未帰還者9
西園邸はなかなか豪邸だった。
来る者も拒む鉄門。
その鉄門の後ろに車6台は詰め込める庭があり、一番奥には3階建ての家。
いいご身分だ。
……西園宗一郎が頭の悪いボンボンだったらどうしよう。
スネちゃま系モンスターペアレントだったらどうしよう。
もしそうなら厄介だな。担任が投げ出したくなるのも頷ける。
竹中も面倒事を押し付けてくれる。のし付きで突き返してやりたいぐらいだ。
妹も危険だし、死神や組織についても調べないと命に関わる今の状況……この貸しは高くつくぞ竹中。
……竹中を呪っても仕方ない。早急に片付けよう。
憤懣を嘆息に乗せて放出しながらインターホンを押すと、庶民的なピンポンという音ではなく、リンゴーンという鐘の音が鳴った。
「音まで豪華なのね……」
大山が感心したように、あるいは呆れたように呟いた。
『はいー』
女性の高い声が聞こえた。
母親だろうか。
「九納屋市立、沢無高校の担任の笹山太一郎先生から頼まれ事で来ました、クラスメートの者です。宗一郎君に会いたいのですが、よろしいですか?」
と俺は言った。
『あら!お電話で伺ってますわ!あがって下さいまし!』
すると頑強な鉄門が開いた。
左右にスライドするのではなく、観音開きで自動なのがまた豪勢さを物語っていた。
にしても、電話で伺っていた?竹中か担任かが事前に夏休み中に行くって言っていたのか?
俺と大山は庭へ歩き出した。
不意に大山のが手がぶつかった。
「あっゴメン紫苑」
「いや」
とだけ返事して豪邸の玄関が開くのを待った。
数秒して、ライオンのノッカーがついた赤茶色の厳かな、木製の両開きのドアが開いた。
中を目だけ動かして然り気無く伺った。
西園家の中に入って先ず目にはいるのは、大理石のクリーム色の床だった。
所々ぼんやりと紫色だったり青だったりするのは何故だろう?
道に沿った赤いカーペット。
そして城みたいな豪勢な階段。
階段の突き当たりにはツボだか何かが飾ってあり、その上にはなんと、贅沢なステンドグラスが日光を彩っている。
床の色が違ったのはそういう事らしい。
なるほど、壁や吹き抜けの二階も厳かな彫刻がなされている。豪邸とかっていうよりまさに教会だった。
一階に視線を戻すと、ロビーから右側にある円柱状の温室には花々が埋め尽くさんばかりに植えられ、その奥にはテラスがあった。
左手には木製の扉が3つある。
「さささ、入って入って!」
玄関口でそう急かす母親と思われる方は、長身で細身だが朗らかな人だった。薔薇をあしらった赤いドレスを着ている。




