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もふもふの伝説  作者: タニシ
獣道編
24/24

探索、強襲!

 街道まで走ってきたが、ここまでで匂いは見つけられなかった。村からこちら側に逃げたことは間違いないので残るは下流か魔法で感知出来ないかだ。

 俺の嗅覚は普通の消臭をされても魔力で強化すれば問題なく追える。魔法を使ったとしても残子は残りわかる。俺が見つけられないほど高度であれば別だが、ただの盗賊にそこまで使える奴がいるとは思えない。よって、見つければ追えるのだが、これがどうにも見つからない。


「『本当にあっているのか?』」


 それは匂いの元の布と、盗賊が逃げた方向の両方を指してのものだ。それが間違っているとどうしようもない。


「あってるはずだよ」


 やはり、嘘はついていない。こいつ自身が嘘を教えられ信じきっているなら別だが、信じると決めた以上信じてやる。

 少し辛いが、今度は目に魔力を集める。嗅覚ならば匂いに近付かなければならないが、目で匂いを探すのであればもっと狼の視力もあって範囲が大きく広がる。そのまま辺りを見渡せすと、ようやく、同じ匂いを見つけた。

 目の奥が軋むように痛むが、鼻で確認出来た。さっさとアジトを見つけ出そう。


「『走るぞ』」


「えっ?」


 匂いをたどり走り出す。どんどん下流の方へ行っているらしい。ガンガン進むと川につきあたって匂いが途切れていた。


「うっぷ、急に走らないでよ……。どうしたの?」


「『匂いが途切れてる』」


 船を使ったならば匂いは多少なりとも残っているはずだ。それがないということは水に潜ったか? 魔法でなければ見つけられないが、一様集中して辺りを感知する。


「『みつけた』」


 子供も連れているし、俺の協力があるとわかるわけもないのでそもそもそのようなことをする理由が薄かったのだが、水の中をもぐって進める魔法を使えるなら別だ。

 水の中に魔力の残子が残ったままである。これでまだ追える。


「どう?」


「『こっちだ』」


 普通こういう場合上流に向かうのが撒くときセオリーだろうが、魔力は下流に続いている。そのまま走って川沿いを下ってく。


「ここは……湖?」


 なかなかに大きな湖に出る。川がいくら綺麗でも流石に底までは肉眼で確認できない。少し深そうだ。

 辺りをぐるりとまわっていく。下流への道もあるが魔力も匂いも反応はない。突き出た石をつたって渡り反対側へまわるがいまいち反応が掴めない。


「見つからない?」


 アリスが背中からポンポン叩いて聞いてくるが、一周してうろうろしてたのだ。察しろ。仕方がない。


「『潜るぞ』」


「え?」


 どえぇぇぇ!? と後ろから煩いが無視して湖に飛び込む。水掻きで潜るのは難しいので尻尾も使って魔力の残子の方へ向かう。八本一列に纏めればヒレみたくなり上手く進める。

 犬は水中に深く長く潜ったり出来ないはずなのだが、俺は不思議と随分余裕がある。確か出来ない理由が息を止める概念がないからだったか? とにかく湖底までいっても余裕がありそうだ。

 残子までたどり着くとそれをどこに向かったのか追う。面倒なことはさっさと片付けたいのにままならないものだ。湖底には穴があり、奥へ魔力の残子も続いていた。

 流石に一度海面まで戻る。


「ぷはぁ! いきなりは止めてって言ってるでしょ!」


 文句を言いつつも、しっかり俺に掴まってたのは彼女自身だ。混乱して離せなかっただけかもしれないが、その程度なら冒険者なぞしていないだろう。


「『洞窟だ。どうする?』」


 あの先に恐らく空洞があるはずだ。魔法を使い続けて潜伏する化け物級はまずいないだろうからだ。しかし、そこまで息が持つかどうかわからないし、出た瞬間襲われることもあるはずだ。

 俺自身は面倒なのでさっさと終わらせたいのだが、人数と強さがわからず、子供が人質としているはずなのだ。俺とアリスだけでは不安が残るし、命の危険もある。だからこそこればかりは聞かねばならない。


「行くよ、行きますよ! どうせ他の人の助力も得られないし、一刻も早く助けてあげたいしね」


 そうと決まれば今度は勢いよく潜る。尻尾と水掻きにアリスのばた足も加わり底まで着くと洞窟の中に潜っていく。

 横に長い洞窟。俺は大丈夫そうだが人間に耐えられるのか?


「『大丈夫か?』」


 念話のようなもので俺は接触があれば言葉を伝えられる。

 俺の問いかけに頷き先に行くように促すアリスだが明らかに苦しそうである。今なら戻ることも出来るのになんと強情なことか。


「『俺の鼻をくわえろ』」


 意識があるうちに指示を出す。アリスは一瞬躊躇したが、素直に指示に従った。

 犬に対する人工呼吸は鼻から行う。ならば、その逆を行う時も鼻からの方がいいに決まってる。

 アリスに息を吹き込むが、これはあくまで応急措置。ただ二酸化炭素が循環しているだけなのでいずれ溺れる。その前に洞窟を抜けなければならなかった。


「ぷはぁ! はぁ……はぁ……」


 幸い、その一回で洞窟を抜け空気のある空間へ出た。奥まで続いており、呼吸を整える間もなく戦闘となることは避けられたようだ。

 アリスは口で息を吐いて、肩を上下させる。ついでに俺は身体をぶるぶる震わせて水を吹き飛ばす。

 にょわ! と、隣からの声は聞こえなかったことにする。

 子供の臭いが六人、盗賊と思われる臭いが八人。


「多いね」


「『他にも出入口があるのかもな』」


 それなら、人が来る可能性が低いこちらに人がいないのも頷ける。子供達を人質にされないように気をつけなければならないな。

 慎重に進み、大きな空洞を覗ける角まで来た。

 魔力探知で盗賊四人を確認。死角に入っているが子供達も確認した。盗賊の内一人が見張りに着いている。他の盗賊はさらに奥か出掛けているかだ。後ろにも注意が必要だと告げる。

 それと、ここから見える二人の内どちらかをやれるか聞く。頭か胸が一番いいのだが、流石に命を取るのは嫌だと言う。甘いことで。

 肩か手足を狙うとことで話がついた。飛び出すタイミングはアリスの射る時に合わせることにした。俺の目標は見張り。倒せなくとも子供達から引き離せれば第一目標達成だ。


「行くよ……」


 小さな声でアリスが呟く。長々の距離で当てられるのか少し心配だ。脅かすことが目的なので当たらなくとも何とかするつもりではいる。

 矢が放たれると同時に俺も飛び出す。アリスの矢は綺麗な軌道を描いて盗賊の一人の肩を貫いた。


「ぐあぁ!」


 突然の矢の飛来と、仲間の盗賊の叫びに全員が驚いている。そのすきに、一人に尻尾を首に巻いて拘束し、見張りの盗賊を叩き倒す。そのとき、急ブレーキの反動を使って捕まえた盗賊を驚いて動けない最後の一人に投げてぶつける。二人は壁にぶつかって気を失っていることを確認するしたら、叩き倒して足の下にいる気を失った盗賊をくわえて、肩を貫いた盗賊に投げつけた。肩を貫いた盗賊はろくに動けず、もう一人の下敷きとなり気を失ったようだ。

 強襲が思っていたよりも上手く効いた。何とかなって良かったとは思うが、最初に叫び声をあげているし、大きな物音を立てている。早々に撤退しないと残りの盗賊達が来るかもしれない。

 そう思ってアリスの方を見ると、第二の矢をつがえようとしたまま口を開けて固まっていた。なにやってんのと頭を叩いてやりたいが遠いので放置する。


「か、かっこいい!」

 

 子供達のようすを見ようとしたら、先に少年の声があがった。

 目を輝かせている少年が一人。怯えて様子を見ている少年少女が一人ずつ。ぽかんとしている少年少女も一人ずつ。今にも泣き出しそうな少女が一人。全員無事で大した怪我もなさそうだ。

だが、体が弱っているのも見てわかる。声をあげている子でさえ服は汚れ少しやつれている。孤児院であまり食べられていないのに連れ出され更に弱っているように見えた。

 子供達を連れて元の道を戻るのは難しそうだ。アリスでさえ息が続かないのにこんな子供達が耐えられる

とは思えない。無理に連れて地上まで行くことは不可能ではないが、のちに障害が残りかねない。


「グワンッ!」


「わわっ!?」


 いつまでも呆けているアリスにひと吠えすると、慌てて立ち上がりこけた。

 なにやってるのだかぁ……






 

ユグ「久しぶりだねぇ……」

あかね「? なに言っているの?」

ユグ「いや、こっちの話。余裕ないなぁ……」

あかね「?」

毬「気にしちゃ駄目よ」


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