未帰還者4
パジャマを脱いで。
クロゼットをあける。
銀の腕時計にワインレッドの半袖シャツ。
黒い折り目の入ったチノパン。
チェーン付きの財布をベルト通しに装着した。
まあこんなもんかな?
こう見えて服には気を使う方だ。
立派な趣味の一つだ。
A4のポートフォリオが入るサイズと言われていたから買ったショルダーバッグを背負う。
この黒茶のレザーで出来たショルダーバッグは、かれこれもう6年連れ添っているお気に入りだ。
小6のお年玉で購入した時は親戚には生意気と言われた。
では行くか。
今日の予定。
先日、竹中との世間話の中にあった例の話だ。
西園 宗一郎というクラスメイトだ。
竹中はクラスの中心人物で面倒見もよく、人柄がよいヤツで、その人望を買われ、クラス委員長もやってる。
そこで西園という人物は何やら不登校の生徒らしい。
担任に頼まれて今度、その生徒に会いに行く事になっていたはずなのだが……
父親が倒れてしまった様で、あまり家から出られないらしい。
そこで、俺に頼んだらしい。
頼まれた物事をどうにかやりとげようという、竹中なりの意地だろう。それに付き合わされる俺の身にもなって欲しいものだ。
近い内にその西園の所に顔を出して、要は登校を促すような説得をしにいく……のだが。
「かったるいなあ」
俺にメリットになることは何もない。するだけ無駄。
それでもやるのは、竹中に恩を売っておく為……。また新学期が始まったら顔を合わせる事になる。
その時には飯の一つでも奢らせるか……。
ホントは飯代なんて惜しくはないが。そうして貸し借りを帳消しにして処理しておけば、お互い負い目なく気持ちよく過ごせる。
人類らしい、美しい友情や信頼を高め、なおかつWIN WINな結果……にさぞ見えるだろうよ。
これを逆手にもっと大きな事を要求してもいいが、如何せん竹中から絞り取れそうなものに限ると、欲しいものは何も無い。
飯代程度が関の山だろうか。




