。
これは誘われて断ったのだ。
一人で行って、危ない目に巻き込まれても知ったことではない。
あっ……しかし、昨日の時みたいにミイラが見付かる心配があるか。
……先行して寺に行き、待ち伏せするしかないか?
くそ、仕方ない……。
まぁいいさ。調査もかねて、日が出ている内に済ませてしまおう。
今日は空は憎たらしいほどの快晴だ。
これなら昨日よりは周りがよく見えるはず。




