死神10
薙いだ鎌は空を切り裂いた。
天使はそうするのを読んでいたかのように、その鎌の有効範囲から身を引いていた。
鎌での攻撃は大振りになりやすく、読まれやすい。一見しただけでも不利だ。
そのまま天使は死神の背後を奪い、爪の斬撃を食らわせようとする。
「まずいっ!」
左手で鎖を乱暴に投げて天使を牽制する。
天使は一度離れて、空に静止した。
今の動きから察するにこの天使は素早さに特化しているようだ。
昨日殺したオッサン曰く、俺の死神は攻撃と防御に特化したタイプらしいが……。
なら、堅実に防御して、隙をついてダメージを与えるのが得策か。
こちらから攻めれば、今の様に死角を奪われて攻撃される可能性が高い。
天使は次の瞬間、その全身から仄かな淡い光を放つ。
「なに!?」
間もなく目の前から消えた。
何処から攻撃が来る?
死神に防御を取らせようにも、鎖の盾は一枚岩。
正面しか防げない。
このままじゃ死神は攻撃を受け止められない?
死神の方を見る。
校庭の真ん中で鎖の盾を構えている。
しかし、やはり天使は先程と同じように死神の背後を奪ってすれ違い様にその鋭い爪で切り裂いた。
「あがっ……!?」
迸る稲妻のように痛覚神経が悲鳴をあげた。
なん……だ?
頭痛……?
よろけた死神を別の角度から現れた天使の爪がもう一度刻みつけられた。
「ぐがぁ!」
鼓動のように頭痛の波が襲いかかる。
間違いない。
この頭痛は死神のダメージと連動してる!
このままじゃまずい……。
……死ぬ?
死の恐怖が浮かび上がった。
いや、そんなものは単なる我儘なんだろう。
俺も人を殺した。俺にとって取るに足らない事だった。
だが、他人にした事を自分がされるのは嫌だなんて我儘を言うつもりは無い。
殺してもいい。ただし、俺の強さを乗り越える事が出来るのならば。
まだだ……まだ……このままじゃ駄目だ!
あの死神は鈍重だ。
盾も意味をなさないなら、更に強く素早い盾が必要だ!
攻撃の動作が遅いならそれをカバーするだけの素早さが……!
死神が光を発し始めた。
それはどんどん強くなっていき、死神の姿が白い光で見えなくなった。
「これは……」
ガスマスクが驚嘆する声がした。
何となく、死神の状況がわかっている風だ。
俺にもわかる。死神は、生まれ変わろうとしている。
死神の姿は黒く分厚いローブの様な服装になり、鎌はより重厚で鋭い物に変わった。
鎖は消えていき、代わりに鋭い柄の先にはランタンがぶら下がる。
そして……2枚の縦長の六角形の板状の物体が浮かんでいた。
棺の蓋のような形でその縁は刃の様に鋭く、真ん中には一本角のような刺が生えている。裏面にはグリップまでデザインされていた。
「これなら……どうだ!?」
「進化……した?こちらの天使に対抗するためだけに?……そんなことは……」
死神の姿はより禍々しく、そして全体的に重厚感が増した。
風に靡いていた、紫色のコートから分厚くどっしりとした、奈落の底のような黒色をしたローブめいて見えるコート。
天使の斬撃を盾が素早くそこに飛び、受け止める。
死神本人は微動だにせず、2枚の盾を忙しなく飛ばして爪の凶牙を遮断し、爪と交わった盾が火花を散らす。
天使は本領を発揮したのか、更に速度を上げて死神の周囲を飛び回り、切りつけようと躍起になった。




