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もふもふの伝説  作者: タニシ
獣道編
23/24

救援要請!?2

短い、遅い、拙いの低クオリティ……

明日、差し込みで一話前に一つ出します。

「ハク! お願い助けて!!」


 つい先日ついたばかりの名を簡略化して呼ぶ人間は一人しかいない。金髪の少女が勢いよく両手を広げて飛び込んでくるので横に避けてかわす。

 ドンガラガッシャンと効果音が聞こえて来そうな勢いで茂みに突っ込むアリス。下が石だったら大惨事である。


「なんでよけるのー?」


いや、避けるだろう、普通。確実にもふりにきていたし、言葉と行動が一致してないし。


「ハク、お願いがあります」


 ふざけた声色は息を潜め、真剣味のある声と目の色が変わる……のだが、茂みから頭だけだしている姿は締まらない。嘘ではないとわかるからいいものの、真剣なお願いがある様子には全く見えない。


「聞いてくれるかな? 近づいていい?」


さっきは、飛び付いて来たのに変な奴。触ってないので言葉は返せないからじっと彼女を見つめるだけであるが、彼女はそれを肯定ととったのか俺の尻尾が届く位置まで歩いてくる。


「村に盗賊が攻めてきた」


 ふざけた雰囲気とは程遠い剣呑な声に少しこいつを見直す。


「討伐隊の準備の隙をついて食糧や武具が強奪された。だけどそれはどうでもいい。奴らは教会も襲って孤児達まで連れ去ったの。あなたに匂いを追って探して欲しい」


 武具等をどうでもいいと言い切ったのは心証がいい。だがしかし


「『何故俺なんだ?』」


 尻尾を触れさせ言葉を送る。人海戦術などとれる方法はたくさんあるはずだ。それをあえて俺に頼るのは何故かと疑問に思って当然だろう。


「教会の子ども達は親がいないのよ。礼金が出ないと分かってて動いてくれる人は少ないの。それに、人数が、集まっても子供達が奴隷商に売られるまでに見つけ出せるかどうか……猶予は数日、出来るだけ範囲を絞るだけでもいいから、お願い」


 両の手を合わせて腰を低くするアリス……上目遣いの姿勢は狼の俺には使えてないぞ……

 でもまぁ、言葉には嘘はない。他にも目的があるのかもしれないが、嫌な感じはしない。第三者が関わっているかもしれないが、今はまだいい。


「『それを俺がやって何になる』」

「えっ?」

「『やってやる義理も利点もない』」


 少し意地悪な言い方かもしれない。面倒に感じているのは嘘ではない。さてアリスは何と答えるか


「えっ、えっと、村の人から感謝される?」

「『孤児なのだろう?』」

「で、でも、こういうのは感謝されて村に入れて貰えるようになるのが定番で……」

「『更に敵視されるのも定番だ』」

「う、うーん……」


 普通に返してしまったけど定番を理解していたことに対してリアクションはない。真剣に唸って考えていたためか疑問にすら思わないのだろうか? こいつ、大丈夫か?

 しばらく唸って思い付いたのかあっと声をあげる、アリス。


「私の信用が取れる」


 ……はぁ?

 何言っているだこいつとアリスを睨んでいると彼女もその視線を理解したのか僅かにたじろぐが、しっかり俺を見据えて堂々ともう一度繰り返す。


「私の信用が取れるよ」


 それの何処が利点なのか。欲しいのはこいつの信用などではなく村に入ることと崖を昇る手段である。

 俺のやる気がなくなってきたのがわかったのかアリスは少し慌て出す。


「えっとね、あれだよ。仲間……とはちょっと違うかな? 友達? になるんだよ。危なくなったら助太刀するよ?」


 俺よりも弱い癖に何言っている。せめてハイエナ達を倒せるようになってからでないと話にならない。


「ハクが悪いことしたって疑われても私はハクを最後まで信じるよ? 村の人達がハクを嫌っても私は好きでいるよ?」


 それは魅力がない訳ではない。だが、魔力が微かに揺れているのだ。それすなわち嘘をついているということ。いいやつかと思っていたので残念だが、こいつを俺が信用することは……


「てか、もう信用してるし……」


 !?

 驚きで全身にゾワリとした。勢いが落ち、声が段々弱々しくなっていくアリスの言葉に嘘の反応がない。全身が鳥肌が立つ感覚に思わず身震いしてしまう。


「ハクならきっと助けてくれると思って来ちゃて……」


 あっさり人を、いや獣なので尚更簡単に信じすぎだろうと心の中でツッコミつつも嬉しく思う自分もいて……少し困る。


「お願い。もうとくに何も思い付かないけどきっと何か私が返すから。だからお願い」


 また、両手を合わせて頭を下げるアリスに俺は内心ため息をつく。自分の為にならないことなど今までだってさんざんしてきて基本裏目に出てしまうことなどわかりきっているのに、もうそんなことはしないと決めたつもりなのに甘い奴だなと自身を笑う。同時に気が向いたのだからいいかと、楽観的に考える自分もいる。


「……やっぱり、無理だよね。無茶いってごめ」

「『一度だけだぞ』

 

 言い切る前にぺしりと尻尾で叩く。孤児とかそこまでどうでもいい。たが目の前のこいつに協力してならまだやってやってもいいかと思える。


「『餓鬼の匂いのついたものはあるか』


 えっえっ? と狼狽えるアリスに問いかけると、慌てた様子で一枚の布を取り出す。幼い人間の匂いが複数あるその布のほぼ全員が連れて行かれたみたいで結構なことの深刻さと、この世界における孤児の扱いの悪さに元人間として胸が痛む。


「『乗れ』」

「えっ? もうわかったの?」

「『馬鹿、村付近に』『行かないと話にならん』」

「わかったけど区切ってまで馬鹿いうなし!」


 なにをいう。必要だろう罵りは。

 こいつを乗せるのは癪だが連れて行かない訳にもいくまいのでさっさと乗せてまずは道に出なくては。

 はぁはぁいう馬鹿を乗せてとりあえず森に駆け出す。



毬「……あれで?」

ユグ「さぁ、僕が知っているのはこの世界に来る前の彼女だし」

毬「使えない」

ユグ「ひどっ!」

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