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霧雨の足音 ー軟体花嫁さんとチキンな僕ー  作者: なきむらさき
軟体花嫁さん
3/7

海辺

 


   ◇ ◇ ◇



「ヴィヒマさんっ!?」

 水音に気付いた男の声が、ヴィヒマの意識を呼び戻す。

「……ぷはっ!」

 ヴィヒマが腕の力に頼って波間から顔を出すと、見慣れた銀髪の牧師と目があった。推定、三十歳前後。長身をかがめたその牧師はウォーム・グレイの瞳に気遣わしげな色を、次いで安堵の色を浮かべ、ヴィヒマにロープの端を投げよこす。

「大丈夫ですかヴィヒマさん。泳げないのに、いきなり海に飛び込んだりして……」

 そうだ、ヴィヒマは泳げない。元はけっしてカナヅチではなかったが、異常をきたした両脚に木製の歩行補助具を装着するようになってからは、脚が曲げられず強い浮力も働くため、水面で呼吸を確保するだけで精一杯だ。

 彼は、答える代わりに別の問いを返した。

「シャマイム先生、今の見た!?」冷静にロープを掴みながらも、ひどく興奮した様子で言葉を続ける。「崖の聖堂から花嫁さんが……っ!!」

 シャマイムは返事を後回しにして、ロープを力一杯たぐり寄せた。一見すると優男風だが意外と筋力はあるらしく、動きにあわせ僧衣の腕に筋肉のレリーフが浮かび上がる。濡れて重さの増したヴィヒマを岩棚に引き上げ終えた彼は、いつもと何ら変わらぬ穏やかな声で言った。

「あの高さでは、まず助からないでしょう……普通は」

「だよな、常識的に考えて普通は」

 顔を見合わせた二人の間で一瞬、意味ありげな目線が交わされる。この後とるべき行動の確認は、これで十分だった。

「何はともあれ、貴方が無事でなによりです。こんなところで私の大事な研究対象に死なれては困りますからね」

「いやぁ、僕としたことがちょっと足を滑らせちゃって……あはは」

「笑い事ではありませんよ、ヴィヒマさん」

「ゴメン! 次は気を付けるから」

 上着を絞る手を止め、平謝りするヴィヒマ。

 対するシャマイムは「座っていた人間がどう足を滑らせたら海に飛び込む羽目になるのか、じっくり訊いてみたいものですね」とでも言いたげに腕組みしている。

 ふと、ヴィヒマは大切な言葉がまだだったのを思い出し、心を込めてそれを口にした。

「ありがとう、シャマイム先生」

「どういたしまして」わかってますよと言わんばかりの微笑で。シャマイムは荷物を拾い集めると、ここへやってきたと同じ小道の方へと向き直った。「では、参りましょうか」

 勿論、帰るためではない。小道のさらに先の先、この湾を回り込んだところにある、あの崖の下へと向かうためだ。足場の悪い磯伝いより、ぐっと早く移動できるだろう。

「行こう!」

 好奇心の塊と探求心の塊は肩を並べ、段々と歩を速めながら崖下を目指した。





 あれから日は沈みゆき、残光が僅かに色味を変え始めた頃。低木の茂みから勢いよく飛び出したヴィヒマは、あまりに予想外な光景を目の当たりに呆然と立ち尽くした。息が荒いのは、駆け足も同然の速さで歩き通してきたからだけではない。

「なんてことを……!」

 見つめる先は、あの崖下に最も近寄れる足場と思しき岩場。そこでは、あろうことか物々しく武装した男たちの一団が、花嫁らしき人影が落下した付近へと矢の雨を浴びせかけているではないか!

 よく見れば崖の上からも矢は放たれており、そこから海へと何やら液体をぶち撒ける姿も見てとれる。やがて号令と共に射撃が止まると後方から数本の火矢が放たれ、海上に炎が走った。

「酷すぎる。これじゃあ、まるで――」

「動くな!!」突然ヴィヒマの言葉を遮った荒々しい声。「我々が行くまでじっとしていろ!」

 横目に、槍を手にした三人の男たちが近づいてくるのが見えた。甲冑と帯剣は派手な装飾が施された儀礼用のもので、マントは正装用の白。マント留めに施された紋章からして、領主付きの――おそらくは婚礼に参列していた――騎士と思われる。

「お前たち、ここで何をしていた?」

「夕食を獲っていました」未だショックから立ち直れないでいるヴィヒマの代わりに、シャマイムが答える。「厳密にいえば湾のあちら側で、ですが」

 一応、漁をしていたという話は嘘ではない。元々ヴィヒマたちは宿の主人の提案で、今夜の宿賃代わりの食材を獲りに来ていたのだ。ヴィヒマの一番目当ての獲物は未だ獲れずだったが、シャマイムの魚籠にはサザエに似た小さな巻き貝が幾つかと、小ぶりな蟹が二匹、そして沢山の海藻が入っていた。

「見ての通り、思いのほか獲物が少なかったので移動を」と騎士たちに魚籠を差し出し、シャマイムは肩をすくめる。

「おーおー。こりゃ、ボウズも同然だな」

「牧師さまお気の毒に!」

「今夜は海藻パーティー決定か!」

 騎士たちは三人とも納得したように頷き、槍の構えを解いた。

「ところでお前たち、海から怪しい人影が上陸するのを見かけてはおらんか?」

「いいえ」落ち着きを取り戻したヴィヒマは、普段どおりの陽気な声で首を横に振った。「僕たちは日が水平線よりだいぶ上だった頃から漁をしてましたが、そのあいだ誰にも遇っていません」ついでに一言。「メインディッシュになりそうな獲物にも」

「ぷ……っ!」

「あっはっはっ!」

「確かに!」

 大笑いする騎士たち。ひとしきり笑い終えた後、彼らは目の端に涙を浮かべたまま告げた。

「残念ながらここから先は立ち入り禁止だ、今日は諦めて大人しく海藻パーティーでもしたまえ」

「もう行っていいぞ」

 相変わらずの軽い笑いを含みながらも、どこか圧力のある言葉。いざとなれば武力行使も厭わない“退去命令”めいたものを感じとったヴィヒマたちは、大人しく引き返すことにした。――少なくとも、表面上は。

「仕方ないなぁ。今夜は海藻パーティーにしますよ、旦那。嬉しくて泣きそうだ」

 ヴィヒマは戯けた泣き真似で踵を返すと、来た道へと歩き出した。シャマイムも騎士たちに挨拶し、後に続く。

 だが、わずか数歩後。後ろで思わぬ声があがった。

「……いや、ちょっと待て!」

 振り向くと、一番背の高い騎士が駆け寄ってきた。彼の視線は真っ直ぐヴィヒマに注がれている。

「やはり……」と、彼が思案げな顔でヴィヒマの髪に手を伸ばし、呟いた。「こいつ、本物の黒髪だ」

 ここウェルスパディー地方では赤銅や茶系の髪が一般的だ。近隣のフォーチュンリバー地方ではシャマイムのような銀髪が、フォーベアーズ地方ではそれらに加えて金髪も比較的多く見受けられるが、黒髪はここから遠く離れた北の山岳地帯カームパディー地方でのみ見られるものだった。

 もっとも、最近はウェルスパディーの若者達の間で黒く染めるスタイルが流行っており、黒髪は珍しいものではなくなりつつあったのだが。(染めてもすぐに伸びた地毛で色差ができてくるその見た目ゆえに、彼らは“カラメル黒胡麻プリン族”、通称“黒プリ族”と呼ばれているらしい)

 ヴィヒマの髪は正真正銘、生来の漆黒だった。

「黒髪がいたって?……おお、本当だ」

「確かに地毛のようだぞ」

 残る二人の騎士も追いつき、物珍しげに手を伸ばす。

「痛っ! ちょ、ちょっと、勘弁してよ旦那ぁ」

 髪をくしゃくしゃに揉まれ、しまいには何本か引っこ抜かれてヴィヒマが抗議の声を上げたが、騎士たちはお構いなしだ。

「彼がどうかしたのですか?」

 シャマイムが尋ねると、一番背の高い騎士は探るような目つきでヴィヒマの黒い瞳を覗き込みながら答えた。

「いや、実はな。西のフォーチュンリバーの騎士の一人が、しきりに訊ね回っていたのだ」騎士の視線が下がり、その手がヴィヒマの胸板に、次いで肩に、肩胛骨の上に、そして二の腕にと滑っていく。「なんでも、その男が探している者は年の頃十五から十八くらいの黒髪黒瞳の美丈夫で、非常に希有な弓の名手だとか」

 騎士は手の甲と掌、指の一本一本も注意深げに手にとり、結論づけた。

「ふむ。肩はしっかりしているようだが、この指ではとても弓を扱うものとは思えんな」弓を常用する者特有の痕跡が全くないのを見て取り、解放する。「顔立ちも、あれが好みそうな女顔ではないし」ヴィヒマの顔立ちは確かに整っている方ではあるが、どこか野性味があり、見間違えようも無く男らしかった。

 後ろで騎士二人のコソコソ話が聞こえる。「……っていうかあの西の騎士、なんかキモいよなー」「俺が思うに、あのキザな騎士は美しければ男も守備範囲だぞ絶対」「ああ。オレも思ったな、それ」「奴の仲間の話だと長鞭を振り回すそうだ」「部下の間では裏でキザキモい“ザキモエロ”と呼ばれているとか何とか……」

「(……ぷ…………ぷぷっ)」

 聞き耳をたてて、つい、今にも吹き出しそうになるヴィヒマ。気付いたシャマイムが無言で小突き注意を促してきた。確かにこれ以上、面倒ごとは御免だ。

「騎士様、そろそろ失礼して宜しいですか?」

「ああ。すまんな、人違いだった。行っていいぞ」背の高い騎士が片手払いして、立ち去りはじめる。「じゃあな牧師さん、黒髪坊や」「気を付けて帰れよー」 残る二人の騎士も、その後に続いた。

 ふと、その背中に向かってヴィヒマは尋ねてみる。

「そういえば、そっち一体なにがあったんですか?」

「見ての通りだ」振り向いた騎士が指す先で、放たれた火は激しさを増し、文字通りの炎の海と化していた。「危ないから早くあっちへ行け!」

 その先の情報、特に自分たちが目撃した一件について少しでも知りたかったのだが、脅しのこもった槍の向け方をされては反論もできない。ヴィヒマたちは諦め、大人しく退いた。




   ◇ ◇ ◇



 結局、ヴィヒマたちの夕食はフレッシュ海藻サラダと無酵母パン、残り物のチーズを少々だった。

「おじさーん、皿洗い終わったよー!」

「おう! ご苦労だったな、もうすぐ風呂が空くだろうから寄ってけ!」

「ありがとうっ!」

 宿泊部屋とまではいかないが離れの藁小屋を貸してもらえたし、シャマイムの愛馬ノアのための干し草も分けて貰えたし、風呂まで使わせてもらえるというのだから、宿の主人には頭が上がらない。

 皿洗いを終えたヴィヒマは井戸端でシャマイムの帰りを待ちながら、ポケットの小銭を弄んだ。

「はぁ……」過ぎたことを嘆いても仕方がないとは思いつつも、洩れてしまう。「……タコ焼き、食べたかった」

 ヴィヒマは最近ちまたで流行っている、海の向こうから伝わってきたという料理“タコ焼き”の虜になっていた。山岳地方にある故郷を出発して初めて訪れた港町で食べたタコ焼き。あんな美味しい魚介類の食べ方は、初めてだった。おまけに見た目もなんだか先鋭芸術的で、少々汚れた手でもピックを使えば食べやすいときたもんだ。

 完璧とも思えるこの料理に申し分があるとしたら――ちょっとばかし贅沢品なところか。

「せめて小さいのでもいいから、タコが獲れてたらなぁ」

 ちゃんとタコを捕まえて帰っていれば、宿の主人が作ってくれることになっていた。タコの足二本分がヴィヒマたちの取り分で、残りを調理代と宿賃の足しに。

 主人も二つ返事で条件を飲み、ヴィヒマは張り切って漁に出かけたのだ。

 けれども知っての通り、収獲はゼロ。さらに残念なことにこの日はタコが一匹も入荷せず、お金があったとしても食べられない状態だった。

「ま、いっか」

 知らず、ヴィヒマは笑みをこぼしていた。

 いつまでもタコが獲れずにいて、獲れないからあんな時間までそこに居続けて、なんともなしに腰を下ろして。だからこそ得られたものもある。

 ―――あの白い光。

 彼女を見つけることができただけでも充分に価値はあった。あの小さな存在に気付けたことが、なんだか妙に嬉しかった。こんなに嬉しくてくすぐったくなる気持ちは、何年ぶりだろう?

 ヴィヒマは目を閉じ、あの白い輝きを想った。夜闇の底に横たわるセトの海の深みに沈んでも輝きを失わない、気高く屈強な光を。

 そうだ。これは決して、可能性皆無の愚かな願望なんかじゃない。あの白い光は、まだ……

「……生きている」

 ふと、聖書のどこかの一節が頭の中をよぎった。――“彼によって存在するようになったのは命であり、命は人の光であった。そして――…”


「“光は闇の中で耀いているが、闇はこれに打ち勝ってはいない”」


 だから。


 ねぇ、花嫁さん。


 沈んでないで。


 こっちへおいでよ…………


 ……と、その時。ヴィヒマの物思いは聞き慣れた声によって中断された。

「こちらも終わりましたよ。お待たせしました」

「おかえり、シャマイム先生! どうだった?」

「ただいま」シャマイムは少し疲れた顔で微笑み、ヴィヒマを誘った。「詳しいことは、風呂へ行きながら話しましょう」

 先ほどから警邏兵による人改めが行われていた。逃走中の凶暴犯がこの海岸線沿いに潜伏している可能性があるからだという。借りている藁小屋にも手が入り、シャマイムが立ち会った。

「小屋にも宿にも敷地内にも、どこにも異常はありませんでした」

 兵士たちがこの宿に現れたのは、シャマイムが宿客たちの診察を、ヴィヒマが洗い場で皿洗いを始めた直後のことだった。少し奇妙なことに、兵士たちはシャマイムが牧師だと気付くなり、宿の改めの間ずっと彼を同行させたのだ。次の改め先への同行も頼まれたが、すでに夜遅くこれ以上は勤めに差し障るとの理由で断ったらしい。

「ちなみに逃走犯の特徴は金髪碧眼、とのことです」

「それだけ?」

「ええ、それだけです。残念ながら」

 髪と目の色だけでは人物像がさっぱり浮かんでこない。

「これでも何度か訊ねてはみたのですが」と、シャマイムが苦笑する。「皆さん一様に不審者、不審者と、そればっかりで」

「本当に人を捜してるのかな?」

 首を傾げるヴィヒマに、シャマイムは見解を述べた。

「どうも彼らは自分たちだけで犯人を捕らえ、対処したいと考えているようです。それも、できるだけ秘密裏に。今回の人改めの件は一切他言無用だと念を押されました」

「他言無用、ねぇ……」

 夕方の一件が思い出される。

「“見ての通りだ”なーんて言われてもな……」ヴィヒマは口を尖らせて言った。「海の上でバカでっかい焚き火をしてる理由なんか、見ただけじゃわかんねェよ、このターコ!」

「はっはっは。あれには驚かされましたねー……と、その件についてですが」

 周囲に人の気が無いのを確かめたシャマイムは、風呂場の扉に内鍵をかけ、声を潜めて本題を切り出した。

「あの煙の匂い……恐らく、聖油が混ざっていたと思われます」

「聖油って、礼拝の儀式なんかでよく使われてる、あの聖油?」

「ええ。それも、特別に調香された……」シャマイムは目を細めると、不快感を露わに続けた。「……悪魔払いの儀式や魔女狩り・化け物退治に用いられる、魔除けの香油です」

「それって……」

「状況からして、手に負えない“化け物(ミフェレツェトゥ)”が現れたとしか、考えられません」

 ────“化け物(ミフェレツェトゥ)

 その言葉にヴィヒマが身を乗り出す。

「だからって、あそこまでする必要あるのか!?」

「少なくとも彼らには、念入りにトドメを刺す必要があったのでしょう」

 退治する側の人間の方がよっぽど化け物じみている。

「彼女を投げ落とした上に、あんな……」ヴィヒマは俯き、声を絞り出した。「あんな、酷いことをするなんて!」

 握りしめた拳が、血の気を失う。

「正直なところ、私の視力では殆ど“点”も同然にしか見えなかったのですが……彼女は花嫁姿、だったのですね?」

「うん。確かに花嫁さんだった」

 ヴィヒマは幼少から羊飼いとして原野で暮らしており、非常に目がいい。ことに、彼が世話していた羊たちと同じ白や黒、そしてその敵となる捕食者の灰色を景色の中から見いだす能力が極めて高かった。

「遠すぎて顔までは見えなかったけど」落ちゆく白い光の姿は、ヴィヒマの瞼の裏に鮮明に焼き付いている。「純白のベールとドレスを纏った女の子だった」

 とはいえ、彼女が花嫁であるという確証は未だ得られていなかった。宿の食堂に来ていた客たちの話によれば、今日あの崖の上の聖堂で結婚式が行われていた、あるいは行われる予定だったという話は全く無いという。町中の宿が急に混雑したのは、予告もなしに周辺地域から名のある騎士たちが集まってきたためで、ある馬丁によれば国王代理人による緊急召集があったのだとか。

 そして、その招集を受けて集まってきた人々の中に花嫁姿もしくは白いドレスの人物がいたという話もまた、皆無だった。

「現時点までの情報を整理すると、私たちが目撃した花嫁姿の人物は……」感情を消した事務的な声で、シャマイムは続ける。「……騎士たちが討伐に乗り出した“化け物(ミフェレツェトゥ)”と同一人物の可能性が極めて高く、生死は不明」

「……うん」

「兵士が“逃亡中の凶暴犯”という名目で探し回っているのも、十中八九、同一人物で。彼らはその所在を……おそらくはその死体を確かめるために……探し回っている」

「うん」

「化け物討伐の事実は厳重に秘され、関係者しか知らない。と、いったところでしょうか」

「うん」

「あそこまで兵士たちが動員され厳戒態勢が敷かれている以上、私たちはどうすることもできません」

「……うん、分かってる」ヴィヒマはそれでも、ぽつりと付け足した。「僕たちは待つしかできないんだ」

「ヴィヒマさん……」

 少しの沈黙の後、シャマイムが提案した。

「今から酒場に行けば、もう少し情報が得られるかもしれません」

 とうに大人のシャマイムも、この春に成人し酒場への出入りが解禁したばかりのヴィヒマも、特に酒を好んで飲む方ではなかった。ついでに言うと喫煙の習慣もない。紫煙の漂う空間を通ると思うだけで気が滅入るくらいだ。それでも、必要な情報のために出かけ、たしなみ程度の酒を飲みながら長居をしてみたことは何度かあった。

 少量のアルコールは心を軽くするが、過ぎれば口も――ついでに懐も――軽くする。そんな者たちの近くに居れば、わざわざ尋ね回らずとも我慢に見合うだけの情報を得られた。

 だが。

「やめておこう」ププッと思い出し笑いのあと、ヴィヒマが戯け調子で理由を述べる。「うっかり“ザキモエロ様”に出くわしたら、面倒面談だ~ん」

「では、謎の花嫁さんのことは忘れて次の村に向かいましょう。非常に残念ですが……」

「……………………」

 ヴィヒマは小さく笑みを浮かべただけで、何も言わなかった。

「さて、この話はこれでお終い」シャマイムはパンッと手を叩き、脱衣かご置きの縁に腰掛けているヴィヒマの前に跪いた。「今日も一日、よく頑張りましたね」労いの目差しで微笑み、僧衣の両袖を捲る。「では、始めましょうか……」

 大きな手がヴィヒマの歩行補助具へと伸び、器用に動き始めた。流れるような手つきで革紐と連なる金具とを緩め、ヴィヒマの右脚を覆う補助具を外す。次いで、左脚の補助具も。

 程なくして、ヴィヒマの艶やかで角張った素足が蝋燭の明かりのもとに晒された。

「う~ん、い・き・か・え・る~ぅ!」

 足の指をぐぱぐぱと動かしたり、関節を曲げ伸ばしたりして喜ぶヴィヒマ。拘束の解けた脚の自由な感覚を確かめるように立ち上がり、初めはソロソロと、そして段々と跳ねるように足踏みする。

「いかがですか?」

「今日はなんかイイ感じ。これならマッサージいらないかも。ありがとう、シャマイム先生!」

 この通りと言わんばかりに、ヴィヒマは手に持っていた上着とズボンを衣類カゴに放り込んで足でたたんだ後、手桶をこれまた足で掴んで湯を汲むという足技までやってのけた。

「やっぱり浴びるなら湯だよなー」

「同感です」

 補助具を手に大きく頷くシャマイム。

 彼はいつものようにヴィヒマの脚を診察した後、満足げに呟いた。

「ふむ。今のところ長時間使用しても問題は無さそうですね」

「うん。左の内側を少し削って貰ってからは絶好調!」

 かけ湯をしてもしみる箇所はなく、擦過傷どころか圧迫痕ひとつ見当たらない。

「脚以外で痛むところはありませんか? 背中や腰とか……」

「今日は無い、かな。装着に慣れてきたみたいだ」

「それはよかった」

 シャマイムは笑みを浮かべ、今度は補助具の細部に目を走らせはじめた。

「本当、シャマイム先生には感謝してるんだ。それが無いと僕は、外を普通に歩けない」

「こちらこそ、治療方法を考えたり器具を作ったりで楽しませてもらってますよ」固定用金具を一段一段とり外していきながら、シャマイムはヴィヒマをちらりと見て言った。「とりあえず、これはメンテナンスして一晩乾かしておくことにしましょう。……どうも潮臭い」

「ぅわ、ゴメン! 僕が海に入ったりなんかしたから……」

 ヴィヒマはバツの悪そうな顔で革紐に手を伸ばした。所々に僅かな湿り気を残しているそれは、いつもより少しザラついている。塩の結晶だ。

 風呂場にあるならこれも“バスソルト”の一種かなと思ったが、言葉にするのはやめておいた方がいいだろう。シャマイムの眉間にシワが寄っていると気付いてしまった今では。

「そうだ! シャマイム先生、お詫びと感謝の意を込めて、お背中を流――」

「結構です」ぴしゃりと言い切って、シャマイムはパーツを洗い始めた。「私は人に触られるのが死ぬほど嫌いだと、何度いったらわかるんですか」

「治療のときは僕のこと触りまくるくせにー」

「それは当然。医者ですから」

「ちぇっ。それじゃあ僕は、ノアの背中を流すかー」

「お願いしますね、ヴィヒマさん」

 一転、にこにこ顔のシャマイム。先程まで彼の機嫌が悪くなりつつあったのは案外、単に独りで風呂に入りたかった、それだけなのかもしれない。

「ごゆっくり、シャマイム先生」

 先に汗を流し終えたヴィヒマは外に誰もいないのを確認し、足早に藁小屋へと向かった。今宵は晴天。外を歩くだけなら、わざわざランタンなど持たなくとも星明かりで十分だ。

 青い世界の直中を歩きながら、ヴィヒマは故郷の草原で過ごした夜を少しだけ懐かしく思い、空気を胸いっぱいに吸い込んだ。かすかに草の匂いの混ざったそれは、けれど多分に潮の香りを含んでいて、ここが故郷から遠く離れた地であることを否応なしに認識させる。

 ほんの数ヶ月前まで家族同然に可愛がってきた羊たちが、一匹もいないこの旅路で。“彼”の世話は密やかな慰めだった。

「おーい、ノアー!」

 その陽気な呼びかけに応え、先の暗がりからカポカポと蹄の音が近づいてくる。薄明かりの差す場所に姿を現した蒼白い荷馬は、太い脚の歩みを止め、じっとヴィヒマを見つめ返してきた。

「ただいま。君の体を洗うから、もうちょっと待ってて」

 ヴィヒマはノアの首筋を軽く叩いて挨拶し、水桶のそばに掛けてあった布に手を伸ばす。と、何を思ったかノアはその布を奪い取り、鼻先で彼の背中を小突いた。

 どうも媚びない性格らしいこの雄馬は、何を話しかけてもどこか態度が素っ気なく、甘えてくることもない。ただ、飼い主のシャマイムと違って、背中を撫でられたり擦られたりするのは歓迎派だった。

「なんだい?」

 ヴィヒマが振り向くと、ノアは布を投げ出し、麦わらの山の前で足踏みした。どうやら水ではなく、麦わらで体を拭いて欲しいようだ。

「わかったよ」

 麦わらの束を手に、ノアと連れだって小屋の裏手へと回る。そこから茂みひとつ先は、夕方に漁をしていたあの磯だ。

「今日は、色々あったな……」

 遠い潮騒のリズムにあわせて、ヴィヒマは緩やかに手を動かした。ノアは、うっとりとした顔で大人しく佇んでいる。

 一人と一匹は、そのまま暫く海を見ていた。

「君は本当に綺麗だね」麦わらを柔らかいものに持ち替え、ヴィヒマは仕上げ拭きを始める。「とってもハンサムだ」ノアは相変わらず澄まし顔で海を見ていたが、その横顔は知的で、ちょっとだけ神々しかった。「うちの子たちが見とれてたのも、わかる気がするよ」

 そっと寄りかかると、ノアの体に染みついた麦わらの匂いが心地よい。こうして誰かの温もりを感じていれば、潮の香りもまた、心地よく思えた。

「(ああ、これは…………)」

 風向きが少し変わったようだ。潮の香りに、薄ら煙たい臭いが混ざり始めた。風上は、あの崖の方角……。

「さっきは待つしかできないって言ったけど」静かに目を閉じ、闇の中を想う。「できることは、まだあったな」


 ―――祈り、応援すること。


 ヴィヒマはノアのたてがみを撫でながら、その耳にそっと囁いた。

「ねぇ、ノア。闇の中の光が導かれるよう、君からも神様に祈って……」

 



   ◇ ◇ ◇



 霧に包まれた朝の藁小屋。まだ明けぬうちから、二人は出立の準備を始めていた。

「食料は何日分にする?」

「余裕を持って七日分を。ランタンの油も補充が必要そうですね。それから、新しい包帯布とインクも少々……」

 さほど多くない荷物を確かめながら、買い物の予定を決めていく。今日から三日は人里離れた道を行かなければならないため、必要なものは十二分に揃えておきたいところだ。

「あ、そうだシャマイム先生。朝食はどうする?」

「それも朝市で調達しましょう」

「おっけー。それじゃ、馬車の幌を張っておくよ」

 脚に着けた補助具をいつものダボついた古ズボンで隠し終えたヴィヒマは、ノアを連れて外に出た。

 四肢を伸ばし、深呼吸する。澄んだ朝の空気は、やはり、潮の香りがした。

「忘れろ、か……」

 いい加減、諦めようと思った。昨日の様子では捜索するどころか情報さえも聞けない状態だったし、そもそもあんな落下では常識的に考えて生存は見込めない。それでもなお、ヴィヒマは瞼に焼き付いているあの輝きに諦めきれない何かを感じていた。

 残された滞在時間は、あと僅か。朝日が松の下枝あたりまで昇りきる頃にはこの港町を去り、内陸を目指すことになる。

「忘れろ、ね……」

 最後に、もう一度だけ。

 ヴィヒマは海を眺めようと藁小屋の裏手に回った。が、たちこめる霧のせいでよく見えない。彼は“少しだけだ”と自分に言い聞かせ、磯に下りてみた。昨日と大して変わらない磯に、誰もいない岩棚に。

「(今日もいい天気になりそうだな)」

 青ざめて見えた霧が東の方角だけ、白タンポポ色に輝いている。それは、昨夕見た何もかもが夢だったのかと思えるほどに平穏な色彩で――霧の向こうにはあの崖も教会も海も存在しておらず、心煩うものなど何もないような――安らかな気分にさせてくれた。

「(…………ん?)」

 小さな気配を感じて目を落とす。満潮の小波が打ち寄せる岩棚の縁で、濡れた岩の一部が動いているようだ。

「(何か……いる?)」

 一歩踏みだして目を凝らすと、そこには悲願の生物の姿があった。

「(タコだ!)」

 吸盤のきれいに列んだ足が二本、探るように這い上がってくるのが見える。彼らが陸に上がり畑の野菜を荒らすという話を耳にしたことがあったが、実際にその上陸を目にするのは初めてだ。

 もう一歩踏みだし、息を殺して動向を見守る。

「(いいぞ、こっちへ来い……)」

 だが期待を裏切り、その太い足は二本とも海中に引っ込んでしまった。タコは手を離してしまったのだ。

 そう思ってふと、疑問が生じた。――手を離した? 足ではなくて?

「待って!」

 ヴィヒマは後を追って身を乗り出し、右腕を海に突っ込んだ。

「お願いだ、待って!」

 彼は肩口まで水に入れ、必死に海面下をかき回した。服が濡れようが海水を飲みそうになろうがお構いなしだ。

 程なくして彼の手は何かを捉えた。岩棚の裏に今、人の手のようなものが―――いや、これは間違いなく人の手だ!

「ヴィヒマさん!?」声を聞きつけたシャマイムが、何事かと駆け寄ってくる。岩テーブルの縁に俯せて大声を上げながら片腕で海中をかき回す様は、さぞかし奇妙な光景に見えたことだろう。

「シャマイム、脚を支えてて!」

 ヴィヒマは大きく息を吸い込み、上体を海に潜らせた。目を刺す痛みに視界が歪んだ一瞬の後、仄暗がりの中で焦点が結ばれる。


 ―――真っ逆さまな景色の中で、真っ逆さまな乙女と目があった。


「(…………?)」

 このときヴィヒマは、見つめ返してくる瞳の中に不思議な光景を見た。それが意味するものが何かはわからなかったが、然るべき時が来るまで、彼はそのヴィジョンを心の奥に仕舞い込んでおくことにした。

 どれほどのあいだ見つめ合っていたのかは、わからない。

「(しまった、息が……!!)」

 ヴィヒマが苦しげに呼気を漏らすと、不思議な瞳の持ち主は気遣わしげに手を伸ばしてきた。浮上を助けるように押してくれる、やさしい手……。

 その両手首をヴィヒマが掴むのと、彼の体をシャマイムが引き上げるのは同時だった。

「ゲ……は…………ッ!」

「きゃ……っ!?」

 平らな岩棚の上に投げ出されたヴィヒマと、白いドレス姿の乙女。

 ヴィヒマは肩で息をしながら、二人に微笑んだ。

「助か……ったよ、ありが……とう……!」

「どういたしまして」

 シャマイムは昨日と同じようにヴィヒマに微笑み返したが、その目はすぐ傍らに転がる人物へと戻っていった。視線を追って、ヴィヒマも身体を起こす。

 ちょうど同じくして上体を跳ね起こした花嫁は、横座りしたまま強い声で言い放った。

「どこの者か、名乗りなさい!」

 予想外の出来事に、きょとんと顔を見合わせるヴィヒマとシャマイム。一呼吸おいて、彼らは答えることにした。

「僕の名前はヴィヒマ。そしてこちらは、お医者さんで牧師の……」

「シャマイムと申します」

「牧師様と下男……」花嫁は探るような目で二人を交互に見比べた後、念を押すように聞き返してきた。「ではあなた方は貴族でも騎士でも兵士でもないのですね?」

「うん、見ての通り」ヴィヒマは古ズボンをつまみ、横に広げてみせた。所々にパッチがあり、みすぼらしい。「こんな格好の貴族がいたら紹介してもらいたいね」

「本当に?」

「はい。誓って、私たちはお疑いの身分ではありません」恭しく片膝をついたシャマイムは、牧師たちが慣例としている言葉で挨拶した。「貴女に平安がありますように、レディ」

「……宜しい。あなた方を信用しましょう」

 花嫁はシャマイムの肩に手を置いて頷いたきり、口をつぐんでしまった。

 歳は今のヴィヒマの見た目と同じ十五歳くらいだろうか?

 元は美しかったと思われる赤銅色の髪は酷く乱れ、花のかんばせには赤黒いアザができている。その他、見える範囲に擦り傷が数カ所。絹のドレスは煤と油とアオサにまみれ、繊細なレースの模様が崩れたり裂けたりしているが、純白だったウェディングドレスの面影はまだ、かろうじて残っている。

 ―――気丈に振る舞う彼女の手が震えているのには、あえて気付かぬフリをした。

 押し黙ったままの花嫁に、ヴィヒマが話しかける。

「立てる?」

「……」

「よかったら手を貸すけど?」

「…………」

「本当に大丈夫?」

「………………」

「怪我は?」

「……………………」

「あの……もしかして僕、余計なことした?」

「…………………………」

 待てども待てどもこない返事と、思案の邪魔をする質問の数々。積もるイライラたちはついに小爆発を起こした!


「口を尖らせてばっかじゃ分からないだろ、タコ!」

「うるさいわねチキン! 少し黙っててよ!!」


 同時に発したその言葉に、お互いが、はっと息を呑む。

 少しの沈黙の後、喉の奥から絞り出すような声で花嫁が呟いた。

「……タコで悪かったわね」

 めくられたドレスの裾でうねる、不気味な七本の足。

 信じがたいことに彼女は、上半身が人間、下半身が蛸という、何とも恐ろしく奇怪な姿をしていた。――もっとも、彼女は非常に慎み深い脚の見せ方をしたので、足の付け根や腰の様子までは確認できなかったのだが。

「わたしはデビル……そう、デビルフィッシュ・マーメイド」花嫁は足三本の先を蛇の鎌首のように持ち上げて前に突きだし、凄んだ。「怖い怖~い怪物よ。さぁ、襲われたくなければ、ただちにあちらへお行きなさい!!」

「ふーん」

「ほぅ……」

 ヴィヒマは面白そうに、シャマイムは興味深げに相づちを打った。

「なんか昨日から、やたらと“あっちへ行け”言われてるよね僕たち」

「ははは、確かに。ヴィヒマさんなんか、騎士に兵士に露店商に御者に恋人たちに食堂の酔っぱらいに言われた上、オンドリにまで威嚇されてましたね」

「ああ、アイツは酷かったなー。いきなり“コケッコーッッ!”とか叫んで顔にぶつかってくるなんて」

 楽しそうに話す間も、二人の視線が花嫁から離れることはない。

「なっ、なによ何よ二人してジロジロ見てっ!」花嫁は真っ赤になって両手を振り回しながら、大声でわめきだした。「いいからお行きなさい!」タコ足の本数を増やし、再び威嚇の体勢をとる。「早く行ってよ。お願いだから見ないで早く逃げて、逃げてったら!!」――最後の方は、殆ど嘆願に近かった。

「それにしても、立派なタコ足だなー」

「ですねぇ。一本だけ欠けているようですが……」

「あれでタコ焼き作ってもらえると思う?」

「どうでしょう……大味かもしれませんよ?」

「大味かぁ。噛みごたえありすぎるのもヤだなぁ」

 花嫁の努力も虚しく、相変わらず動じた素振りも見せないヴィヒマとシャマイム。

 とうとう彼女は泣きそうな声で叫んだ!

「こんな醜い“化け物(ミフェレツェトゥ)”、気持ち悪くないの!?」

「いや、旨そうだ。……足が」

「右に同じです」

 その、あまりに突拍子もない答えに、花嫁はポカンと口をあけた。

「は……?」


 ―――長い静寂が訪れる。


 時の流れは止まり、誰もが彫刻と化していた。潮騒さえもが口をつぐんでしまったかのように静かだ。

 我が耳の存在を忘れそうになった頃、彼女の表情に耐えられなくなった青年の笑い声がクスクスと流れはじめた。

「冗談だよ」ヴィヒマは花嫁を抱きしめ、白状した。

「君が生きていてくれてよかった…………」

 彼は、瞼の裏に焼き付いた光景を思い出していた。この奇蹟が偶然なのか必然なのかは神のみぞ知る。ヴィヒマは心の底から神と彼女に感謝した。

「生きていてくれて……よかった、ですって?」

 戸惑いをぽつりと漏らし、抱擁されるがままに立ち尽くす花嫁。

「よかったら」ヴィヒマは遠慮がちに囁いた。「勇敢な花嫁さんの名前を教えてもらえないかな?」

 耳をくすぐる声……。

 花嫁は目を閉じ、か細い声で名乗った。

「ラウラン。わたしの名前は、ラウラン・スワンパー……」

 緊張が解けたのだろう。ラウランはヴィヒマの腕の中で気を失った――。

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