死神8
妹は何も言わず、その内にうとうとし始め、眠りに落ちっていった。
それを見届けて俺は目的地へと向かった。
行き慣れているだけあって割りと早く着いた。
って言うか、そもそも短くて済むからここを選んで試験も受けた。
駅ともほぼ反対だから、友人が気紛れに立ち寄る心配もない。
大山も同じ学校だったとは誤算だったが。
俺は自分の学校に来ていた。
月が雲の割れ目から覗いては隠れ、月光が失われた。暗さが一層深くなる。
この辺りは住宅街と隣接しているが、学校の校庭は校舎を挟んで幸いにも住宅街から離れていてあるのは空き地だけ。
ここなら暴れられそうだ。
この死神がなんなのか……
その手がかりを探すんだ。
「行くぞ」
死神は俺自身が意識することで現れる。
先程、部屋でやったのと変わらず、死神の姿を念じると何もない空間からヤツは現れた。
こうしてまじまじと観察するのは初めてだった。
全身が紫色のコート姿。
コートの裾は黒い炎のような模様がある。
コートと同じく、全身と継ぎ目なく一体化してるのにそこだけ硬そうな質感の仮面。
赤い角張った双望は何かを憎んでいる様に見えた。
そして鋭い鎌。
長柄の鎌なのに、柄の底には鎖が垂れており、死神はそれを鎌に巻き付けて一緒に握っている。
昔、日本に実際にあった鎖鎌のスケールを大きくした様な武器だった。
「なあ、お前は話とか出来るのか?」
「……」
黙ったまま、俺を見つめる死神。
鎌で威嚇するでもなく、ただ無言で俺を見下ろす。
身長は死神の方が大きい。
俺自身168センチあるが、彼は頭一つ分抜けていた。
「なあ、何かしゃべれないのか?」
再び問い掛け、待ってみる。
駄目だ、反応がない。
微動だにせず、死神は俺をまっすぐ見下ろしていた。
まるで何かを待っているみたいに。
「無駄だよ、少年!」
………え?
肝に氷を突っ込まれたような不愉快な感覚。
驚いて声のした方を見ると、校舎から誰かが歩いてくる。
遠くて黒い影にしか見えないが、男性だ。
フードを目深に被っているのが影からもわかった。
まさか地下鉄で倒したフードの男が生きていたのか?
「そいつらは対話をするような存在じゃない。そもそもそー言うような概念は適切ではないよ」
その安直的な考えは直ぐ様理性によって否定された。
あれは別人だ。あのオッサンは首を切断されて死んでいる。生きているとは考えられない。
それにあの男はかなり筋肉隆々のガッチリした体格だったが、この男はどちらかと言えば細身だ。
細身ながらもしっかりとした体つきのシルエットにみえる。
その男はおよそ5メートルまで歩いてきて立ち止まった。
その姿は奇妙なもんだ。
黒いローブのような姿で、顔にはゴーグル部分にサングラスのように照り返すカラーレンズの填まったガスマスクを着けていた。
長い袖もあるのに前もしっかり閉じている、暑苦しいかっこうだった。
「誰だ?」
あからさまに不審者だ。
何故今学校に俺以外の人間がいるんだ?
そして何より、死神を見られてしまった。
どうする……?殺すか?
いや、こちらに声を掛けたとき何か知っている素振りだった。
……何者……いや、地下鉄の時のオッサンの仲間と見るべきか。




