終わり
ピッ、ピッ、ピッ、
手首から浮かび上がる電光板の数字が段々0に近づいていく。
規則正しいそれは時を狂いなく刻んでいる。
そろそろ時間だね、と横の君がとても嬉しそうな顔をして言った。窓から差し込む朝日が顔を照らし、まるで神様か何かのように見えた。
なんの変哲もないアパートの一室で、私とあなたは出会い、そして私は消えていく。
ピーッピーッ
数字はゼロになり、≪終了しました≫の文字が浮かび上がる。
君はやはり嬉しそうにほら、早く出て行ってと玄関を指差す。
私はひとつため息をついて、立ち上がった。
「次のはいつ来るの?」
「多分、スグにでも来る」
せめてもと、私も笑顔を返す。
「じゃあ、また」
「うん、またね」
扉の閉まる音を確かめ、歩き出す。
また、なんて一生、永遠にやってこないのは誰もが知っていることだ。
このあと私がどんな目にあうのかも知らないくせに、君はずっと嬉しそうな顔をし続けるんだ、ずっと。
「ちくしょう、」
ピンポーン
「はーい」
扉を開けると、先ほどの女性と同じ背格好をした女性がにっこりと笑いながら立っている。
あと、一ヶ月。