神の頼み。
今回で帰るはずだった神様、
書くのが楽しくて量が増えた。
反省しているが後悔はしていない
俺の前世は間違いなく男である。
しかし、俺の狼としての個体は雌。女の子になっているのである。3年近くこの体なのだから嫌でも気づくといくかすぐ気づいた。だが、その事実にあまりショックは受けなかった。記憶が徐々に戻ってきてきたせいか、その前の期間があるからか、この世界に俺の知り合いはいないせいか、もふるのに関係ないせいかはわからない。
だから、すんなりと受け止められたつもりではあった。
「あはははははははっ」
だが、神の笑い声は心に刺さる。凄く恥ずかしいしムカつく。秘密にしていた黒歴史を暴かれたような気分だ。もと男ということを知っている神に会うことでまだ完全に受け入れられて無かったことを自覚する。
というか、転生させたのは神なのだからこいつのせいじゃね?
心の中の憎悪が増していく
「ご、ごめんね。うぷぷ、確かに種族は定めたけど性別は考えてなかった、あははっ」
くそ、これはつまりあれか、狼の雄にしてくれと頼まなかったおれが悪いのか。
いい加減笑うな
「んふふふっ」
堪えようとしているのだろうが全く堪えきれてない。漏れる声が変わっただけだ。
うむ、この苛立ちは半分、それ以上は神が笑っているせいじゃないかな。一発ぶん殴っても問題なくないか?
「んひっ、ちょ、ちょっとまって、んぷぷ、この体脆弱だから、死んじゃうよ、くくくっ」
死んじゃう~とか言いながら余裕そうな神。くっ、仕方がない何とか止めようとはしているみたいだし待ってやるかと、煮え立つ怒りをどうにか沈めてやる。怒りのやり場を何処かに向けたかったが前にやってしまっているので抑える。
「こう言うと、君が手を出せなくなることは知ってたけどね。あははっ」
ようし、歯ぁ食いしばれ!!
神の笑いが止まるまでに俺は魚を4匹ほど釣った。タイムは普段の平均的。
それを焚き火で焼きながら神が自分で持ってきたその辺の石に腰かけてようやく話を
「やぁ、すまないね、ご馳走になるよ」
切り出さない。焼けた魚を手に取りはむはむっと食べていく。
あっ内臓の処理は完璧じゃないから気を付けろ
「いやいや、爪でここまで出来るのは凄いと思うよ。うん、美味しい。」
そういって神はペロリと一匹たいらげ次の魚へ手を伸ばす。
そろそろ、何でここにいて何しにきたのか白状したらどうだ。
「白状だなんて、僕はただ友人に会いに来ただけだよ。はむ」
嘘だ。まるわかりすぎる。目と耳に通してある魔力によりそれは更に裏付けられる。目に見える神の魔力が揺らぎ、聞こえる心音は一瞬早くなる。神に心音があるなんて驚きだが、普通に話している分では変化が無かったので恐らく今のが嘘をついたときの反応。人間は嘘をつくとき脈があがるというし、神を人間と呼んでいいかは知らないが心音あるし多分間違いない。
「うん、正解、今のは嘘。あと僕は人神、つまりは人から神になったから肉体的には人間で間違いないよ」
やっぱり嘘か、最悪こいつ俺を笑うためだけに来たのかもと考えなくもなかったし、
「ちょっ、僕のイメージ酷くない!?」
それにしても人神か、ファンタジーだしそんなこともあるのか。
「無視!?」
自業自得と思います。
「うぅ、そんなに酷いかな」
本気で落ち込んでいるようにも見えるのでフォローはしとく。
まぁ前言ったみたいにいいやつとは思うぞ。
「そ、そうだよね、この僕が」
ただ、性格は……
「えぇ!?なんでそこで止めるの、というか心の声で会話することに馴れてきてない!?」
それはさておいて
「さておくな!」
やっぱり神なら厄介ごとを持ってきているんだろうな~と
「あ……うん……察しが良くて助かるけど…下げて上げて落とされて……僕がからかいにきたのに……」
別の意味で落ち込み始めた神、やっぱりからかいにきてたんじゃねぇか。まぁ、久しぶりの会話は楽しくそれだけども神に感謝だな。
「そうおもってくれると嬉しいよ、で、その厄介ごとなんだけど」
だが断る
「何で!? いまのは快く引き受けてくれる流れじゃないの!?」
だれがやるかめんどくさい。これから神の魔法を模倣する練習をして町にいくんだよ、こら
「それ僕のおかげじゃん!? せめて話だけでも聞いて」
どこかのセールスマンのような文句に思わず失笑する。
仕方ない、話だけども聴いてやるか……貸し一な。
「ありがとう……ってこれ貸しなの!?」
話すならさっさと話せ
「うぅ、傍若無人だよ。わかったよ、話すよ」
と言いつつ3匹目の魚に手を伸ばす、こいつ随分余裕がありそうだ と尻尾でその手を叩き落とす。
「頼みと言うのは君にも関係があることなんだ」
何事もなかったようにしれっと話を始める神、しかし、俺に関係があると言われれば多少なりとも気にはなる。
「何がというと、君が世界樹と呼んでいた木があっただろう」
何故世界樹と呼んでいたことを知っているかは分からないがあったな、住んでいる岩の上に
「うん、それなんだけど、簡潔にいうと世界樹が消滅した」
……は?
何を言われたか一瞬分からなかった。
「燃やされたわけでも折れたわけでもないよ、ただ消滅した」
ちょ、ちょっとまて、俺が寝ぐらをでる時には確かにあったはずだ。
「うん、あっただろうね。世界樹が消滅したのは君が人間と戦ったあの日の夜のことだもの」
……あそこにいた人間のせいか? しかし、彼らに木を折ることは愚か幹を削ることすら出来るとは思えない。本体は枝よりも硬いのだから。ならば何かしらの魔法か。詳しくは分からないがあるとしても膨大な魔力が必要なはず、でも個人で母より少ない魔力しか感じなかった。では対峙した彼らではない。
他にだれかいた?
「違うよ、それはただの偶然なんだ。ちょっと長いけど聞いてくれるかい」
……おう
「このせかいには魔力が満ちているだろう。それは水のように流れて行くものなんだ。その中で束になって大きな流れになったものを竜脈という。ファンタジーによく出てくるね。でその竜脈が一ヶ所に集まる場所があるんだ。そこを竜結と呼ぶ」
もしかして、世界樹はその竜結とやらか?
「そう、竜結とはいわば制御装置、新たに魔力を分散させる場所なんだ。竜結は一ヶ所じゃない。世界中に点在している。その中の幾つかが色んな理由で壊れてね。その分が他の竜結に流れていったんだ。竜結といえど限界がある。それを越えて処理し負荷をかけ続けた結果世界樹は弾けとんだ。」
そうか、世界樹はなくなってしまったのか。しかし、それと俺へ頼みとどう関係がある
「あるね。僕はね、世界中に弾けとんだ世界樹の核の欠片を探してほしいんだ」
欠片?
「そう、欠片。魔核と呼ばれるものだよ、石を持つ生き物の石も魔核だね。これがその一つだよ」
神が緑の欠片を取り出す。親指と人差し指で挟んだ細長い欠片から強烈な魔力を感じる。それも漏れ出ているという感じではなく目にしなければ分からないほど濃密で留まっている。
これ、不味くないか?
「うん、非常に不味い。守護魔装っていう一騎当千の武具が出来ているし、魔物が食べれば凄い強化、土地に放置されると最悪異界化といういわばダンジョン化するんだ。だから出来るだけ集めて僕に渡して欲しい」
まぁ、出来たらな。そんなもの相手に勝てると思わないしな。それと俺と関係あるかといわれればちょっと弱いし
「それが、まだあるんだ。世界樹がなくなって処理することが出来なかった分はそこに溜まる。それはこの欠片よりも強いことが多いんだ。だから大体はダンジョン化して強い魔物が出てくるようになってしまうんだ」
何だと、兄弟達は大丈夫か?
「それに竜結が次々と無くなってしまえばこの星が崩壊してしまう。だから欠片を集めて僕へ渡してくれると嬉しい。それを使って僕がまた新たな竜結を建てるよ。もちろん君から貰った欠片はあの場所を優先する」
神のいうことは分かった。ただ何で俺なんだ。
「実をいうと君だけじゃないんだ。僕の管轄の協会の信者にお告げとして集めて貰ってるし、他にこの世界に渡ってきている人も要るからね。実際に僕がこっちの世界に来たのは珍しいけどね」
成る程、この世界の住人や他の転生者にもおねがいしているわけか。
「召喚者、いわばファンタジーでの勇者みたいな人も結構いるよ。でも、なかなか集まらなくて」
それは金になるだろうし、力になるもんな。手放す奴が少なくて当然か。
「引き受けてくれるかい?」
面倒だな、早く兄弟たちの元に帰りたい、しかし、このまま帰ったところで安全には暮らせないのも事実。
「引き受けてくれるなら、何か情報をあげるから」
何でも一つささやかな願いじゃなくて情報なんだ。
「僕はこの世界にほとんど干渉できないし、今の君には必要だろう?」
それも、そうか。仕方ない引き受けるか。見つけて出来ればとって渡すぐらいだろうけど
「それでいいよ。ありがとう。で何が聞きたい」
兄弟の安否は気になるな。帰りかたも。あとこの星って地球なのかどうかとか
「待って待って、そんなに教えられないよ。ちょっと制約がついてるから出来るだけ絞って、それにそれらはもうすぐ分かるかもだしね。他にはないかい、僕にしか聞けないこと。」
他、他かぁ……今のところ聞きたいのはそれくらいなんだけどもうすぐ聞けるってなら何がいいかなぁ……
そうだ、なら魔法についてはどうだ?
「それももう少しで聞けるけど……細かい部分は難しいだろうね。君の魔法も特別製なことだし、それでいいかな?」
おう、よろしく神先生
「おほん、では……なになにさん、と言いたかったけど君の名前って何かな? 前の名前でもいいけど性別変わってるし何か考えているのあるかい?」
名前か、以前の名前は曖昧にしか思い出せないが男の子っぽい名前だったはずだし、ないのは不便だからなにか考えないとな……
「そ、それなら僕につけさせてはもらえないかな」
おぉ、神がつけてくれるなんて縁起がいい。お願いする。
「んふふ、何がいいかな~」
凄い喜んでいる神。すんげぇニマニマしてる。見た目子供だからまだましだけどもう少し成長してたら絶ってぇ気持ち悪い
神をいつまでも神呼びも変だよな。神にも名前あるのか?元人らしいからあるはずだけど。
「僕? 名前は……はっ思いついた」
ほほぅ、聞こうではないか。何故そんなに名付けたかったのかよくわからんが変なのは却下だからな。
「ポチ」
却下
「えぇいい名前だと思うんだけど」
まんま犬じゃねぇか却下だ、却下。
「う~んとじゃぁ、しろ はどうかな」
変わってないし!
「違うよぉ、真っ白だからしろ」
一緒だっての!却下!
「えぇ。我が儘だなぁじゃ、ハチ は?」
どこが変わってるんだよ!
「だって尻尾が八本じゃないか」
見た目で決めてるのも変わってねぇ! そしてそれで通るわけないだろうが!
「う~んそれじゃぁ、う~ん……」
真剣に考えてるっぽい神。
いや、大事だけど、講義もまだだし早く決めてもらわねばならんのだが。
「はっ、ハクヤってのはどうだい?」
おぉ、ずいぶんまともに……
「はい、決定!」
……ん?
なんでそんな早急に……
ハクヤ
ハク→白 ヤ→八
って結局見たまんまじゃねぇか!
「さぁ講義に移ろうかハクヤちゃん、うぷぷ」
こいつ……ムカつく、マジで一発ぶちこんでやろうか。
「でままず始めに、ハクの魔法を教える前に魔法に関する基礎知識をかいつまんで説明しよう。」
急にキリッしやがった。名前もハクヤで決定らしくさりげなくあだ名っぽくもじられた。
仕方ない、嫌というほどでもないし、甘んじて受け入れるか。
そう思うと神がニマッとした。俺はムカッとした。
バチバチッ
「っ!!」
兄の模倣した静電気みたいな痛みを味会わせてやった。心を読んで逃げ出そうとしたけれど狼の身体能力に勝てるわけもなく、神が後ろを向いて走りだそうとした瞬間に俺の尻尾が神の首筋にヒット。
ついでに前のめりに倒れそうになった神の両脇に尻尾を差し込んで持ち上げ石に座らせる。
「酷いじゃないか……」
神の涙目はレアだろう。首筋を擦りながら恨みがましく睨む。見た目子供なので罪悪感があるが、あれは俺も痛いし、お仕置きっぽいので今後も採用しよう。
「うぅ、もう、説明するよ!」
なかばやけくそ気味に語意を強くして立ち上がる。
よろしくお願いします。っと
毬「ギリギリッ」
あかね「ちょっと、お母さん」
毬「だって我が娘とおしゃべりしてるのよ!私だってしたことないのに!」
あかね「それは、私もないけど……私とは話てるよ?」
毬「それとこれとは別、あっなに触ってるのよ!」
あかね「尻尾で叩いただけじゃない……」




