転生!?
ゆっくり進みます。
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かわいいよ~かわいい。
ずっと見ていたい。触りたい。側にいたい。お世話したい。その全てが愛おしくてたまらない。俺を舐めてほしい。噛んでほしい。引っ掻いてほしい。きっと何をされても喜びへと変わるだろう。
キモい?
はん、そんなの言われ慣れている。誰に言われようと俺には関係ない。
愛おしいものを愛することのどこが悪い。
だから、誰に何と言われようと俺は俺を貫く。そして高らかに宣言しよう。
俺は……
オオカミが好きだー!!!!!!
いや、狼に限らず犬、猫、兎に虎、ライオンからカピバラまで全てのもふもふした動物は好きだが、やはりオオカミは格別。あのフォルム、あの動き、あの鳴き声いや遠吠え。
そして、それが超もふもふときたら惚れない訳がないだろう。人がなんと言おうと興味がない。
そんな俺が今勉強を頑張っている。
何故かって?
それは……
オオカミのために決まってんだろ。
何故わざわざこんな地元から遠い学校に入ったと思っていやがる。オオカミのためだ。
ここは成績優秀者がホームステイができる。
俺が一番好きなのはホッキョクオオカミで、グリーンランドやカナダに生息している。超もふもふの白い奴~
そして、ホームステイの先はカナダ! are you understand?
そう、オオカミのためだ!
今回丁度先はカナダ北部の北極諸島にある島。
面積70,028km²で世界第24位、カナダでは第5位。人口114人。ノースウエスト準州のイヌヴィック地域バンクス島
そして、ホッキョクオオカミの生息地! ここ重要
この日のために成績を上げ続け上位を常にキープ。
向こうでの言葉も不自由なくするため、公用語もばっちり。
そして、他の成績優秀者は日本を離れてホームステイする気なぞさらさらない。
いくぞーカナダ、バンクス島~
と、いう訳で着きましたカナダ、バンクス島~
ホームステイ先の人は40代の男の人とその奥さん。そして、俺と同じくらいの年の女の子。
まず丁寧に挨拶したら驚かれた。俺の事を褒めつつ、それだけできるのに何故ホームステイしに来たのかと聞かれたので、狼が見たいといいつつお願いしてみるとすごく笑われた。俺はオオカミが大好きだが、人が嫌いなわけではないので少しムッとした。
だけど、快く了承してくれたので俺は跳ねて喜んだがまた笑われた。
オオカミを探す当日がやって来た。
インストラクターの人の言うことを絶対聞くことを条件に連れて行ってもらった。当然ながら、見つからないこともあるそうで、辺りを注意をはらいながら行こうと思う。
かなり進んだ頃、一緒に来ていた女の子が足を滑らせて落ちた。とっさに手を掴んだが支えきれずに一緒に俺も落ちた。
あまり高さはなく怪我は互いになかったが急斜面で地面が悪いらしく、急ごしらえの緊急用ロープでは長さが足りないから、別のロープを持ってくるまで動くなとのこと。
女の子と二人残された中近くの茂みが揺れる。
「ひっ」
尻餅をついた女の子の悲鳴が聞こえるがそんなの無視だ。なんせ目の前に憧れのオオカミが姿を現したのだから。
「グルルルッ」
低い声色は警戒の証、襲い掛かってくるのではなく威嚇してどこかへ行けというサインだ。
何故? っと思うがすぐ理解した。背後にもう一匹いる。
足を罠、トラバサミというものに挟まれ身動きが取れずにいるようだ。これは番か?
女の子が体を反転させて地に手を着き、オオカミから逃げようとするがそれは悪手だ。
警戒しているのにいきなり動き出すなんて襲われるに決まっているじゃないか。
跳びかかったオオカミと女の子の間に腕を差し込む。
「っ!?」
女の子が俺の腕をみて声にならない悲鳴をあげながら固まっている。
ぴちゃ、と腕から血が滴り落ちる。痛みは感じない。恐らく麻痺しているのだろう。下手すれば腕は噛み切られてしまうかもしれない。噛みついているオオカミの目には怒りと恐怖があるように見えたとように思う。当然だ、彼らだって怖いだろう。その頭をひと撫でしてから、重い腕ごと前に進む。
もう一匹の前まで来ると膝を折る。腕を噛む力が強くなるのを感じる。
もう一匹のオオカミはぐったりしており、腕に噛みついているオオカミと違い逃げようとしているのか足を引っ張っている。その背中を軽く撫で、両手をトラバサミに突っ込む。
噛まれてない方は痛覚が残っているようでめちゃくちゃ痛い。でも止めない。無理やり広げようと力を込めると徐々に開き始める。
ついに外れて足が抜けると、ふらふらした足取りで去っていく。もう一匹も距離ができると離れて去っていく。
それを眺めながら、俺は意識を失った。
起きたら真っ暗な空間にいた。自分の手足の感覚はなく、ただ、漂っている感じ
目線を動かす感覚はあるが、何処も何も見えず真っ暗で動かした気がしない。これでは時間間隔まで狂ってしまいそうだ。何もできることもないままただただ漂い続けた。
どのくらいそうしていたかはわからない。数年かも知れないし、一瞬かもしれない。
俺の意識が闇に溶けかけていたその時何処からか声が響いた。
「やっと見つけた。」
誰かが俺を探していたらしい。意識がはっきり戻ってくるのを感じる。
「ごめんね。遅くなって。」
誰だ?
「僕かい? 僕は神だよ。」
神? ふざけてる?
「いやいや本当だって」
そうか、じゃあそれでいいや
「あれ? 信じてくれるの」
俺に確かめることはできないからな。で、その神様がなんのようだ?
「神様だなんて大げさな。僕はただの神だよ。そうそう君を転生させに来たんだ。」
転生? あのマンガやラノベでよくある設定か?
「そうそうその転生。良く知ってるね。僕の前情報では動物大好きっ子ってことなんだけど」
そりゃ、獣人とかファンタジーでこその可愛い生き物はいるからな。
「あぁ、なるほど、君はどこまでも君なのだね」
おう。ってそういや転生ってことは俺は死んだのか?
「そうだね」
オオカミに噛み殺されるなんて……最高じゃね。
「……本当に変わってるね」
まぁ、まだ生きて触ったり遊んだりしたかったけどな。
「そうかい、ただ言っておくとあのオオカミは君の死因には直接関係ないよ」
はぁ?
「君は意識不明のまま一命を取りとめるんだ。ただ、2,3日意識不明でその間に心臓麻痺さ」
……なんだよ、それ。頭を抱えたいくらいだ。その頭はすでにないけど
「そうだね、今君は魂といわれる状態だからね」
あぁまだもふもふしたいな。
「忘れたのかい、僕は君を転生させに来たんだ。その後思う存分してくれればいい」
そうか! ありがとう神
「ふふっどういたしまして、ただ君が選ばれたのは偶然なんだけどね」
どういうことだ?
「だって死んだ生き物全部を転生させていたら神がいくらいても追いつかないじゃないか。世界は君の住んでいたところだけじゃないんだよ」
そらそうか。ん? ならなんで転生させるんだ?
「ん~いくつか理由はあるよ。その世界に変革を与える為とか、勇者みたいな救世主を送って世界の崩壊を防ぐとか」
そっか、じゃあ俺にも何かあるのか
「うんん。ただの気まぐれ」
っておい!
「あははっだって仕方ないじゃないか。大半の理由はそんなもんなんだし」
はぁ、頭が痛くなる話だな。……頭はないけど
「でもそのおかげでまたもふもふ? できるのだから感謝してほしいな」
まぁそうだな。
「でね、転生する人にはある特典をあげるんだ」
特典?
「そう、特典。転生する世界はもう決まっているけどささやかな願いであれば叶えてあげられるよ」
そうか、なら……
「あっそれとね。初めからあげる特典もあるんだ。全部とはいえないけどほとんどの言語を理解できるようにしてあげるのと、その世界で生き抜くための力かな。大きく個人差がでるけどね」
おぉそれはありがたいな。なら俺の願いを心置きなく叶えてもらえるってもんだ。
「でだ、君の願いは何だい?」
俺を……オオカミにしてくれ
「……」
あぁ、オオカミが無理なら他のもふもふした動物でも…あっ今から行く世界はファンタジーなのか?なら獣人とかもいいな。
「あははははははははははっ」
ちょ、いきなりどした!?
「ははっご、ごめんね、ふふっ、そんな願いは初めてだったから面白くて……っぷ」
やんのかゴラッ笑ってんじゃねぇ。出来んのか出来ねえのかどっちなんだ。
「くくっほんとごめんね。っでもお腹痛い。
……ふぅ、で君の願いなんだけどできるよ。でも本当にそれでいい?」
あぁ、出来れば群れて白くて大きくてふわふわなのにしてくれ。
「君は本当に面白いね。すごく気に入ったよ」
おう、俺もお前はいい奴だと思うぞ。
「オオカミにしてくれるから?」
それもあるが……なんかいいやつな気がするんだ。
「それは……嬉しいね~」
お、おう、なんか照れるんだが……
「……そろそろ時間だね。じゃあ君を転生させるよ。もう一回はないから悔いの無いようにね」
あぁ、ありがとな
「もう二度と会えないだろうけど、君にはまた会えるといいな」
そうだな。……またな
「ふふっ神に気を遣うなんて大物だね~じゃあまたね♪」
そうしてまた俺の意識は消えていった。
そして俺は楽園に転生したのだー!
俺の意識がはっきりしだしたのは一か月ごろ、そこから徐々に戻ってきた感じ、それまでは理性も記憶もない俺って感じで兄弟たちに突っ込みまくってた。母にもだけど
その母なのだけどとてつもなくでかい。寝転がっているのに転生前の俺と同じくらいの高さはある。背中に突っ込むと俺がすっぽり埋まるほど毛があり天国だ。
兄弟は姉、兄、弟、妹の五兄弟。毛並みは基本白く姉は赤、兄は黄色、弟は黒、妹は緑のけが混じっている。俺は自分が見える範囲は白一色だが兄弟たちは背中に混じり毛が多いので俺にもあるかもしれない。気がむいたら確認しようと思う。
そして一番の特徴は尻尾であろう。色こそ白であるが細長く猫のようである。それが個体差で複数あるのだから驚きだ。まさにファンタジーである。
母は三本、その大きな体より長い尻尾はとてつもなく器用で俺たちに巻き付いて持ち上げるなどだけでなく、俺たちと遊んでくれる細かい動きはまるで別にの生き物を想像させる。
まだ、扱いは器用ではないが俺たちにも尻尾がある。
姉は五本、兄は四本、弟は二本、妹は三本である。そして俺は…八本だ。
これが神が与えた力だろうか。本能的に動かし方は分かるが扱いが難しい。既に兄弟の仲では一番下手くそであろう。それだけではない。力でだって兄姉に勝てない。弟妹と遊ぶのも最近押され始めているから力でも一番下になるのは時間の問題であろう。
理性が完全に戻った今兄弟に吹っかけるのを自重することもできるがやめる訳がない。楽しいしもふもふも触れるし止める意味がない。
でも最近は違う吹っかけ方をしてみたりもする。いつもは誘って断られると無理やりとっついて始めるのであるが、最近はしょぼんと首を落として離れる。
するといつもはとっついてくるのに何で?みたいな顔心配してで追っかけてくるので笑ってしまう。
それがばれると向こうから突っ込んでくるのだ。
彼らにも感情はある。意向がある。思いがある。互いに言葉は通じないがこれだけ時間があれば理解してくる。この種族はほんの少し本能が強いだけで非常に頭がいいのであろう。
他の種族を見たことはないのだけど。
それは俺たちが人里離れた山の洞窟の中に住んでいるからだ。一回出入り口付近まで近づいて外を見たけど森が広がっておりかなり標高が高いようだった。そのあとすごく母に叱られて尻尾で叩けれたがそれもまた嬉しく、楽しい思い出であろう。
そして今日初めて別の所属の生き物を見た。野兎のような生き物である。この前からものごごろ着いた時から飲んでいる母乳の他に少量のお肉をもらいだしその量が増えていっていた。
弱っているがまだ生きている野兎を洞窟内に離すと、兎は必死に逃げ出した。
僕たちより一回り小さいくらいの兎が走り出すと兄弟たちもそれを追いかけて走り出した。とても楽しそうにしている兄弟をながめ一人のろのろとそのあとに続く。
ついに兄が仕留めた。辺りに血が広がっているがグロいとも酷いとも思いはしないそれが生きるということなのだから。
そんな”遊び”が始まって十数日俺は母と向かい合っていた。間には疲れ果てて動けない野兎。
この十数日俺は一度も野兎の命を奪ってはいなかった。それを母は知っていたのであろう。オオカミになりたいと願った時から覚悟はしていたがあまり気乗りのすることではない。
でもしなければならない。俺がもし一人でも生きていけるように母は”狩り”を教えているのだから。
俺はそっと野兎に近づくとそのまま首を噛んだ。兄弟のように噛みちぎったり引き裂いたりしては彼らに劣る俺ではいつまでかかるかわからない。だから窒息させることにした。きゅぅと弱弱しい断末魔をあげて野兎は絶命した。
俺がこの世界で初めて命を奪った瞬間だった。