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ある悪魔祓い師司教補佐の移転奮闘記  作者: 山坂正里
第五章  守護神付きの青年、守護神と共に魔獣遣いと遭遇する。
13/23

 5章です。

 バルトさんが作ってくれていた夕食を食べ終え、自室と当てがわれている部屋に帰ってきた。しかし、なぜかモラさんとアンジェがいた。布団も一組空いているスペースに敷いちゃって。……俺、ここでいいんだよね?


「火事に被災した妻子は、ロベルトが護衛しているから」


 ふんわりと微笑むモラさん。

 ……いや、それよりも。男の俺と同室ってことに疑問を呈していいでしょうか?


「伯爵様ともっとお話ししたくて……」


 「ダメ?」と言わんばかりに下から見上げ、小首を傾げるアンジェ。ピンクの寝間着、可愛いなぁ!


「俺はいいけど……兄ちゃんは?」


 ついつい、俺の胸くらいの高さにいる兄ちゃんに確認しちゃうぜ。今日は、よっぽど俺と離れていたのが寂しかったのか、抱っこだ。

食事中も俺の膝上キープだし。その上「食べさせて」なんて言い出すし。周りからは、さすがに「うぉーい」って突っ込みがきたが。

 ここでは常識人で通っているはずのクリスさんは「まぁまぁ、今日はいいじゃないか」と軽かった。いや、止めましょうよ、クリスさん。そんなことだと兄ちゃん、結構、増長しますよ? 中央でも、大地神と争うように俺にベタベタして……。で、結局、大地神は飽きたのか天空神にベタベタ絡み出しましたが。天空神も、その時ばかりは怒るに怒れなくて、困っていた。


「ジャンがいいなら……俺はいい」


 もぞもぞと居心地がいいところを探すように動く兄ちゃん。自分より年下|(見た目だけ)|なアンジェに見られても、気にしないところはいい性格しているよ。


「今日、二人ともここで寝るの? 頼むから、ベッド使ってね?」


 この中で、年長なのって俺だし。男だし。悪魔とはいえ、女の子を床で寝かせるやつだとは思われたくないな。どんな鬼畜野郎だよ。俺は違うよ。


「体の作りは、悪魔の方が頑丈だぞ、ジャン」


 兄ちゃん、いらないこと言わなくてよろしい。ベッドより狭いとはいえ、この布団なら、お子様な兄ちゃんと俺が寝ても、余裕あるし。もちろん、その逆のアンジェとモラさんが寝ても大丈夫だろうが。


「ジャンくんがベッドで寝てねぇ。内勤の私よりハードだろうし」

「ジャンさんは人間ですから」


 モラさんとアンジェにまでそう言われると、居心地悪いよ! 罪悪感、半端ないよ! もしかしなくても、精神力を鍛える訓練? いらねぇぇぇ!! 背中に嫌な汗かいているよ!

 俺は椅子に座っているけどさ。本音を言うと、司教に直談判しに行きたい。兄ちゃんも大人しく、膝上だよ。

 布団の上に座る二人を見下ろす形になるため、頼み込んで(それこそ、土下座する勢いで)ベッド上に座ってもらった。それでも、二人とも遠慮して、縁に腰掛けているだけだが。あわよくば、今夜そっちに寝てもらおう。


「伯爵の二つ名って何? ラザフォードとバルトは多分治療系だろうって言ってたけど。ちなみに私は潔癖」


 モラさんらしいね。……っていうか、あの二人、見ただけで兄ちゃんが何か分かるんだ。すごいとしか言えない。


「……治療神。ジャンに治療のイロハを教えたのも俺だけど?」


 少し、機嫌が悪そうにしているような兄ちゃん。

 俺は昨夜からお世話になっている、呪術式の本を読み直しているぜ。さすがに治療系は全部使えるんだけどね。思わず、ふぅってため息ついちまったぜ。


「すごーい!」


 アンジェが尊敬風に兄ちゃんを見てるよ。小悪魔じゃあ、二つ名付かないもんな。呪術式使えるのかなってレベルだし。それでも、二つ名持ちの無印悪魔も珍しいが。モラさんは、無印でも上級なんだろうね。


「二人とも、悪魔歴二十年近く過ぎてるんだろ? 見た目、変えねぇの?」


 好きで『(ゲート)』をくぐった訳でもない悪魔や神とかいう、人でないものに転化した者達は、任意に見た目の姿を変えることが可能らしい。兄ちゃんも本気で怒った時や強力な呪術式を使う際は、成人した姿を取る。

 ちなみに大地神も転化した時の姿で一緒に見回りしてくれたけどな。成人した姿が一般的で。幼少期の姿だと、ばれにくいってことでな。

 大地神も、人間から神に転化したのアンジェとそう変わらないくらいの年頃だったそうだからな。俺が修道士になったの十二だが、今の姿では想像もできんが、当時は人より小さかったし。大地神はちょっと大人びていたから、俺の服も着れたんだよ。

 そんな幼少期の姿で絡まれると、天空神もさすがに、大地神を邪険にできないようだった。大地神の性格なんかはそのままなんだけどね。


「う~ん、ジャンくん。言いにくいけど、悪魔祓い師より、医療系に行った方がいいんじゃない? 一応、中央で二級取ってるんでしょ? 北部より中央の方が、資格を取る基準、医療系は厳しいって話だから」


 モラさん、そのものズバリで言っちゃうのね。でもさ、兄ちゃんはこちら側の人間ではない訳で。自称、俺の守護神な訳だから。そんな人と一緒っていうのは……医療系の人間にとってはどうなの? 俺、兄ちゃんと離れたくないし。


「悪魔祓い師の資格を持っていても、別部署にいる人だっていますから」


 アンジェの北部は大らかなとこアピ、すげぇな! 人数だって足りてないっていうのに、別部署なんて。


「それ、デーモンとかいうやつのこと? そいつって、結局何者なのよ?」


 モラさん達相手に情報収集しようって腹ね。人によって言うことまちまちなんだよね。

 戦闘系悪魔達の話だと、外道だし。人外だし。司教いわく、デーモンだし。クリスさんは人間|(?)|だって言うし。


「……う~ん。悪い人ではない……んだけどね」

「この一年くらいで……優しくなった……けどね」


 モラさんのフサフサの耳が垂れさがり、二人ともカタカタ小刻みに震えているような。

 デーモンさん、いたいけな少女と幼女に何してんだ。悪魔嫌いもここまで来ると病気だろと思いたくなる。


「そういえば、北部といえばやっぱり、ラザフォード司教だよね?! 大地神から遊びとはいえ、一級悪魔祓い師試験の時、討ち勝ったって聞いてるよ!」


 明るい話題をとばかりに振るが。あれ……失敗? 二人とも、ビクって震えたかと思うと、カタカタカタって震えが酷く……?


「ラザフォードが……大地の魔王を?」

「それ……フォードさんじゃないよ」


 二人とも顔色真っ青! 涙目になっているよ!

 模擬戦闘形式でね。一級受けた人が大地神の護る球を破壊しようって感じのやつがあったそうだ。

 大地神いわく「人間の悪魔祓い師ごときに祓われる気なんて、サラサラないよ。みんなまとめて、束になってかかってきなさ~い」……そんな風に公言しちまう神だからね。しかも、挑発するように中指立てて、クイクイって『カモーン』って感じにしちゃって。いつも中央の悪魔祓い師達、特にどころか主に、天空神と契約しているのをからかってたね。

 祓われないからこそ、中央と北部は合併したって言ってもいいくらいだからね。

 モラさんが言うように。中央の住人から見たら、北の魔王と言われて恐れられていた神だから、さ。

 その時も大地神は「全力でいいよー」なんて余裕綽々だったらしい。数千年以上、北部で魔王として君臨していた方だからね。だからこそ、中央悪魔祓い師達は嫌っているとも言えるんだけど。もちろん、先の件もあり、その双方の性格からして、水と油なところもあったけれど。

 とにかく、その模擬戦で。連携してオフェンスする人間サイドは、ペーパーとか実地……呪術式の試験もクリアした人達だけど。―――相手、悪すぎたよな?

 予想通り、尽くみんな、やられたそうだ。

 だが、ただ一人、天空神談、余裕で大地神の周りに『(ゲート)』の向こう側へ送り返す系の呪術式を張り、球の破壊に成功した方がいる…とか。実際にその呪術式は発動されていないようだけど。やろうと思えば、できただろうと天空神も大地神さえも言っていた。


「一級って本当にレベル高いなって思ってたんですけど」


 ラザフォード司教じゃなきゃ誰よ? そんな試験、別の大聖堂出身の人が掻い潜れるとは思えないし。


「俺もそうだと思って、今日一緒に回ったけど。……違うのか?」


 兄ちゃんも一緒に首を傾げちゃうぜ?


「……一人、いるね」

「あの方しか……いらっしゃらないね」


 キューっと言って、二人抱き合って……誰ぇぇ~っ?!


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