未帰還者17
「ふえ?ん~とね、8時かしら?何で?」
人差し指を顎に当てて、天井を見上げてそんな事をいう。
「いや、気づかなかったなーって」
流石に22時回って連絡無かったら一応、心配してこちらから連絡入れた方が良いだろうからな。
まぁ、外泊するなら出掛ける際に言うだろうし、妹が彼氏と何をしていても俺には関係ない。
保護者としてだが。例えば一線を越えた末、病気を移されたりしたら流石に話は変わってくる。
それでも本音は他人事だ。
何をしても自己責任、だからこそしっかり育って欲しい。
「ふぅん。ねぇねぇそんな事より兄さん!」
妹はなにやら、目を輝かせている。
この目は恋愛関係の話しか。大山と言い、その手の話が好きだな~。
彼氏のおのろけでも聞かされるのか。
それとも大山と出掛けた事についてか。
「おう?」
「大山さんに聞いたんだけど!大山さんとチューしたって本当!?」
……あ?
ちょっとまて、予想からかなり大きく外れた質問が来たぞ?
予想では今日のデートで大山とどこまでいった?という類いの質問のはずだ。
デートなぞではないが。
なに?チューした?俺と大山が?
いや、そんな記憶はない。
と言うかキスどころか手すらも繋いでねーし、繋ぐ気もない。
大山め。
なんのつもりか知らんが、やっぱ一発殴った方が……、いやいや、落ち着け冷静になるんだ。
今は妹をなんとかせねば。
「しかもマウストゥマウスで!」
ああ、殴っただけじゃ足りないな。
最早、殺害するしか手段がない。
そっと妹の肩に手を置いた。
「わかった、わかったよ妹よ。お前は大山みたいなアホになるなよ?」
「え……兄さん?何が?何がなの?えぇ?」
「あぁ、あと今夜も用事あるから」
それだけ言って一方的に会話を終了させ、食事を掻き込んで、さっさと部屋に退散した。
おのれ大山。
あることないこと言いふらしやがって。
いつかこの死神を差し向けて斬り裂いてやろうか。
ああもう!
頭を振って考えを切り替えた。
取り敢えず、出掛けるのは1時からで良いか。
一度寝よう。
ベッドに飛び乗るなり、携帯のアラームを掛け、目を閉じた。
†
アラームを止めて起き上がると、携帯をポケットにしまう。
「……時間か」
夢の時間が短い。
レム睡眠が長かったのかも知れない。
要するによく寝たという事か。
出掛ける前にキッチン降りて、冷蔵庫にあったアイスコーヒーを飲み干した。
眠気覚ましだ。
そうだ、今日は学校はやめとこう。
また昨日の奴が待ってるかもしれない。
いい場所ないかな?
生暖かい風が、ねっとりと、まとわりついて巻き付いてほどけるように流れていった。
夜なのに蒸し暑いな……熱帯夜か?
さっきまでエアコンが効いてた室内に居たから、気づかなかった。
「紫苑……?」
行く先に困りながらも玄関の鍵を掛けて、通りに出ると頭上から大山の声がした。
2階の窓からこちらを見ているんだろう。
そうだ、大山は今朝、心霊スポットに行こうとか言っていたな。




