プロローグ
4000年、この世界で魔法を使えることが判明、代わりに科学技術は衰えていった。
魔法には、個人差があるが、3500年ごろに人類にも魔法の素質があることがわかり、試行錯誤、時代をまたいでやっとのこと魔法の使い方を、マスターした。
人間の平均寿命も80歳から400歳にまで伸びた。
今では、魔法を使わない人はほとんどいない。
ごく稀に、人類は魔法など使わないでいい――人間らしく生き、人間らしく死のう!――をモットーとしている"人類残党派"というものたちがいる。昔は沢山いたのだが、今では彼らもめっきり減ってしまっていた。
――まぁ、俺は彼らのことはあんまり好きじゃないんだが。使えるものを使わないなんて、ただのバカだと思ってる。
さて、そんなことは置いといて、話を戻そう。この世界で魔法を使う時に、1番重要なもの――それは、"幸せ"。
魔法を使う者は、生まれた時からその人のイメージにあった使い魔がいて、彼らと共に死ぬまで暮らす。
だが、"人類残党派"のように魔法を望まない者は、途中で彼らを手放すこともできる。手放した使い魔は、1度きりなら戻すことが可能だが、2度目以降はもう永遠に戻ってこない...。
その使い魔のエネルギーの源が、幸せなのだ。
例えば、何かいいことがあったとして、幸せを感じたとしよう。その時に、胸の前に手を当て、そっと思い出を保護するように胸から手をゆっくり離していく。すると、黄金色に輝く飴玉サイズの"幸せ"が出てくる。
"幸せ"は、大きければ大きいほど輝きを増し、貴重品となる。この幸せは、市場での売買が可能だ。
いつも幸せでいられる奴など、ごく少数だ。
マスターの"幸せ"が足りない場合、多少魔力は低くなるが、他人の"幸せ"でも代用可能だ。
だが、これはあくまでも、魔力保持の話である。
まぁ、使い魔には食事が必要ないので、"幸せ"を食事とカウントしても差し支えはないのだが…。
そもそも、使い魔には味覚というものが存在しない。ただ、魔力――"幸せ"を最低でも2週間に1度与えておけば彼らは生存可能である。
それでも、人間――マスターと同じ食べ物を食べる奴らもいる。味はわからなくても、親睦を深める1番簡単な方法だからだ。
と、説明が長くなってしまったな。
俺が住んでいるのは、4000年の地球。魔法を使うことができ、使い魔も存在する世界。
望めば、ドラゴン退治や武器装備など、さながらRPGのような世界を楽しむことだって、今の時代じゃ可能だ。
俺の名は、ブルフ。
アーサーの使い魔であり、世界でただ1人の味がわかる使い魔でもある。
この、ちょっと抜けてるアーサーの面倒を一生見るのが、俺の使命だ。
因みに、ブルフというのは、アーサーが「ブラックウルフだから…ブルフ!!」と言ったのがきっかけでついた。
本当に、あいつの思いつきには困ったもんだが、そういうところも含めて、俺はあいつのことが好――。
い、いや、あいつのことをいい奴だと思っている。
改めて、君が誤解しないように言っておくと、これはハラハラとした冒険物語でも、心がキュンとするような恋愛物語でもなく、れっきとしたグルメ物語である。
その辺を踏まえ、この先へと進んで欲しい。
それでは、魅惑の世界へ、ようこそ――。