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LN東條戦記第3部「売国宰相」  作者: 異不丸
間章 宰相
32/59


帝都東京、用賀。東條私邸。


夕方、東條が自邸に着くと、志郎が待っていた。


「枢府に呼ばれたと」

「ああ、行ってきたよ」

「どうでした」

「やはり、本音を知りたかったらしい」

「このところ、日米交渉が停滞していますからね」

「しかし、4月になれば大いに進展する」

「いろんな意味で、ですね」

「まあ」



総理就任以来、東條は二日と空けずに参内し、内政外交を念入りに奏上していた。

しかし、お上には公式な決定と予定事項しか言えない。憲法の制約がある。奏上後のお茶の席であっても、滅多なことは言えないのである。未定のことや本音を知りたい時に回りくどくなるのは、これは仕方がない。


「枢府と内府には、禁足令の件をお願いしてきた」

「それはよかった」

「あちこち、見に行かないとな」

「これからは捗りますね」

「ああ」

「今夜は泊めてください」

「いいとも」

「護衛には、明日の夕方まで休みを出しました」

「そうか、よし」

「飲みましょう」

「もちろんだ。ちょっと待ってくれ」



東條は、部屋を出ると警護責任者を呼び、志郎に専属を二人つけるように命じる。

そらから、忍び足で居間に行くと、細君に言う。


「かあさん、満喜枝を呼んでおきなさい」

「ええ」

「志郎さんは、明日の夕方までここにいる」

「まあ、では」

「うん、好機だ」

「そうですね」

「正月は逃げられたからな」

「あなた」

「任せなさい」

「はい」



東條が戻ると、志郎は要談を再開する。


「地中海・北アフリカ戦線が急激に動きます」

「北アフリカは目くらましになるかな?」

「大いなる障壁となるでしょう」

「米国はどう動く」

「超えようとします、正面からね」

「力技か」

「その力を持っていますから」

「かなわんな」

「いいじゃないですか、せいぜい消耗してもらいましょう」

「うむ」

「米国だけに楽な戦後を歩ませてはいけない」

「そうだったな」



話題は、懸案の総力戦研究所高等班第3期生の主題に移る。

基礎研究と志郎は考えていたが、東條は応用ないし軍事を推していた。


「先の欧州大戦を考えてください」

「総力戦だな、まさに」

「誤解を生みます、それだけでは」

「げふん。無制限な戦争だった」

「そうです」

「だが、終結は休戦から講和会議だ」

「だから、日本人は騙されやすい」

「うっ」

「日露戦争では、仲介国が入っての講和会議でした」

「そうだ」

「しかし、パリ講和会議では」

「ああっ。そうだった、勝利国だけだ」

「米英はルールを変えてきます」

「うむ」

「その時に驚動すれば、彼らの手の内に入る」

「そうだな」

「戦争だけではない、学術や研究や」

「商売や会社のあり方までか」

「日本は、基礎基本を抑えておく必要があるのです」

「・・・」





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