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もふもふの伝説  作者: タニシ
獣道編
22/24

救援要請!?

ハクヤは町、アリスは村といっていますが間違いないではありません。

短編はでないっぽいです。

あと、プロローグ的なものを差し込みで投稿予定

指を止めないアリスに苦笑しつつも、まずはアリスに俺の事情をかいつまんで話すこととした。

 もしかしたら町に入る時のつてになるかもしれないし、意見を聞いてみたかった。いい奴だとは思うがもしも何か企めば勘で大体わかるし、嘘なら見破れるので問題ないだろう。ただ、魔法は何でもありなので油断しすぎないようにしなければなるまい。

 魔法のことは話していいか分からないし、前世のことも伏せて、出来るだけ事実だけで俺の主観や感情が入らないようにした。

 人間のネットワークがどれだけあるか分からない以上、こじつけや過剰な言い分は良くないと、下手をすればあらぬ疑いをかけられる可能性があると考えたからだ。


 まずは大きな木の麓に住んでいたこと。

 (木の正式名称は知らないので大きな樹と説明した)

 人間が来たこと。

 母が死んだこと。

 また人間が来たこと。

 迎え撃ったが返り討ちにあったこと。

 橋と落ちたらしいこと。

 滝にも落ちてここにたどり着いたこと。


 とりあえずこんなものであろうと、話を区切る。鹿や熊、サイクロプスのことも神のことも話してはいない。俺がここにいる理由とは少し違うような気がしたし、十数文字ずつなので出来るだけ内容は簡潔にしたかったこともある。十数文字以上が出来ないわけではないが溜めがいるし、魔力の消費量がそれまでの比ではないので遠慮したい。何より面倒になりそうなことは初めからしないに限る。

俺の話を無言で静かに聞いていたアリスだが表情は読めず、心音や魔力の揺れは検証例が少なくて全くといっていいほどわかりはしない。出方が分からずじっとしていたアリスがついに動きだし、今まで握っていた尻尾からゆっくり手が離れると


「うわーん!辛かったね!寂しかったよね」


 無表情だった顔がくしゃっと歪み目を潤ませて抱き付いてくる。急だったので反応が間に合わず抱きしめられると頭を撫でてくる。

 この世界は厳しい。俺より辛いだろう体験をしている奴など沢山いるであろう。だからこの反応には驚いてしまった。血に慣れていないようだし、箱入り娘で世間を知らないのかもしれない。

 人に撫でられるのは初めてであるが悪くはない。しかし、人間の感覚的にはよろしくもない。


「『離れろ』」


 ぺしぺしと尻尾で後頭部を叩くが、決して離そうとはしないアリス。世間知らずの反応だろうと自分のことのように感情的になってくれたことは嬉しく思うので無理に離すことも憚られるのだが……


「……グヘヘ」


 ……うん、舐めてた。いや撫でられてた。気付けば俺を撫でるアリスの顔は緩みきり、涎なで垂らしている。

 こいつヤバい!


「『離れろ離れろ離れろ!』」


 取り乱していっぱい文字を送るが反応がない。こいつ、聞いていない、というか見ていない!?


 女の子にあるまじきグヘグヘという声に違う意味での危機感が半端ではない。急いで尻尾を総動員し、足を踏ん張って引き離そうとしても何処にそんな力があるのか全く離れない。怪我させるかもしれない強さで引っ張るのは戸惑われたが、注意しつつ一度緩めるとそれより先にアリスが手をとめた。


「ひとりは寂しいよね」


 実感のこもった声色に思わず俺の動きも止まる。


「私ね。この世界の住人じゃないんだ。っていってもわからないよね。とても遠くて優しい場所からきたんだよ」


 驚いた。だが納得はいく。もし地球の、もしくはそれに近い、それも豊かなところから来たのなら。こいつが俗にいう召喚者とやららしい。昨日の今日だがもしかしたら神はこれを見越していたのかもしれない。


「皆優しくしてくれたけどね。やっぱり違うんだよ。一人になるとそう感じちゃう。そしたらとても寂しくて、夜はよく眠れなかった。この前あなたに抱き付いて眠った時はとてもぐっすりだったんだけどね」


 そういって横目に見える彼女は舌をだした。

 決して可愛くなんてない、あざといぞ。


「だから、家族と離れる辛さはわかるつもりだよ。ましてやあなたは私より辛いでしょうね」


 そうでもない。頑張ればいつか会えるはずなのだ。俺はそれを信じている。世界をまたいだ彼女とは決定的に違う。


「『これで普通だ』『お前は自然を知らないだろう』」


 アリスは少し悲しそうな顔をした。それが世間知らずの自分に対してか、この厳しい世界に対してかは伺い知れない。


「『頼みがある』」


 痛い沈黙に俺はそう切り出した。

 帰りたいがあの崖を越えられないことと共に、町に行き、道の手掛かりを探したいことを伝えた。人間が来たのだ。登る道や方法があるはずだと。彼女自身にも知らないか訪ねた。

 アリスは難色を見せた。

 彼女自身その方法を知らないのもあるが、何より討伐しようとしている獣を町に連れていく訳にいかない。まして自分が勝手に出て来たのでその予定が早まっているかもしれないからだ。万一村に入る許可が出たとしてもそれが罠でない根拠は何もない。


「猟獣登録ってのがあったっけ。許可取れるかな……」


 ぶつぶつ呟くアリスに嘘の反応はない。真剣に考えてくれている、それだけで少し嬉しく思う。

 やがて考えはまとまったようで、俺と目をしっかり合わせた。


「あの村にあるギルド……えっと組合みたいな……えっと」


 ギルドや組合がわからないかと思ったのだろう。

 大丈夫だと送るとほのかに笑顔を見せる。

 ようするに一旦彼女のお供として登録し、信頼を得たら冒険者として再登録しようとのことであった。狼が冒険者として登録出来るのか疑問に思ったが意志疎通が計れれば人外でも規定的には問題ないらしい。しかし、やはり反感はでるだろうとのこと。

 彼女自身だけで出来るかもしれないのはこれくらいらしい。少し歯痒さが残るが、停滞しているだけよりはましだとお願いした。


「もし、駄目でも目的の為になりそうな場所と方角くらいは伝えるよ」

「『助かる』」

「あなた、名前はあるの? ないなら付けてあげる。えっと白麿とか」

「『ハクヤ、だ』」


 今、真剣に神に感謝した。


「そっか、よろしくね。ハク。で、出来れば道まで送って貰いたいんだけど…」


先ほどまでの図々しい態度は何処へやら。不安そうに俺をチラチラ見るアリス。さりげなく名前を簡略化しているのはご愛敬なのか、この。


「『……今度は気絶しないか?』」

「だ、大丈夫だよ。多分、いきなりじゃなければ」

「『分かった。道まででいいのか?』」

「本当!? ありがとう。うん。そこまでで大丈夫だよ。秘密兵器があるから」


 満面の笑みで今にも跳び跳ねそうに喜ぶアリス。いいことした気分だけど、これは合法的に俺に抱き付けることを喜んでいるように思うのは気のせいではないだろう。少し複雑。



 道まで背中に乗せたアリスは今度は気絶しなかった。ぐったりとはしていたが満足そうな顔をしていてニュフフと笑い続ける姿は強者に見えた。怖えぇ……


 秘密兵器とやらはなんと自転車だった。

 ウィンドウを弄ると目の前に現れたのは驚いたが、独特の発色を放つし、掴んで引っ張りだすようにしていたし、戦闘中では使えないだろうが便利で羨ましい。弟の影潜りに似ている感じがした。弟はあれ以来まだ使えてないが。

 自転車は鉄と木材で出来ている。流石にそっくりそのままということは出来ないらしく、しかし、これでも重宝され一部に普及しているそうだ。

 数多くの召喚者はある程度力があり、色々文化を持ち込んで広めているらしい。聞いた限り、食や風呂やネタなどから日本の影響が大きいみたいである。銃や自動車っぽいのもあるとかもはやファンタジーはどこにいったと突っ込みたくなる。


 明日にはまた来ると約束して、アリスは帰った。

 とりあえず今日は道から少し離れた位置で一晩過ごすことにした。この辺りに来て気づいたが、葉っぱが紅葉しだしている。俺のいた森は年中葉があったから感覚が少しずれていたのかもうすぐ秋らしい。さらにこの森のほとんどもしくは全部の葉が落ちるっぽいのだ。鹿の群れをここ最近見ていなかったが冬に備えて引っ越しをしていたのである。見なくて当然だ。

 適当に軽く捕まえて食べて今日はもう寝る。


 っと。

 真夜中、辺りは月明かりのみの森に俺に向かってくる気配を感じて目を覚ます。場所を変えたせいで森の生き物が俺を狙って来ているのか、それとも真夜中に討伐が開始されたのかはわからない。とにかく息を潜めていた。

 そいつは俺を見つけた。俺に向かって勢いよく向かって走りだし、静寂な木々を震わせるように吠えた。

















「ハク!お願い助けて!!」







毬「うわぁ……」

あかね「うわぁ……」 

ユグ「抑えていた反動もあるのだろうから、少しは多目にみてあげなよ」

毬「……そうね」

あかね「……うん」

ユグ「白い狼は彼女が一番苦手なはずなんだけどね」

毬「うわぁ……」

あかね「うわぁ……」

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