表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LN東條戦記第3部「売国宰相」  作者: 異不丸
間章 宰相
30/59


大日本帝国、帝都東京、情報局。


外国人記者の質問はまだ続いている。


「欧州大戦について」

「え」

「どうぞ」

「ああ。帝国は平和を好む。仏印からも支那からも撤収した」

「はい」

「いわんや、なぜ欧州戦争に」

「それは中立宣言ですか」

「なんとも言えない。情勢の変化は急です」

「う~む。選択肢は温存すると」

「どこの国もそうではないでしょうか」


「独伊への遠慮はありますか」

「そりゃ、つい先日まで同盟国だった」

「はい」

「手の平を返すのは、日本人には抵抗感がある」

「では、中立ですね」

「断言できる材料がない」

「独伊が敗北した場合、その後に日本が」

「あるかもしれん。それを想定するのが国家戦略だろう」

「なるほど」

「ま、あくまで一般論ですが」

「「う~ん」」



「蘭印進駐はあり得ますか」

「ぎろ」

「ひっ」

「「・・」」

「あり得ます」

「「おおっ!」」

「蘭印への武力発動は、先の日米合意に反するのでは?」

「ぎろり」

「ひぇ」

「たしかに、日米合意のひとつに南太平洋の現状維持があります」

「「ほっ」」

「帝国は、これを破ろうとは思っておりません」

「では?」


「蘭印現地も亡命政府も、帝国の問合せに答えようとしない」

「ええ」

「かたや、日蘭会商は有効だ」

「は、はあ」

「保障占領は、国際的に認められた独立国の権利であります」

「は、はい」

「武装進駐と武力発動は、大いに違うでしょう?」

「あ、ま、そうですね」

「現に、お国はアイスランドに進駐しておられる」

「いや、それは。しかし」

「帝国は、現に保有する権利を放棄しないし、必要であれば行使する」

「そ、それは」

「和蘭国には真摯な対応を求めたいですな」

「「ふ~っ」」




会見が終わると、記者同士が集まって意見を交換する。

相変わらず、日本政府の発言はどちらともつかない玉虫色で、明確に断言したのは蘭印進駐の可能性だけだった。


「これは日本政府からの警告か」

「蘭印は、日蘭会商を破ったままだ」

「それにジャワでの邦人襲撃事件」

「ああ、ヤマグチ一家か」

「いや、山口は前の住人の表札らしい」

「じゃ、タナカかサトーか」

「「・・・」」

「蘭印総督府だけでなく、ロンドンの亡命政府へも抗議したのは異例だ」

「ああ、エンペラーが女王に電報を打ったらしい」

「大事になるか」

「トージョー首相も明言するしかないな」

「なるほど」



「待て」

「どうした」

「今日の会見で指名されたのは米国記者だけだ」

「え、そうだっけ」

「ひい、ふう、みい・・」

「「・・・」」

「これはわが国へのメッセージだというのか」

「ほれ、先々月のダバオでの邦人暴行事件」

「「比島か!」」



「そういえば」

「「どうした?」」

「もう1つ、明言があった」

「「んん」」

「護るべきは護る、と」

「「あああっ」」








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ