未帰還者13
ともあれ、西園が馬鹿なボンボンやモンスターペアレントでなくて良かった。
もし問題があったら今頃、内心穏やかじゃなかっただろう。
「にしても紫苑は凄いなあ」
そんな事を考えていると、大山が呟く様にそう言葉を掛けてきた。見ると、うつむきがちに自分の爪先の辺りを見ながら、歩いている。
「何が?」
「西園君の事がよ。私全然お喋り出来なかったのにさ、ズバズバ仲良くなっちゃうんだもん。凄いよ」
……お喋りか。
人嫌いの俺には蛇足なスキルだが……。
人嫌いを隠せるので都合はいいかも知れない。
「たまたま話が合っただけだよ、買い被らないで欲しいな。例えば俺は大山の女友達とこうまで上手く話せるかと言われたら、自信はない」
ま、そんな機会は恐らく無いが。
と言うかあってたまるか。
どうせくだらない話に付き合わされるだけなんだ。
女というのは凄い。三人寄ると姦しいとも言うが、膨大な会話力を持ち、話題をポンポン出しては何時間も喋り続ける。
男性とはその辺、頭の構造が違っているのかもしれない。
いや、単にコミュニケーションスキルが高い傾向にあるという事なのか。
とにかく、そんな渦中に放り出されるなんて真っ平御免だ。
「ふぅん。ねぇ6月21日ってなんの事?」
……感付かれたか?
「彼がまともに登校した最後の日だ」
「ねぇ、それって……確かさぁ……」
やはり感付いたな、この女。
やれやれ、少々面倒だぞ?
まぁ事情を知っていればバカでも分かるか。
「その日ってさ……里中先輩が居なくなった日だよね」
不安げにこちらをみる大山。
やはり西園が事件に関わっているのか気になるんだろう。
……厄介だがここまで知られては仕方ないだろう。
「まあ、偶然だろ?西園を犯人みたいに扱うのはやめようぜ」
そうは嘯くが、そこが一番の……いや唯一の興味を惹かれる点だ。
竹中に恩を売っておく以外に、この厄介事に向き合う理由であり、原動力だ。
大山は悪者扱いされた事に怒って、不機嫌そう何やら言うだけ言ってそっぽ向いた。
家に帰ると、誰も居なかった。
多分、妹は友達とお出かけかな。
幸い不機嫌故、大山は大人しく帰っていった。
まだ11時半か……。
この厄介事に興味が沸いた事だし、日中は西園の周辺状況を洗ってみようか。
西園の不登校になった時、里中は何故行方不明になったのか。
里中先輩はたしか不良の生徒で、後輩から金を巻き上げるような奴だ。
その上、一度オートバイの無免許運転で事故を起こしたとかって聞いたが。
停学したとか鑑別所行きになった……とか噂があるらしいが実際の事はわからない。
……少々裏を取るかな。
手始めに、里中のプロフィールを集めよう。
竹中にメールを打つことにした。
里中先輩と西園の不登校についてと、里中先輩の事故の状況。
竹中はその社交性から顔が広い。
先生方にも顔が利く。
もしかしたら聞き出せるだろうか?
一番確実なのは、里中の親族やら親しい者から聞き出す事だが。
まあ無理だろう。他人のお家事情をずけずけ聞いても答えないだろうし。
とりあえず、竹中には全面的に協力したい旨を伝えておこうか。
そうすれば知ってる情報を少しはしゃべるだろう。
特に、不登校になった原因に関しては。




