未帰還者14
まず、里中の起こした事故に付いては、此方で昔の地方紙を探してみよう。
そんな事を考えながらメールの本文を打っていると、玄関の開く音がした。
妹が帰ってきたんだろう。
「兄さーん?帰ったのー?」
案の定、玄関から妹の声がした。
玄関に降りると、かなりよそ行きの格好をしている。
「あぁ、デートか」
「うっ……流石わが兄……」
たしかコイツには彼氏が居たな。
えーと、なんて名前だったかな……
まあいいや。
晩飯の事だろう。
わざわざメールで済むのに、こうして顔を出すとは律儀な妹だ。
「いーよ、晩飯はなんとかするさ」
「うぉっ!そこまで見抜かれるとは」
腕を上げて大袈裟なリアクションを取る妹に笑顔を向ける。
「気を付けて行ってこいよ」
「うん!行ってきます!」
妹も笑顔で答えた。
俺みたいな作り笑いでなく、本物の笑顔で。
ドアが閉じ、薄暗い玄関に静寂が降りた。
その表情を見るとほっとする。
あの子はどうにか、真っ当な性格に育ってくれてよかった。
俺みたいな歪な性格でなくて本当によかった…。
そう思うのだ。
俺は他人と関わって自然に笑うことは殆ど無くなった。
……まぁ、悲しきかな。俺も人の子だ……。身内くらいには情を持つのも良いだろう。
…………だが、もし、邪魔になるようなら考えなくてはならんが……。
とにかく、今は敵の襲来に気を使うべきか。
俺は握ったままの携帯の送信ボタンを押した。
そういや竹中にはCDを貸す約束をしてたな。
とっとと貸してしまおう。
自室に戻って、デスクトップを立ち上げる。
どっかに過去の記事が掲載されているはずだ。
ここの地方紙は確か……。
そうだ。
出版元の公式サイトに過去の記事が乗っているだろう。
しかし、事故のあった日がいつだかわからないからな……。
6月21日より前の記事を遡るしかないか。
骨が折れそうだなあ。
マウスをしゃかしゃか動かして、画面を切り替えて地方紙の公式サイトを開く。
見てみると、文章を打ち込む場所がある。
唯一の救いはニュースのジャンル別、日付別に検索出来る事ぐらいか。
里中が行方不明になったのは鑑別所を出て、登校し始めた後のはずだ。
現に俺は7月末にしては珍しく涼しい日に彼と一度すれ違った事がある。
あれは移動教室だったかな。
さて、長い戦いを始めるか。
ヤマを張るとしたら、去年の頭ぐらいか?
1月1日、ここから交通事故の記事を検索した。
交通事故……吉根美山の山道で乗用車が落盤。
違う。
駅前交差点で午後14時半頃、児童ら5人を跳ねて死亡させた……トラックの運転手……。
これも違う。
里中が起こしたのはオートバイの事故だ。




