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LN東條戦記第3部「売国宰相」  作者: 異不丸
終章 亡国
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3 


帝都。某所。夜。


東京府某所の料亭で参謀総長と軍令部総長が飲んでいた。大本営が解散してだいぶ経つから、情報交換会である。米国の参戦声明と対独宣戦布告は多田大将も長谷川大将も想定のうちだった。しかし、独伊仏の北アフリカ油田発見の声明は予想外である。



「正式発表には、なにか思惑があるのでしょうか」

「米国への牽制ないし掣肘、それに枢軸の有利表明」

「石油だけで枢軸が有利になりますかね」

「枢軸に加盟する国が増えるとなれば」

「まさかトルコはない」

「スペインがあります」

「おや、長谷川総長もそう思われますか」

「なんの、多田総長も」

「「あっはっは」」



情報局からの定期回覧によると、リビア油田もアルジェリア油田も埋蔵量の確定はまだだが、油量は豊富で大規模油田の可能性が高い。多田はエトワルやステラから、長谷川はアンクルから、それぞれ生情報をいくつか聞いていた。


今の枢軸国なら、ルーマニア油田にリビア油田が加われば不足はないだろう。仏領アルジェリアの石油は特に必要ない。だが、枢軸加盟の国が増えるとなれば、話は別だ。例えはスペイン。独伊には大いなる借りがあるものの、義勇兵を一個師団出しているだけである。それは石油を米国からの輸入に頼っているからだった。



「アルジェリア油田だけではない」

「地中海側に大規模精油施設がある」

「フランスは大きな発言権を持つことができる」

「戦艦5隻に空母1隻も大きい」

「独伊の対仏政策は変わり、占領解除もあり得る」

「フランスの動向が今次大戦の鍵になる」



フランスもスペインも必ずしも直接参戦しなくてよい。枢軸国への協力をもう1段か2段進めるだけだ。スペインの場合はジブラルタルへの通行を認めるだけでよかった。それだけで地中海と北アフリカは完全に枢軸のものとなる。フランス海軍には義勇艦隊という次の次の手もあった。



「参戦早々、米国は戦略の見直しを迫られている」

「ソ連の求める第二戦線の開設は難儀です」

「支援物資の未達もあってソ連は疲弊しますなあ」

「窮迫は焦燥を生むのが常だ」

「そして誤謬と失策を招きます」

「2年で対ソ戦備を整えましょう」

「3年目は演習と待機」

「総長職は譲って前線に立ちます」

「望むところ。帝国興亡の戦だ」

「「あっはっは」」



英国は日米交渉に関与し、かつ日独国交に異議を唱えなかった。すなわち、日本が登場する舞台を予定している。それは欧州戦争の最後の局面だろう。おそらくは、ソ連軍が旧ポーランド国境ないしドイツ国境を越えた時点だ。参戦の要請が来る確信はないが、もとよりソ連は日本の仇敵である。姑息にも敗戦革命を企んだのだ。仇なす敵は討つだけである。










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