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もふもふの伝説  作者: タニシ
獣道編
18/24

二度目の遭遇。3

PV1万、ユニーク3000越えました。ありがとうございます。

これからもこつこつ続けます。

 辺りは真っ暗だ。暗く月明かりだけの森というのは薄気味悪い。だが、そんなことは気にせず俺は木々の隙間を走り抜けていた。正直かなり焦っていた。いつもならもう待ち合わせの場所に集まっている時間、俺は少し遅れて到着した。しかし、そこに子熊も鹿もいなかったのだ。匂いもあの子ら魔力も感じない。つまり、ここに戻ってきていないということ。いつもきっちり帰って来ていたので焦り森へ走り出していた。

 土や木の葉の匂い、動物の匂い、空気に漂う魔力、走り回ったが焦った状態で正確に感知できていたかも分からないがついに見つけられなかった。そして結局、川沿いのあの大きな岩の上に戻ってきた。

 そう、子熊や鹿を俺がどうこうする必要はないはずだ。強くなってはいるがもし死んでしまっているのならもうどうにもできないし、遠くに行きすぎてそこで一泊してくるのかもしれない。もしくは、昨日俺が考えていたように俺から離れていったのかもしれないのだ。

 だから、俺は探さない。探してはいけない。こうなる覚悟はあったはずなのに自分の心の甘さに嫌気がする。つい、いろんな感情の乗った一撃を木に八つ当たりしてしまうと木が音を立てて折れてしまった。

 あぁ、本当に駄目駄目である……

 自分自身に嫌気がさす。

 今日は動く気になれなかった。






 とは言ったものの、数時間も気持ちが長続きするわけもなく、退屈になってしまってきていた。尻尾で川の水面を弾いて遊んでいるが、日も半分くらい昇っているのでそろそろ何かしようと思う。

 1日2日そこら何も食べずとも問題ないのだが、なにもしないのは暇なのである。

 しかし、一人で楽しいことなど限られており、物もない。

 特訓をしてもいいけど、日課の分はとっくに終わらせてしまったし、それ以上やるのは面倒だし辛い。張り合いじゃれ合う相手もいないのでつまらない。よくやった道具作りは始めは良かったのだがあっさり過ぎてすぐに飽きがきた、釣りもしていたが今日はあまり調子が良くないようで待つだけ成果も薄かった。

 そうこうしているうちに日が沈んでいく。鹿達は帰ってくる様子はない、退屈は退屈なりに1日潰したが彼らの存在は俺にとって結構意味があったらしい。

 日が完全に沈んでも俺は石の上にいた。今日は此処で寝るつもりであったが朝方寝てしまったせいか眠れずに上を見上げていた。空には少し欠けた綺麗な月が見え星がたくさん輝いていた。そのなかの強く光輝く星に星座を見つける。星座など詳しくないが、名前のせいで知っている。あれはおおかみ座。ケンタウロスに槍で突かれている可愛そうな星座であり日本では夏の星座である。


 ……星座!?


 驚きに立ち上がり石から落ちそうになる。

 あれは間違いなくおおかみ座だ。俺がそれを間違えるとは思えない。

 ならばここは、この星は地球なのか!?

 見たことのない異形の生物に魔法が存在していて全く別の世界だと考えていた。いや、実際に別の世界なのだあろう。だが魔法が存在する別世界の地球ということだろうか。

 仮説はたっても証明は出来ない。それにそれを知ったところで特に意味などない。しかし、やることの無くなってしまった俺には十分に魅力的な内容ではあった。

 そのまま少しの高揚とずっと眺めていた俺はその日なかなか寝つけなかったことは言うまでもあるまい。







 次の日はいつもより少し遅めに起き日が沈むまで魔力で遊んで、もとい修行していた。今日はやってみたいことがあったのだ。昨日星を眺めているときにもっとよく見てみたいと考えたのだ。

 それで出来るようになったのが遠視。もともとよく見通すことのできる狼も目を強化できるようになった。イメージは望遠鏡のようなレンズ。足元が見えにくくなるので常時は使えないがそれでも便利であることには代わりない。それを習得するまでに副次的に出来るようになったことがもうひとつがある。一番初めに試した純粋に目に魔力を集めるという方法だ。これによって得た効果は周辺視野と動体視力の向上と匂いと魔力の視覚化。視覚化した匂いや魔力は色としての判断なので種族は分かっても個体まではわからないというものであるが、漂う匂いや魔力に触れるまで認識できなかったことを考えるとかなり有益である。もし鼻が使えなくたっている状態だとしても応急的に使えることだろう。明らかにこちらの方が便利そうだけど長時間の維持は出来そうにないのが問題点だろうか。目から入ってくる情報が一気に増えて目も頭も疲れる。

 で、目が出来るなら他の器官も出来るだろうと試し始めた。

 次は鼻。魔力を集めることでより敏感になった。純粋に強くなったのだ。どの方角からどれだけ流れてきているかとか、群れの混じりあった匂いの中から何匹いて雄雌が何頭かとか、石を体内にもつ生き物の足取りを追うことまで鮮明に分かるようになったが、森の中など匂いで溢れており諸刃の剣っぽかった。その後暫く鼻は使えなかったし……

 最後に耳であるがこれも鼻のときと大差はない。耳が良くなると単純にいっても俺は狼で五感は全て人間のときとよりも優れていることは確かなのだ。産まれてからこのままで大した違和感もないのだが魔力による底上げは随分と堪えてしまった。人が近くにいれば心音すら聴こえてきそうな集音ぐあいで自らの心臓の音で煩いほど。


 とまぁ魔力の凄さを改めて実感したわけですが、そんなことをやり続ければ非常に疲れるわけで、魔力切れなど感じたこともないが確実に消費しているわけで、その日は倒れるように眠った、


 のだが、まだ日が出ないうちい起きた。散々無茶してもこの体は便利なもので一晩で疲弊も疲労もありはしない。いつもより早く寝たので早く起きたとかそういう類いではあるが睡眠時間がきっちりしたところで勝手に目が覚める。とはいうものの、一匹でここに来てから完全に寝たということはない。大丈夫だと思っていても兄弟達と離れた不安が心のどこかで残っているものと思うし、安全な場所の確保もままならず、鹿や子熊を守らなくてはという意識も有ったのかもしれない。ここに来てから些細な物音で起きてしまうようになったし、気持ちよく寝たという感覚がまるでないので感じなくても負荷はかかっているものである。

 倒れるように寝たせいか、今回はぐっすりよく寝たと思う。こんな環境でそれもどうかとは思うがずいぶんすっきりしているので良しとする。

 今日はなにしようか。と目を開け立ち上がろうと


 ザクッ

 !?


 砂利を踏みつける音がした。その音は止まずザクッザクッと近付いて来るのがわかる。

 風の方向的に匂いを気がつけないのは分かるが、魔力の反応と耳で聞こえた音を拾うのが同時だったことが不可解に思える。足の音的に二足歩行、人間だ。しかし、響きかたからして40kgもないと思える。そんな子供がこの森の奥まで何のようであろうか。俺を討伐に来たとしても足音が露骨過ぎており隠れる気配もない。見た目と実力が合わないとかありそうだけれど、魔力をここまで感じさせなかったのに姿を表す意図が見えない。


 どうする。寝ている振りをするか? 襲いかかるか? 逃げるか?


 寝ているふりは却下だ。この状況は明らかにおかしい(・・・・)感じるようになった匂いも強くないし、魔力も多いとは言いがたい……が、他に感じる気配はないのでその一人がなんの躊躇もなく俺に近づいている事実に違和感たっぷりなのだ。本能は大丈夫といってもりせいが危ないと叫んでる。何時もなら逆なのだが……

 襲うのも同じ理由で却下。僅かながらある迷い混んだ子供という可能性もあるので出来ない。

 まので逃げ


「逃げないで」


 ちょっと待てまだ俺は動いてないぞ。

 寝たふりをしたままなのにいきなり俺のしようとしていたことを見透かされ、内心動揺していた。

 更にいうなれば俺が言葉を理解していることももしかするとわかっているのかもしれない。

 少しの嬉しさと驚き、不安と恐怖そのたも混じりあった感覚。

 無視してしまえばいいのだが、それが何故か出来なくなってしまったので、そのまま体を起こし何時でも動けるようにしながらその人物をみやる。

 そのには10才くらいの少年が立っていた。整った中性的(幼子など大体中性的だが)な顔立ち。緑のローブを羽織っていて服は茶色っぽい。髪は黒く、日本人と遜色ない見た目。


「ありがとうっぷっ」


 ……いま吹き出した?


「あはっははははは!」


 今度は明らかに腹を抱えて笑いだした。目に涙を浮かべるほど大笑いしており、今にも転げ回りそう。

 なぜ笑っているか全く分からないが、まず間違いなく俺に関係することだろうしムカつく。

 さっきまであった緊張感やら畏怖は何処へやらと我ながら呆れる。


「いやぁ御免ね、あはは」


 少年はまだ笑い続ける。まともに話せる様子ではなそうだ、と諦め寝床の石から下りて暫く待つことにする。そういえばこんなことが昔にもあった気がすると少年を眺めながら物思いにふける。

 そう、あれは


「死んだとき……かな?」


 少年の言葉に俺は驚きを隠せない。少々ずれているが心を読まれたのか!?

 いや違う、俺の記憶を覗いたというなら分かるが、どちらかというと心の声をよんで先読みして答えたような感じだった。それなら少々のずれも頷ける。


「あぁ、ずれてたか……なら、死んでいたとき?」


 こいつはまず間違いなく俺の心を読んでいる。そして俺しか知らない筈の転生のことも知っていそうである。


「あぁそんな警戒しないで」


 得体のしれない奴を警戒するなという方がおかしい。

 俺は姿勢を低くし毛は全身逆立っていることだろう。


「いきなりすぎでごめん、でも友達にそういう態度されると悲しいよ」


 少年は焦ったように、本当に悲しそうに言葉をつぐむ。

 だが、友達? こちらに来てから家族はいても友達など……


 ……ちょっと待て、友達かどうかは分からないが転生のことを知っているのはもう一人要るじゃないか。人の心を読んで、つぼにはまるとなかなか笑いが止まらないそんな人物が……

 まさか……


「そのまさかさ」


 ……神?


「ファイナルアンサー?」


鬱陶しいわ!


「あははっ正解」
















「友達とおもってくれてなかったんだね。悲しいよ」


 悲しいそうにいうが、それなないだろう。まぁ、恩人ならぬ恩神とはおもっていたけれど


「別にどっちでもいいんだけどね」


 いいんかい!

 あははっと笑う少年改め神。なんだろう、こいつには感謝していたはずなのに目の前にするとムカつきしか湧かない。

 でなんでここに神がいるんだ。


「久しぶりの再会なのにひどいなぁ」


 不気味だよな、やっぱ心が読まれるのは。

 警戒はといて座っているが、不思議に思うのは仕方なかろう。


「いや、読まないと話もでいないし」


 まぁ、もっともではある。なにか意志疎通できる手段があればいいのだが、神はどうやって心を読んでいるんだ?


「魔法……かな?」


 何故に疑問系。しかし、魔法ならば真似出来るかもと感覚を研ぎすませ魔力を目に集める。

 神から波紋のように魔力が広がり、物に当たると反射して帰っていく。まるでソナーや魚群探知機のような超音波のようである。これが心を読む魔法か?


「おぉ、流石。ちょっと違うけどそれで合ってるよ」


 違うのか合っているのか曖昧だなぁおい。

 だが、これで何とか意志疎通出来るかもと知れないので神には感謝だな。


「どういたしまして」


 しかし、なんで神がここに居ていきなり笑い出したんだ。


「あぁ、それはね、ぷぷっ」


 うおい!


「君がちょっと意外なことになってたからだね」


 ……意外なことってなんだろうな。


「予想はついているんじゃないかな?」


 考えるな、考えるな、読まれるだけからかってくるだけだ。


「君、女の子だったんだね」


 分かってるよこんちくしょうがぁぁぁぁ!!












毬「……」

あかね「お母さん、大丈夫?」

毬「……大丈夫よ、あなたこそ大丈夫なの?」

あかね「大丈夫だよ、いろいろ聞いてびっくりしたけど、あの子はあの子だもの」

毬「……そうね。どうであろうとあの子は私の子よ」

あかね「お母さん……」

毬「ただ、娘と会ってるあのチビは羨ましいムカつく帰ってきたら潰す」

あかね「お母さん……」

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