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LN東條戦記第3部「売国宰相」  作者: 異不丸
終章 亡国
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帝都、某所。夜。


東京府某所の料亭で、大臣たちの密会が行われていた。集まったのは、賀屋蔵相、重光外相、山下陸相の三人。今日は景気のいい話になるはずだった。


「乾杯はビールです」

「とくとくとく」

「しゅわーっ」

「「あっはっは」」

「では。帝国の繁栄と」

「帝室の弥栄に」

「「乾杯!」」



大日本帝国から分離された朝鮮は、もとの大韓帝国に復する。すでに、資産整理を終えた邦人は帰国していた。日本領内や海外の朝鮮人の送還も始まっている。中国の蒋介石主席や満州の張景恵国務総理は歓迎の声明を出していた。だが、どういうわけか朝鮮の治安は一気に悪化する。


「よくわかりませんな」

「独立運動はどこへいったのやら」

「よしましょう。酒の席です」

「「そうでした」」

「それでいくらになります」

「動かせるものはすべて持ち帰る」

「うん、線路も引っ剥がすとして」



邦人撤収が終わるという頃に、満洲帝国から最後通牒が来た。朝鮮は清国の属領とする、妨害すれば宣戦するというものだった。大清建国の歴史をなぞりたい溥儀皇帝は、蒙古の次は朝鮮と決めていたらしい。どうやら蒋介石とも通じているようだ。報告する重光外相は笑いを抑えきれなかったし、聞いた閣僚たちも歓声を上げた。


「残置分がざっと200億ドル」

「国家予算の10年分ですね」

「時価だと倍ですが、同盟国ですから」

「吹っかけるわけにはいきませんね」

「お言葉もあります」

「それで満州は払えるのでしょうか」



日本は朝鮮に残した資産を満州から回収しようと考えた。それらの債権は韓国が負うべきものだが、属領化されるとなれば満洲帝国に移る。日満秘密交渉は、朝鮮総督の東郷自らが全権としてあたっていた。


「満州の国家予算は日本の10分の一です」

「それでは難しいな」

「しかし、特別会計はその4倍はあります」

「と、特別会計か」

「日本の半分の規模なら60年賦で」

「しかし、議会の注意をひくことになる」

「「う~む」」



国家予算で一般会計は年度毎に決算される。しかし、特別会計はその事業が閉じられるまでは決算されない。そして、一般会計との繰入れや繰出しを合わせることにより、内容が判別できないように調節が可能であった。日本の場合は主に、収入が特定される現業部門に用いられる。


ところが、満州の場合、外国から返還された資産や軍閥から回収した利権、地方財政にも乱用されていた。実行したのは日本から派遣された大蔵官僚だが、恩恵にあずかったのはおよそ満州にいた官軍財界のほとんど全員であった。そうでなければ、日本の3、4倍の給与など実現できない。



「なんとか、それ以外でならんかな」

「では、一部を割譲で」

「おっ、土地なら議会にも通る」

「しかし、何も出ませんぞ」

「ここは国防の出番です、陸相」

「うむ。要港と島だな」

「「それでいきましょう」」









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