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雨3
まずい!
残った片手で鎌を振りかぶっている。
「あ、やめ」
私の制止は無意味だった。
言い終わらぬ内に、空中で身動きの取れないまま少尉の首はフードごと切り分けられ……
無残にもシールドを飛び越え、メンテナンス通路から飛び出して、線路の片隅の闇の方へと吸い込まれていった。
「……だから、無駄だと……言ったんだ」
少年は頭痛のダメージで息も絶え絶えながら、無関心そうにポツリと呟いて、私をすり抜けてホームへ歩いていった。
死神は真っ赤に濡れた、身体だけとなった少尉を地面に叩きつけ、その拍子に腕に巻かれていたデバイスを破壊された。
それは操っている少年の狙い通りだったのか。
それとも鎖から死体を放すために偶然そうなったのかはわからない。
使用者が亡くなってしまって、物理的な干渉が大きく限定されている私には、それを見ている以外どうする術も出来なかった。
デバイスが破壊され、私はここから消える。
当然、シールドも消える。
私を通りすぎた少年は自由になってしまう。
私の思考はここで止まった。