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もふもふの伝説  作者: タニシ
獣道編
16/24

二度目の遭遇。

人でた…でもまだ会話出来ぬ…グヌヌ

 あれからさらに十五日。

 子熊にも修行をつけた。といっても魔力を流してやったり、尻尾で相手しただけだが。力だけでいえば既に鹿を越え、鹿と戯れるときは基本カウンター狙いで動いている。分かっているつもりではいるがこう、本来の動物と違うように動き考えている姿は奇妙に映る。和むけど。ちなみにどちらが強いかというと鹿が一度負けてから勝ち負けが交互に続いているような感じになっている。鹿は体当たりと後ろ蹴り踏みつけなどで攻撃し、子熊ま同じく体当たりと張り手を使う。鹿に爪や牙を使ったとき怒ったら使わなくなった。やはり賢い。体当たりどうしなら子熊が勝つが、後ろ蹴り対両張り手なら鹿が勝つようだった。

 そしてその戯れ修行の結果、子熊と鹿だけでハイエナっぽいの5匹の群れをなんとか追い払ってしまった。子熊が構えて迎え撃ち、鹿が翻弄して撃退した。

 ハイエナ達はこの森では上位にカーストしているはず、それが三週間程でやられると可哀想になってくる。魔力の有無はかなり大きいらしい。


 あと、二つ気がついたことがある。体に石をもつ肉だけの生き物にもそれぞれ種類ごとに匂いがあった。鼠は鼠のサイクロプスはサイクロプスの匂いだが土や木の葉とは違う何かしらの匂いが存在している。つい昨日までわからなかったのに不思議である。

 もうひとつは普通の生き物も食べようになって気が付いたのだが、美味しそうな匂いのしない生き物は美味しくないのだ。食べたことがないからとか、食べようと思っていないからだと思っていたの だけど俺の嗅覚は味まで感知しているらしい。

 ただ、お肉は焼いたら美味しく食べられたので、調理後までは流石に分からないらしい。

 あと、ここは川辺に近いので魚にも挑戦した。初めは苦労して漸く捕まえたのだが、尻尾を餌に見立てて誘き寄せることが出来、電気を魚に流して気絶させることが出来たのでずいぶん楽に取れるようになった。二本で触らないといけないことと、尻尾が冷たく俺も痛いことを除けば鮎位の魚が取れるのは嬉しいことだ。時々は魚を食べる。子熊も頑張って取ろうとしているが未だ取れたことはない。この辺りは綺麗で半透明な水だが結構な深さなのでもう少し練習が必要であろう。というか練習すれば取れそうなこと事態が異常な気がするけど。



 さて、俺は今までどうり土を掘って寝ている。他のサイクロプスや人間達が調査に来ても出くわさないようにするため場所は更に上流へと移動しているが、子熊や鹿の水分補給のため川からあまり離れることは出来ない。必然的にこの辺りに来る動物達は警戒するわけで、獲物を数取るのが難しくなっていくのは当然だった。鹿達の訓練に掛ける時間を減らせば問題はないのだけど、それはなんか嫌で効率化をはかるため罠を張った。妹とも作った罠の数々である。作れたのはより簡易で小さな物だけど、この辺りの動物なら大丈夫であろう。現に成果をあげているので良しとする。それを見た子熊が落ち込んで要るように見えたけど気のせいだろうか。まだ子供なのだから身体能力が上がっていても獲物が取れないことなど普通なのに。


 今俺は一人……一匹である。

 ハイエナを撃退した次の日、鹿と子熊は二匹で何処かへ行ってしまった。



 その日の夕暮れ帰ってきたけど……


 どうやら二匹で探検してきたらしい。いつか帰って来なくなる日が来るのだろうか………

 そうでない時は俺が追い出してやらなければなるまい。こいつらはいつか独り立ちさせてやらねば。


 とまぁそれは置いといて、その日からちょくちょく冒険に出掛けるのだ。今日はその日。子熊のご飯をいつもより多くあげ、いくつか肉を食べずに持っていったので帰ってくるのは日暮れぎりぎりだろう。お陰で1日狩りが出来るのだが、今日の分をしっかり食べたても時間が余る。

 それでも昨日張った罠を確認せず放置するのは損した気分なので見てまわっていたのだが……


「きゃぁぁぁぁ!」


 ……これはいったいどういうことだろう。

 金髪の少女が逆さで吊りで下がっている。


「グルゥゥゥ」

「きゃぁ、きゃぁ、にぎゃぁぁ」


 下には複数のハイエナ達が集まっており長い髪が喰われている。黒くて禍々しい刺のついた弓を振り回して追い払おうとしているが、闇雲に振りすぎて牽制にしかならない。髪に食いついている奴にはあたっているがそいつも離そうとしないし、吹き飛ばすほどの力もないらしい。

 背負っている矢筒は空で矢は下にぶちまけている。周りに人の気配も匂いもないし、こんなところまでなにしに来たのだろうか

 暴れまわるから蔓が切れそうになっている。そりゃ小中動物用に作ったのだから当たり前だ。

 ……仕方ない。


「グワンッ!」

「ひゃ!?」

「キャィン!?」


 俺がひと吠えすると姿も確認せずハイエナ達は一目散に逃げ出した。俺につかかって来た奴らか、俺のことが広まっているのか分かりはしないが、荒れだけ怯えられると少し悲しくなってきた。


「あっ、ヒギャゥ」


 ぷちっと音を響かせ遂に蔓はきれた。

 少女は頭からまともに落ち、気を失ったようである。

 ……どうしよう。

 近づいてみるが起きる気配はない、このまま放置すれば獣が群がってくるだろう。なにより霧と消えてしまった弓をみて思い出してしまった。

 この子あの馬車から落ちた子だ……

 なら、可能性としては俺を探して来たというのが高そうだ。

 それが、友好的か嫌悪なのかは別として……だが……

 はぁ、憂鬱。




 結局俺は少女を運び川辺まで来た。少女は色白で長袖長ズボン、茶色い皮が点々と部位を囲っているいかにも冒険者の格好である。かといって石や土の上に雑魚寝と言うわけにも行かないので下に葉や枝を集めて敷いてやる。

 次は食べ物、森に入ってから時間もたっている筈だし、なにより食べ物を渡すことで警戒心が薄れてくれたらなっと打算的に考えてみたり。で、食材は魚にする。近くで見ていられるし、何か分からない肉より魚の方が警戒しなさそう。俺が人の身であればいきなり肉を渡されるより魚の方がマシと思ったということもある。あっというまに魚を三匹ほど捕まえてしまった。今日に限って調子が良いのが悔やまれる。暇だ。

 ちょっと太めで硬い木の枝を魚に突き刺して、乾燥している落ち葉や小枝を集め火の燃え移る心配がないところで焚き火をを開始。魚を焼いていく。川魚は生では危ないというし、今ではそこまで抵抗感もないけど俺も人の身なら絶対に嫌だ。

 そこまで終わっても少女はまだ目覚めない。

 少し位大丈夫か。

 甘い木の実の一つでもおまけしようかと今度は森へ向かう。この辺りの甘い木の実はとても小さいので本当におまけなのだ。少し進んだ所にその木の実のなる木を見つける。幸い綺麗なものがいくつか残っているようだ。パッと木に登り、木の実の蔕の部分だけをくわえていく。ついでに綺麗な葉も尻尾で摘んで戻ると少女が目を覚ましており、俺と目がバッチリ合った。


「ひっ!」


 恐怖に声をあげたかとおもえばすぐさま飛びのき空中から現れた弓を構える。その目には恐怖ではなく敵意と憎悪がみてとれた。

少女は背中に手を回すがそこにある矢筒に矢がないことに気がつくとまた不安、焦燥、恐怖の色がみえる。悲しくなりつつも、焚き火の側の焼けないところに葉っぱを敷き、その上に取れた木の実を転がした。

 それからちょっと離れた大きめの高い石の上に登って丸くなった。ここに居れば目立つし俺に近づこうとする生物はまずいない。それにここは日当たりがよく、石も温もって暖かい。

 ちらりと少女を見ると弓を両手に持って唖然としていた。仕方がないのでもう一度降りて魚が焼けているのを確認したら一つを尻尾で掴んで少女に投げた。

 少女は驚き魚を何回か跳ねさせはしたが落とさずに受け取る。それを確認する前に俺はまた石の上に戻っておいた。

 少女が俺の方を見ると「ありがと」とぶっきらぼうに言った気がしたが、良くは聞こえなかった。そうだと良いな。そのまま焚き火の近くに腰を降ろすと、


「いただきます」


 と両手を合わせて言った。日本みたいな文化はこっちにもあるのだな。

 少女は一口魚をかじると渋い顔をした。


 あっ内臓忘れてた。


















ユグ「落ち着いたかい?」

あかね「はい、結局泣いてしまってすみません。えっとここはどこであなたは誰ですか?」

毬「こいつに敬語なんて使わなくていいのよ」

あかね「え? うん。普通に話しているつもりなんだけど敬語って?」

ユグ「毬、ややこしくなるから静かにしておいて」

あかね「ね、ねぇ?」

ユグ「ここはね、死後の世界だよ。ちょっと特殊だけどね。正確には死後の世界一歩手前さ。その正面のテレビと言って分かるかな。それに君の兄弟の一人が映っているだろう。彼は特殊だからその彼に深く関わった君たちに一時の猶予が与えられるんだ。制限はないけどね。成仏したかったら後ろに見えるドアを潜れば良い。輪廻するか無にかえるかはわからないけどね」

あかね「あ、あの」

ユグ「あぁ僕かい。僕は一様神様だよ。といっても見た目子供だし、実感わかないだろうけどね」

あかね「敬語ってなんですかぁぁぁ!」

毬「そこなのね……」

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