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ある悪魔祓い師司教補佐の移転奮闘記  作者: 山坂正里
 第一章  守護神付きの青年、北部にやってくる。
1/23

 前作キャラが多数出ています。読まなくても楽しめるように書いているつもりです。


 「暇つぶしのつもりで読んでやるか~」と広い気持ちで読み進めください。

 過度の期待はダメ、絶対です。読んだ時間は戻りません。(作者的にも)ご都合展開が多々見られます。お目汚しな点が多数出てくるかと。


 「それでもいいよ。読んでやるよ」と温かいことをおっしゃる方は読み進めてくださるとうれしいです。そうでない方は、このまま回れ右して、こんな作品があったことはお忘れください。


 ちなみに、作者は豆腐以下のチキンメンタルです。ご理解のほど、よろしくお願いしますm(__)m

 悪魔祓い師見習いである修道士から、悪魔祓い師二級試験に受かり、司教補佐になった。それが、とある事情によって、生まれ故郷である王都の中央を離れ、北部へと異動になった。

 口の悪い同僚によると、左遷とのことだが。俺はもとより異動願い出していたから。ただそれが叶っただけなんだがな。そもそも、出世したいだとか、もっと上になりたいだとかいう気持ち、サラサラないし。今年で俺も十八になったし、これもまたいい機会かも、と思ってな。

 俺の願いは割とシンプルで。兄ちゃんと一緒に平和に暮らせれば、それでいいし。中央でそれは―――望めなかったからな。とてつもなく、残念なことに。

 ゴトゴトと揺れる中央から北部へ向かう馬車の中。これからのことを考えてため息をついてしまった。

 向かいに座る修道士用のグレーの法衣を着た兄ちゃんが「どした?」とばかりに見上げて首を傾げた。俺は、何でもねぇよと笑いかけた。


「北部大聖堂っていえばさぁ。セルジオ枢機卿っていう、中央でも有名で有力な公爵家出身で、十数代前の巫子が著名だったなってね」


 兄ちゃんは肩をすくめ、何だ、そんなことかってばかりに笑っていた。


「その枢機卿も確かに有名だけど。一番の有名どこは悪魔祓い師の司教だろ? えぇっとぉ、確か、ジャンの上司になる……ラザフォードとかいうさ」


 兄ちゃんは声変わり前のボーイソプラノで、楽しげに話していた。……まぁね。

 俺と兄ちゃんは、血のつながりはねぇけど、同じ孤児院で育った。そして、十二で成人してから、一緒に働いた。兄ちゃんの方が、数カ月ばかり年上なんだ。

 ―――だが、六年前から兄ちゃんは年をとらなくなった。だから、十二歳ぐらいの姿のまま、傍にいてくれる。


「中央の大聖堂の枢機卿が、北部の枢機卿にも手紙を送ってくれているし。俺が持っている書状にも、その旨が書かれているしな」


 この国の大聖堂内において、二番目の若さで司教になったラザフォード司教。おそらく、貴族出身だろう。そして、セルジオ枢機卿とも仲がいいことで有名らしい。一時期はセルジオ枢機卿の懐刀、なんて言われていたこともあったそうだし。今の俺と同じ、十八で悪魔祓い師の司教になった人だからな。それだけでも十分、すげぇよな。

 ……まぁ、北部には、もっとすごい方がいるそうなんだが。それは追々、後々に。ある意味で、ラザフォード司教やセルジオ枢機卿より有名な方が、ね。もう名前だけが独り歩きしているような方がいらっしゃるんだよ。その人物とは、俺の部署とはそんなにかかわりもないだろうし。そもそも何をしている方なのか、よく知らないし。


「兄ちゃんもさ~。あんま仕事以外で、弾けないでくれよ?」


 俺が異動になった遠回しの要因って、それもあるし。

 秋の悪魔祓い師二級の試験時。実戦なるものがあってね。おそらく、この北部から借りてきたらしい悪魔を、祓う一歩手前まで、追い込みましょうっていうのがあってね。俺一人でも何とかなったと思うんだけど。――相手、悪魔的階級もそんなに高くなく、多分男爵くらいのようだったからさ。

 ところが、自分以外の悪魔……人でないものを天空神や大地神といった格上しか見たことがない兄ちゃんが飛び出して行って。「俺に任せろー!」とか言ってねぇ。突っ込んで行ってくれちゃった訳よ。

 その悪魔、かわいそうに飛んで北部に帰って行っちゃったんだよ。そのおかげで俺が二級取れたようなもんだけど。もうちょっと実力で取りたかったかな、というのが俺の本音だ。


「分かってるって。こっちでは大人しくしてるって」


 ニヤニヤ笑ってるけど。こっちは不安しかないよ。兄ちゃんってパッと見た感じは幼げなのに、性格はすごく好戦的だから。

 馬車で中央から北部までって、結構時間もかかる訳で。途中休憩も入れながら、丸三日間ゴトゴト揺られてたのよ。やっぱり、尻痛いな。一応、俺も体だって鍛えているけどさ。馬車で移動より、自分で馬にまたがって行った方が楽なんだけどな。手荷物もさほどないし。

 形だけとはいえ、司教補佐でお子様連れだから、馬車で行ってねぇなんて。中央の枢機卿にも言われたからな。仕方がない。上の命令は、絶対服従ですから。

 しかし、兄ちゃんは平気そうだね。体の作りが、そもそも違うから仕方がないか。

 北部の都心部に入ったが、悪魔多いな。外部からの悪魔除けの結界の内側なのにな。外部からって、特別な理由やその結界より強力な悪魔でない限り、入ってこられない作りになってるんだよな。多分、ここの結界は兄ちゃんクラスなら、ギリギリ入れるかってくらい? 中央の王都ほどではないにしろ、結構強いね。

 悪魔祓い師は、悪魔を見付ける感知系と祓い専門に分かれるんだわ。俺も一応どっちもいけるんだが。メインが祓いよりかな。いるなぁって分かっても、正確な位置まではわからん。兄ちゃんは感知系がメインの祓いもできるから、ありがたいね。

 「ストップ、ストップ」と外から声をかけられた。まぁね、仕方ないね。

 馬車の窓からのぞくと、茶金系の髪で、俺よりちょっと年上っぽい、男性。二十歳ぐらい? 俺と同じ、司教補佐っぽいね。黒の法衣に青の紐を腰に巻いていた。俺は薄い青…水色に近いものを巻いているだけに。こっちの人の方が格上っていうか、司教付きなのね。まぁ、そうやって相手の階位を見分けるのね。

 それから、青い癖のある長髪。ヒラヒラっとした黒い服を着た男。こっちは悪魔なのか、地面からちょい浮いて、あくびをしていた。どことなく、遊び人っていうか、軽い印象を与えるな。どうでもいいが、青髪なんて初めて見たな。

司教補佐さんは悪魔祓い師なのだろうか。隣に悪魔がいても平然としているなんて、そういう理由しか考えられない。もちろん、安全なように何らかの契約や拘束を設けているのだろうけど。


「こちらは、北部大聖堂所属、クリス司教補佐です。中央大聖堂から来られたジャン司教補佐ですか?」


 名前は聞いたことがある。確か、ラザフォード司教の右腕だって。でも、なんか顔強張ってない? 


「あ、はい。………俺がそうですけど」


 なんか、書類とかに不備あった? 俺、ここに来ちゃダメだったの?


「途中、何もありませんでしたよねぇ? うちの司教の悪魔達が心配してまして……」


 俺の心配してくれるなんて。司教と悪魔達っていい人? なんか噂と違うような。


「えぇ、はい。何も……」


 わざわざ使いをよこしてくれるなんて。優しいなぁ。

 ようやくほっと安堵したように一息ついた、クリス司教補佐。俺と同格だけど、相手年上だし、先輩だしな。大聖堂行くまで、一緒に歩いた方がいいよな。


「よかったぁ。……いや、俺も司教には大丈夫って言ったんすけどねぇ。それくらいの分別くらいあるって」


 後半、隣の悪魔に言うが、俺にはよく分からない。悪魔は、ちょっと顔を青ざめて、ブンブンと横に振っていた。青ざめているように見えたのは、髪の所為だけではないようだった。


「いや、分かんねぇぞぉ。どこから狙ってくるか……。おい、新入り。町を歩く時は、気を付けろよ。そんで北部来たからには、覚悟しとけよぉ。ここにはおっかないのが、少なくとも二体いるから」


 ……悪魔の怯え方が半端ないが。大丈夫か、この北部、と心配になってきた。そんなに恐ろしいものがここにいるのか。


「ロベルト、大丈夫だって。それに俺だって来たんだし。枢機卿にこれから会いに行くんすよねぇ? 俺も一緒に行くっすよー」


 青髪のロベルトという軽薄そうな悪魔を軽くいなし、友好的に笑いかけてくれるクリス司教補佐。いい人だねぇ。やっぱり、俺も馬車から出て、挨拶しねぇと失礼だな。


「ストップ! 出んな!! そのまま大聖堂に行った方がいい!」


 外開きのドアの前に張り付き、押さえこんでいるロベルト。しかも、周囲を油断なく警戒していた。本当に何を怖がってるんだろう?


「ロベルト……お前、警戒しすぎだって。ジャン司教補佐も驚いてるよ? ごめんなさいねー。いつもは、こんなんじゃないんだけど」


 「俺は一緒に歩いて行くから、気にしないで」ってクリス司教補佐は笑って断わってくれた。でも、無理です! めっちゃ気になりますから!


「じゃあ、一緒に乗って下さいよ。クリス司教補佐だけ、歩かせるなんてできませんし」


 「兄ちゃん、そっちつめて」と言って、進行方向に背を向ける形に座っていた兄ちゃんを端によらせた。そして、どうぞ~、と勧めた。

 クリス司教補佐は「いいの? じゃあ、お言葉に甘えて」と言って、乗り込もうとしていた。しかし、ロベルトは「あかん、あかん!」と言って、と引っ張っていた。おいおい、随分厳しいなぁ。


「俺一人にすんなよ! 今度は俺が狙われるだろうが?!」


 もう、半分泣いてるんじゃね? なんてばかりに止めるロベルト。二級の試験の時のやつといい、ここの悪魔達、メンタル不安定すぎねぇ? あの時の悪魔も兄ちゃん見て、悲鳴上げて逃げたし。その後、ぼこられて、泣いて北部に逃げ帰ってたが。

 クリス司教補佐も呆れていらした。「だったら、ロベルトも乗りなよ。ロベルトは元々俺の護衛で来たんだし」と言っていた。

 クリス司教補佐は、申し訳なさそうに「ちょっと狭くなりますよ~」って言ってくれた。もう一人の方も「は~い。お邪魔しま~すよぉ」と言って見た目通りに、チャラいロベルト。それでも、外を警戒しているようだったけど。馬車の中の方が安全なんだろうなぁ、きっと。

 俺の明るい赤髪や深い緑色の瞳が珍しいのか、ジロジロ見てくるクリス司教補佐とロベルト。黄色みがかった茶色のクリス司教補佐の瞳やその隣の真紅に近い赤い瞳も珍しいと思うが。特に、ロベルトの瞳って、作り物めいているし。

 悪魔や人以外の者の見た目はそういう場合が多い、と経験則と本に書かれていた。内容から知ってはいたが。こう同じ作り物でも、見るからに贋作めいているのは、あの試験以来で。まじまじと見てしまいたくなる。

 前に試験で会った悪魔も不出来な作り物っぽかったけど。それでも、姿形は決して見れないものでないのが憎らしいところ。性別や階級を問わず、はっきりと不細工と言えるものっていないんだよね。作り物めいていて、生気がないっていうのはあっても。


「改めまして、俺はクリス司教補佐で、こっちは悪魔のロベルト。一応、俺は自分自身の呪術式のみで祓う感知系の悪魔祓い師っす。こっちのロベルトはラザフォード司教が契約してる悪魔っすよぉ~」


 なんだ、クリス司教補佐の悪魔じゃないのか。ラザフォード司教が契約者なんだ。気付いてたかって兄ちゃんに確認したら「あったりまえじゃん」って返された。兄ちゃんは、感知系とあってすごいな。


「……えっと。俺はジャン司教補佐です。呪術師兼……契約者です。えっと、こっちは俺の兄ちゃんで。一般的には悪魔って言われてます」

「ジャン~。俺はお前の守護神であって、悪魔じゃねぇって」


 俺の横でプリプリ怒る兄ちゃん。――いや、ごめん。

 兄ちゃんは、六年前に人から悪魔……神に転化した。神も悪魔も、元々はどこにでもいる普通の人間だ。だから、兄ちゃんの成長も止まっちまったんだよ。


「あー、そういうパターンか。結構珍しいね。だから北部来たんだ。中央って、天空神以外はアウェー感半端ないもんね」


 同情した風に言うクリス司教補佐。この人も、中央における事情に詳しいな。

 この国は、公的に信仰されている神は、天空神と大地神である。だから、たとえ自称俺の守護神と名乗っていても、公的には悪魔扱いなんだよな。

 中央大聖堂所属の悪魔祓い師って、天空神以外の神―――一応、この国が信仰している、もう一柱の大地神さえも、排除している感があったが。

 ―――そんな中に、俺がいたらどうなるか。

 ――めちゃくちゃ、居心地悪かったよ。

 危うく兄ちゃんまで祓われそうになるし。いや反対に、兄ちゃんは抵抗して、悪魔祓い師達にケガをさせてしまったが。天空神には、ケンカ両成敗、とばかりに兄ちゃんも軽く叱られましたが。やり過ぎちゃダメって。兄ちゃんだって、何もしなければ、相手にケガなんてさせないし。そのくらい、兄ちゃんにも分別あるからね。天空神も分かってくれてるから、そんな感じに甘いんだけど。

 どっちにしろ、そんなところにいられないでしょ。異動願い出して、よかったよ。


「うちはさぁ。慢性的に人員不足でね。悪魔達の手も借りて、何とかシフト回してんのね。だから、すっごく助かるよ」


 俺が契約者だろうと、ニコニコ笑ってくれるクリス司教補佐。俺、やっぱりここ来てよかったかもな。


「あー、オメガが言ってた子供の悪魔ってお前かー。あいつ、ちょっと前まで、悪い意味で子供好きだったんだがな。今では、俺らの中で、子供は恐ろしいものだっていうのが共通認識さ」


 え。そのせいでその悪魔本気出してなかったって? 俺、たまたま二級受かったようなもんか。……ちょっと落ち込むな。


「いやいや、ジャン司教補佐の実力だよ! 大体、中央でも契約者としてやっていけたってすごいよ?! 中央って司教席もあいてて、二級受かるのも厳しいとこだって、聞いてるからね」


 フォロー入れてくれるクリス司教補佐。この人、いい人すぎるよ。この人となら、一緒にがんばれそうだよ。


「あ、そうだ。俺のこと、普通にクリスって呼んでくれていいからね? 誰もそんな肩っ苦しい呼び方しねぇし」

「え、でも、年上ですし。むしろ、俺のことはジャンって呼んでくださいね」


 さすがに、立場も年も上の人を呼び捨ては遠慮しとくよ。そりゃあ、横の悪魔のロベルトは呼び捨てで呼ばせてもらうけど。


「年上って……。それこそ、二、三歳でしょ? 俺、今年二十歳だし。俺も司教補佐になったの、十八だからね」


 「ジャンくんも、十八だよね?」と親しげに話すクリス司教補佐。いや、それはそうですけどね。


「悪いねぇ。えっと、ジャンだっけ? こいつ、根っからの子供好きでな? お前を手懐けて、新入りを構い倒したいんよぉ。それが本音だよ」

 

 ロベルトはチャライながらも申し訳なさそうに、言ってくれるが。

 ――クリスさん、ウソだろ。


「ちょ、何を言い出すのかなっ?! 物事には、順番っていうのがあってだね?!」


 若干、照れもあるのか、焦っているクリスさん。順番ってなんのだ? それより、ロベルトの言葉、もうちょっと強く否定しようか。その言い方だと、ロベルトの言葉を思いっきり、肯定してるじゃないかよ。

 兄ちゃんは、どちらかというと人見知りする方で。まぁ、だから、警戒してるのも仕方ないか。でも、悪魔見てだんまりっというのは珍しいな。俺が大人しくしてねと言ったからか?

 つやつやの銀色の髪の毛先をいじって、暇そうにしている兄ちゃん。兄ちゃんの髪、転化する前からもずっと伸ばしていたからね。膝裏にまであるのを首の後ろで一つに束ねているよ。兄ちゃんって基本的に強い人(人間、悪魔、神問わず)か敵にしか興味持たないからね。ロベルト、そんなに強くないのかな。


「……ジャンくん、あの。そっちの子は。――なんて呼んだらいいの、かな?」


 緊張もしているのか、ちょい赤くなって、チラチラ俺と兄ちゃんに視線を向けるクリスさん。いや、気になるのは分かるけどね。危ない趣味の人ではないと思いたいが。もしそうなら、引き離さないとなぁ。


「俺は兄ちゃんって呼んでますけどね。ねぇ、兄ちゃん。クリスさん達になんて呼んでもらう?」


 本当の名前を教えるっていうのは、悪魔にとって、相手に命を預けるのと同じだからな。契約する際に自身の名前に誓ったことを反故すると、悪魔達はこの世界にいられなくなる。

 それを基にして、契約し、悪魔を使うのが契約者だから。お互いの利害だって一致してるし。だから、立場は対等、もしくは契約者が優位だ。反対に、悪魔優位の契約の場合、悪魔憑きって呼び名が変わるそうだが。


「んー。別に呼んでもらう必要なくね? 俺より弱いやつは仲間って認めねぇし?」


 キョトンとばかりに赤みがかった紫の瞳をみせて。小首を傾げんなよ。クリスさんもロベルトも絶句だよ。固まっちゃったよ。


「兄ちゃん………少なくともクリスさんには謝ってよ。親切にしてくれてんのに」

「ヤダ。絶対ヤダ!」


 プンと頬をふくらませ、俺とは逆向きに顔を向けてしまった。全く、兄ちゃんってば、何を怒ってんだろう。


「す、すみません、クリスさん!!」


 座ったままペコペコ平謝りした。クリスさんは大人な対応で「いいの、いいの」って笑っていてくれていた。


「いやー。多分、俺に嫉妬してるんだと思うよ。ジャンくんを盗られたって思っちゃったのかなぁ? そんなこと、俺しないよー」


 可愛いなぁとばかりに顔が緩んでますよ、クリスさん。……やっぱり危ない人じゃなかろうか。宗教家のうち、司教補佐以上はそうでもないらしいが、修道士は結婚できないそうだし。そういう面で抑圧されるため、アブノーマル……いやマイノリティーな方向に走る人もいないことはないらしいからね。北部でもそういう人、いらっしゃるのかねぇ。俺にはよく分からないけど、さ。

 兄ちゃんも、そういう危ない空気を察知して、忌避しているのかもな。兄ちゃん、その手の危機管理能力は高い方だから。


「うるさいぞ、お前! ジャン、馬車止まったから、行くぞ」


 俺の膝の上に乗って、するりと馬車から出ちまう兄ちゃん。勝手に行かないでね! 道だって分からないんだから!!


 ここまで、読み進めていただいて、ありがとうございます。

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