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ある悪魔祓い師司教補佐の移転奮闘記  作者: 山坂正里
第六章  守護神付きの青年、守護神と共に魔獣遣いと戦う。
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 兄ちゃん一人「夜は魔獣遣いも動く!!」と言って、散策しに行った。本当、元気だねぇ。

 そのおかげでか、俺は非番。もちろん、部屋替えはしたものの、非番の悪魔達と一緒。……いや、晩御飯食べた後、その宿舎での唯一の良心であるクリスさんが制止する間もなく、首をつかまれて、引きずり込まれたが正しいか。

 本当に、こいつら、容赦ねぇな!!

 「死ね、リア充が!!」「兄と思っていたのが美女って何だ?!」「ラノベの主人公的立ち位置がムカつく!!」だの。

 ……言われなき、嫉妬だよな?!

 しかも、司教の分も含まれているのか、今夜の非番、戦闘系悪魔三トリオって。……嫌がらせ以外、何ものでもないよな?!

 兄ちゃんとやったとき以上に、お前ら、本気じゃねぇかよ!! エドガーの時も、きっとこうだったんだろうなっ! ヴィルド司教様には反撃や報復が怖くてできなくても、エドガーなら、余裕そうだもんなっ!


「大体、俺は兄ちゃんの性別が男だなんて、一言も言ってねぇぞ?! 勝手にそっちが勘違いしたんだろうが!」


 モラさんとアンジェは、一目で女の子って分かったって言ってたぞ?! しかし、そうなると、エドガーとヴィルド司教様はどうなんだろう? やっぱり、男の子って思ってるのかな?


「分かるか、あんなの!」「こっちは、魔王とその手下見慣れてんだぞ?!」「男にしか見えねぇよ!!」


 ブーブーと文句がひでぇ。いや、うん。エドガーはなぁ。髪もロングだし、可愛らしい系だからな。目も大きいし。あれで男なら……兄ちゃんも髪を伸ばしていても、男にしか見えねぇな。言葉遣いも酷いし。

 だからといって、俺に八つ当たりすんなよ! していいっていう理由と理屈にはならねぇだろうがっ!


「悪魔祓い師の女子は、モラさんとアンジェしかいねぇんだぞ!」

「それでも、十分に俺達の癒しだっていうのによぉぉぉ」

「エロ要素持ち込むなや! 羨まし過ぎるだろ!!」


 ……お前ら、それが本音なのかよ。必死すぎて痛過ぎるぞ。お前らだって、悪魔なんだし。そんなの関係ないんじゃ……。


「「「そんな訳ねぇよ!!」」」


 ――――そうですか。若いなぁ、お前ら。


「うるせぇ、草食系男子」「この、ムッツリスケベェ」「いやいや。実はショタ好きだろ」


 あらぬ誤解を受けていますが。聖職者だから、禁欲でいいんだよ。見慣れたっていうのもあるが、さすがに接触されるとドキドキするぞ。


「しかし、ジャンも裏山過ぎるが、猫もなぁ」

「子猫だからって、シスターにチヤホヤされて……」

「今頃、情報収集と称して、イチャイチャきゃふきゃふと」


 こいつら、女子慣れしてなさすぎだろ。ここの職員の方々の方が、嫉妬していないような気がする。みんな酸いも甘いも噛分けた大人だからかもしれんが。


「守護神つってもさぁ。ジャンいなくなったら、どうするんだろうな?」

「そりゃあ、守護する対象がいなくなるってことだからなぁ」

「やっぱり野良神。つまり悪魔になるしかあるめぇよ」


 天空神にも散々言われていたが、兄ちゃんは俺が高齢になるまで保留と言っていた。しかし、実際どうなんだろうな。俺とて、事故なんかでぽっくり亡くなるつもりはさらさらないが。兄ちゃんを残して逝くってことだからな。


「ジャンってさぁ、自分から攻める系じゃねぇのな」

「そらー、もちおっぱい女神様のバックアップ要員だろ?」

「結界とか縛る系とかが得意パターンだろ? クリスと似た系だな」


 クリスさんも、ラザフォード司教の後方支援として働くのが主な仕事とおっしゃられていたからね。

 三人のおっしゃるとおりですよ。だから、こんな狭い空間で、三人がかりで攻められても、対処できませんよ。部屋とか宿舎とか破壊してもいいなら、できなくもないだろうが。


「魔王は部屋破壊してたぞ」「その本を読みながらな」「呪術式の雨あられー!」


 ヴィルド司教様、本当に何されてるんだ?! 司教位相手に立ち向かうこいつらもこいつらだが。大地神相手でも勝てる人なんだから、こいつら三人がかりでも絶対に勝てないって分かっているだろうに。無謀と言うか、無策すぎたな。


「だってー、去年はチビスケくらいの大きさだったしー」

「見るからに子供でさー。完全に見た目に騙された」

「態度もでかくて、すんごい生意気だったもん」


 だからって、トラウマ植え付けられるほど負けてたら世話ないよ。司教もこんな悪魔達を使わなきゃいけないなんて可哀想でたまらねぇな。もう少し、思慮深くてもいいんじゃなかろうか。こいつら、自力で『(ゲート)』をみつけたんならさ。……いや、『(ゲート)』を開けてくぐってるから、思慮深くもないか。


「うるせぇよ。好奇心は猫を殺すんだぞ」

「ハハ。俺達は身を滅ぼしたけどねぇ」

「おぉ。またうまいことを言うねぇ」


 ここの悪魔祓い師しかり、悪魔しかり、本当に明るいというか、ノリが軽いよな。悪魔達、現状、普通に軽口叩いて、ふざけているし。


「そりゃぁー、そうでしょうよ。ここの長がラザフォードだからねぇ」

「それも形だけだけどなぁ。実権を握ってんのはクリスとバルトだけどね」

「これこれ。一応、ここの責任者なんだから。そんな本当のこと言ってやんなよ」


 こいつら、本当にラザフォード司教が好きなのか? そんな好きでもなさそうな……。親しいからこその軽口かな?


「だって、あいつ。半端なく、人使いも荒いしー」

「いや、悪魔遣いな。俺ら、一応人間じゃねぇだろうから」

「そんでもって、差別も激しいな。アンジェに関しては、いいけどさ」


 オメガの言葉に、「そりゃあね」と言い合う二人。小悪魔なアンジェじゃあ。まぁね。成人した姿も取れるとはいうが、堕ちた時の姿の方が低コストだって、大地神も兄ちゃんも言ってたからな。


「おいおい。公爵の大地神や伯爵のチビスケはともかく。アンジェ、小悪魔だぜ?」

「下から数えた方が早いんだからよぉー。そんな姿、取れる訳ねぇだろ?」

「たとえ取れても、ロリコンのラザフォードが絶対取らせねぇよ」


 「いえてるぅ」とケタケタ笑う三トリオ。……こいつらの中でも、司教はロリコンなんだな。そう思っているの、クリスさんだけじゃなかったんだ。


「そんなに司教が嫌なら、ここの長をヴィルド司教様に代わってもらう、というのは」

「却下ー!!」「絶対、いやぁぁぁ!!」「悪霊退散!!」


 ひでぇ言われ方と怯え方だが、ヴィルド司教様、そんなに嫌いか? お前ら、自業自得って言葉、知ってるか? 一級資格持ちだから、あの方もなろうと思えばなれるんだよな。ものは試しにと提案したが、やっぱり駄目か。本人もその気もなさそうだしな。エドガーと一緒にいられないだろうし。


「あれ、そういえばエドガーは、二級の資格持ちじゃねぇのな。心得あって準二級程度?」

「ん、ん? 魔王の手下? 無理無理。俺ら見てもビビってるくらいだし」

「春先ぐらいに、確か別の資格取って、魔王付きの補佐になったんだっけなぁ?」

「その後、ここに放り込まれていたな。魔王様の配下ならってことで。二級は取れって」


 ヴィルド司教様、スパルタすぎるだろ。それほど、エドガーに傍にいてほしくなかったんだな。どっちにしろ、教会配属になったら、エドガーも準二級受からなきゃいけないしな。そう考えると、北部って本当に大変なとこだな。


「北部では、配属に司教補佐は準二級、司教なら二級の資格が、最低いるからな」

「何か知らんが。他地方よりも、近隣の村でも、発生率が高い傾向があるようでな」

「レベルもせいぜい子爵止まりと、さほど高くないとはいえ、祓えないと困るからな」


 悪魔を害虫、害獣扱い?! お前ら、自分達の存在を全否定だな。

 確かに、この教本に描かれている呪術式のレベル、全体的に高めだな。これらをマスターしたら、他の呪術式の基礎も完璧じゃねってやつだし。他にも応用が効くよな。


「……ちなみに、ここに描かれてるの。お前らも多少は使えるのか?」

「バッキャロー! 実戦なんかでそんなの使えるかよっ!」

「使えたら、俺達だって、ラザフォードの下なんかにいねぇよっ!!」

「北部の二級に受けんのも、最低、発動だよ!! 使える方がおかしいんだよ!」


 ……なるほど。実戦で|(本人にしては遊びだろうけど)|普通に使える模様のヴィルド司教様。最強最凶伝説の理由も、なんとなく分かったよ。


「北部って発生率高くてもよー。出没率はそんなに高くはねぇのな」

「これって、なんでか。ジャン、分かるかな?」

「十秒やるから、考えてみ?」


 考えさせる気、ゼロじゃねぇかよ。分かる訳ねぇだろ。まずは発生率と出没率の違いからお願いします。


「……ジャン。お前、本当に二級持ちか?」

「中央の試験、もっとちゃんとしたのを作れよな」

「誰が作ってんだろな? イコールでくくってんじゃねぇよ」


 ひとしきり、中央での二級試験に対して文句を言った後、ざっくり教えてくれた。こいつらも、根はいいやつらなんだよな。

 発生率は『(ゲート)』が出現したり、開いたりってやつの確率だそうだ。で、出没率は『(ゲート)』をくぐってこっちに帰ってきた者達が、住人や悪魔祓い師に確認された確率だそうだ。

 中央なら、『(ゲート)』の出現、イコール悪魔がいるって確定だったからね。それを探すのに、どれだけ苦労したか。


「理由、ねぇ。『(ゲート)』は現れやすくても、魔獣や悪魔なんかはこっちに来られない、とか?」


 それか、向こう側に行きっぱなし、とか。大地神の加護が、今なお厚いからね、ここ。


「ぶっちゃけ、原因や理由は分かってねーのよね」

「ただ、そういう現象があるってことが知られている」

「ラザフォードが赴任する、ずっと前からあるそうだからな」


 兄ちゃんやクリスさんがここに来てすぐに言う、北部の気になる点かな。北部の七不思議の一つなんだろうな。


「七不思議っていえば、魔王が元凶ってやつ多いな」

「深夜に響く、謎の光と悲鳴とかな」

「地下に蠢く影とかね」


 オメガ以外は楽しそうに怪談話に食いついてくるね。そりゃー、ヴィルド司教様の話だからね。残り二人は、今、その脅威がないから楽しげなんだろう。

しかし、噂をしていたら、影が差すっていうが、大丈夫か?


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