第六章〜モノクロワールドと死神〜
太一が光の扉の中に転がり込むと、そこは辺り一面モノクロの世界だった。
「ってぇ、今度はどこだよ……。……!?」
すべてのものが色をすべて抜き取られたようなその世界の光景は、たしかに太一の記憶に色濃く残っている光景と同じだった。
「ここは……、学校じゃないか。」
太一はその場に立ち尽くした。後ろを振り返ると大きな光の扉が少しずつ閉まり始めていた。太一は今自分が立っている場所が、自分の知っている場所だったからかなんとなく安堵感をおぼえたのか、思考が鈍っていた。太一が我にかえった頃にはもう扉は閉まっていた。
「ちょっ、待てって!」
しかし、時すでに遅し、扉はまばゆい光と共に消えてしまった。
「どうすりゃいいいんだよ、これから……。」
太一は仕方なくとぼとぼと歩き出した。
『一体どこなんだ、ここは?見た目は確かに学校だけど、なんか違うんだよなぁ。色もないし音もしない。それにだれもいない。』
こんなことを考えていると、太一は無意識のうちに自分のクラスに足を運んでいた。
太一はそのクラスで、現実の自分のクラスとのある違いに気がついた。
「あれっ?俺の席がない……。」
そう、そのクラスには、本当のクラスなら当然のように置かれているはずの自分の机が無かった。
「なんで……?」
太一はクラスの真ん中の自分の机があるばずの位置に立って考え込んだ。
すると、突然クラスのドアがピシャリと閉まった。太一はその音に一瞬びくっとした。そして次の瞬間、背中にまがまがしい殺気を感じた。
「だっ、誰だ……!!!」
太一は急いで距離をおき、相手の方に振り返った。
そこには裾がところどころ破けた粗末なフード付きの黒いマントを着た、ドクロの仮面が立っていた。ちょうど一般的な死神のような姿である。
「キサマノ持ッテイル『寿命』ヲヨコセ。サモナクバキサマヲ排除スル。」
「はっ!?『寿命』って何のことだよ……!?」
太一は何がなんだかわからずパニックになっていた。
「テイコウスルヤツハ排除スル!」
すると死神はマントから青白い手を出した。その手の爪は鋭いナイフのようになっていた。そしてじりじりと太一との距離を縮めていった。
「さては、お前さっきの暗い世界で俺のこと追っかけてきたヤツだな!!!」
太一は後退りしながら言った。だが死神は太一の言葉には耳もかさず、太一に向かって爪を振り下ろした。
「うあっち!!!」
太一はそれを間一髪のところで右に避け、死神の後ろ側に回り込んだ。そしてまとわりつく恐怖心を振り払い、死神に渾身の一撃をくりだした。
「うわぁ!!!」
だが、太一は死神の周りを覆う黒いオーラに弾き飛ばされてしまった。太一はクラスの奥の窓ガラスに叩きつけられた。その拍子に窓ガラスが割れて太一は真っ逆さまに落っこちた。
すると死神もその窓から飛び出し、ものすごいスピードで太一に追いついた。そして太一の方へ爪を思い切り突き出した。太一は思わず目をつぶった。
そこで太一の記憶はいったん途切れた。多分気を失ってしまったのだろう。
だが、太一は気を失う直前に確かに誰かの声を聞いた。
そう、その声は確かに
「戦え。」
と言っていたのだった。




