未帰還者
「紫苑、聞いてるの?」
何故だ。
何故こうなった……?
朝起きて、俺は自分の部屋からリビングに降りた。
降りたは良いが、何故大山桐子と食事をしているんだ。
何故こんな朝早くから居るんだ。
「ねぇ紫苑?」
彼女は食事の終盤に残ったサラダをフォークで刺して、レタスやら胡瓜やらを口に運ぶと頬杖をついて俺を見ていた。
こちらはもう食い終わろうかという場面だ。
因みにサラダの他に朝食のメニューは鮭の塩焼き、味噌汁、漬け物、白い米。
じつに和風で家庭的な朝食だ。
妹の料理のクオリティはこんなものではない。
やろうと思えば、パエリアとかも出来る。
よくわからないが、難しいらしい。
「ねーねー紫苑ー?」
「あぁ、すまない。寝ぼけていた」
ってかどーでも良いマジで。
早く帰って。
……昨日の事でもイライラしてるんだ。
あのガスマスク。何者だ……最後の最後で麻酔銃なんか使いやがって。
起きたらベッドの上だなんて……夢かと思ったがそうではない。
黒くなった死神は出てきたし、へその上に麻酔針の跡が僅かに残っていた。
「まったく、聞きなよ!人の話くらいさ」
遮る様な大山の声で思考が止まる。
とりあえず、お前は人の心中を察しろ。
何故朝からお前と飯を一緒しなきゃならない。
まあ、今から考えても仕方ない。
大山との話が進まないので、聞き直してみる事にした。
「で?何の話だったんだ」
「心霊スポットよ、夏の定番でしょ?」
あぁ、そんな話してたのか。
悪いが、中学時代にこの辺りの心霊スポットは全て網羅し、踏破した。
この島の中、直径50キロメートルの端から端まで。その範囲に存在する心霊スポットは行き着くした。
心霊スポットなんて行くだけ行って終わりなんだ。霊も怪奇現象もありはしない。
行き尽くした今となってはもう興味はない。




