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LN東條戦記第3部「売国宰相」  作者: 異不丸
間章 宰相
31/59


帝都東京、宮城、枢密院。


東條が案内された部屋に入ると、枢密院議長の原嘉道と内大臣の木戸幸一が待っていた。


「総理、お忙しいところをすみませんな」

「とんでもない。毎度のご助力には感謝しております」

「「・・・」」

「すまんが、首相」

「ご奉公です、どうぞ」

「「おお」」

「では、遠慮なく」

「実際のところ、人種無差別に関しては?」

「もしも、アジアの民族がすべて独立を達成すれば」

「「はい」」

「いずれ、日本が下げます」

「「ええ」」



「日本は、所詮、日本人だけであります」

「しかし、帝国は、台湾を・・」

「台湾は、同化できましょう」

「「は、はい」」

「しかし、インドネシアやインドではできない」

「「はあ」」

「今でも人口は多い。これらが独立すれば、日本は落ちぶれるかもしれない」

「では?」

「わたしは帝国の宰相であり、すべては帝国のため」

「「はい」」


「だから、人種無差別は暇な時にやる」

「暇な時にですか」

「本気でやれば、亡国となりましょう」

「「は、はあ」」

「緊張を作ります。でなければ、日本の出番はない」

「つまり」

「帝国は、彼らの番犬にはなれない。もとより愛玩犬でもない」

「では、闘犬・・」

「ぎろり」

「「ひっ」」

「猟犬、あるいは牧羊犬か」

「「・・・」」



「日本人白人説は、どうなのですか?」

「有効だと思います」

「しかし、蒙古斑は明らかだ」

「所詮は戦術的な目くらましですから」

「戦略的にはどうなのです?」

「国内世論の誘導という意味では、有効です」

「白人説が?」

「いや、人種無差別がです」

「「・・・」」


「米英には勝利できない。特に米国には」

「「そうでした」」

「ですから、作戦的勝利や戦術的勝利をこつこつと稼ぐ」

「「はい」」

「結果は変わらんでしょうが、時には米英も失策する」

「なるほど」

「小さな失敗、少しの消耗でも、何十年も積もれば」

「ああ」

「お上が言っておられた。50年どころか100年の計だと」

「なんと。畏れ多いことです」

「「・・・」」



木戸内大臣は満足した。しかし、天邪鬼な原議長は念を押す。


「首相は精勤運動の日本精神をどう思われますか」

「はい。日本精神とは」

「「・・」」

「日本人精神とは異なり、偏狭なものではいけない」

「「おお」」

「科学の進歩と同調して精神も進歩しなければならない」

「「おおおお」」


「科学と思想は、どちらかに偏ってはいけないのです」

(それはお上のお言葉ではないか!)

「思うに、科学と思想は両足みたいなものでしょう」

「え」

「両足は同じ長さでないと、うまく歩けない」

「ああ」

「成長して背が伸びるとします。両足も同じように伸びないと」

「「なるほど」」




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