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第四章〜届かぬ手〜

太一は家を後にして学校へと向かった。あのキーホルダーと砂時計を持って。しばらく自転車をこいでいると、太一は昨日コートの女に出会った道にさしかかった。



「確かここで…、あの女に会ったんだよな。」



太一はそう考えると気分が悪くなった。



──チリーン。



その場所を通り過ぎる時、鈴の音が聞こえたような気がした。太一は全速力でその場を走り去った。



しばらくして太一は道を間違えたことに気がついた。今日は義彦を迎えに行く日である。義彦は毎週木曜日だけは母が自転車を使うので太一の後ろに乗って学校にいくのだ。太一は大急ぎで義彦の家に向かった。



義彦の家の手前の角を曲がると、義彦がこちらに向かって走ってきていた。



「やぁ、ごめんごめん。お前んち寄るの忘れてた。」



太一は言った。しかし、義彦は太一の脇を走っていってしまった。太一は予想外の出来事に焦りながらも義彦を追いかけた。



「ちょっ、ちょっと待てよ。」



太一は義彦の前に回りこんだ。



「待てってば。」



すると次の瞬間、あり得ないことが起こった。義彦が太一の体をすり抜けたのだ。



「え…、なんだよ…、これ。」



太一はその場に自転車を乗り捨て、義彦を追いかけた。



「義彦!ちょ待てって!」


太一は義彦の肩を掴もうとした。しかしその手は義彦の肩をすり抜けた。太一は地面に倒れ込んだ。



「ってぇ…。なんなんだよ、これ。なにがどうなってんだよ!」



太一は地面を叩きながら叫んだ。前を見ると義彦がだんだんと遠ざかっていた。太一は義彦の方へいっぱいに手を伸ばした。



太一はそこで気を失った。

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