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LN東條戦記第3部「売国宰相」  作者: 異不丸
間章 宰相
29/59


大日本帝国、帝都東京。


午後、情報局では、首相の記者会見が行われていた。

出席を許されたのは外国人記者だけである。本邦の新聞・通信記者はいない。

まず、情報局の谷正之総裁が、現今の内外情勢と帝国の対応をざっと説明する。次に、東條首相が各国の友誼に感謝する旨の短い演説を行った。それから質疑応答である。

谷総裁は米国記者を指名する。



「ミスタージョン、どうぞ」

「ウェル。えと、首相にお聞きします」

「はい、なんでしょう」

「日中講和が成って4ヶ月経ちますが、もはや東アジアには戦雲はありませんか?」

「ああ、帝国は東アジアの強国でありますが」

「はいはい」

「残念ながら東アジア全体を代表するには至っていません」

「え」

「ほかの国や地域のことはわかりません」

「ええ」

「ですから、あるともないとも言えませんね」

「「・・・」」


「ミスタートム、どうぞ」

「サンキュー。大日本帝国は武力発動を放棄するのですか?」

「おっしゃる意味がわかりません」

「あれ。えと、その・・」

「帝国防衛の意味であれば、大は帝国の版図、小は邦人の財布。護るべきは護ります!」

「あ、いや。その」

「えと、記者さんは武力発動、つまり戦争をご期待ですか?」

「いや、あれ。えと、ノー!」

「米国の方ならご理解いただけると思いますが」

「ウェル、ソー?」

「軍人は戦争を始めないのであります」

「「オー」」



谷総裁は、あらかじめ重光外相から説明を受けていた。

『今日の記者たちは新顔が多い筈だ。それはワシントンの指令だ』

つまりエージェントか。ならば、今日の記者会見はイコール、米国政府への説明か。

『しかし、決して、弁明や弁解と解されてはいけない』

東條首相は、言質をとられないようにうまく進めている。



「ミスジェーン、どうぞ」

「あら。選挙についてコメントをください」

「え。コミットメント?」

「ごにょごにょ」

「ああ、そうか」

「「・・・」」

「えー。大日本帝国では全ての成人男子に選挙権がありまして・・」

「それは、民主主義だと仰りたいの?」

「げふん。国民は自由意志で代議員を選択できるのであります」

「でも、政府が統制しているのでしょう?」

「えー、行政として違反行為を取り締まっております」


「それは、政府に都合のいい候補を支援していることでしょう?」

「げふん。大政翼賛会を解散させました」

「そうだったわ」

「公開議事録を丹念に見ていただければ・・」

「女性参政のことを言ってるのかしら?」

「ですから、私の口からは言えませんが」

「あら、そうなの。うふふ」

「あっ、いえ。そんな」

「わかったわ。次々回選挙では女性選挙権を施行するのね」

「「わああ!」」




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