新学期3
明らかな遅刻をしているヒガシをよそに、フロンティア学園では入学式が行われており
学年代表の朝日という女が挨拶を行っていた。
「私がこの学園に入った暁には、生徒会会長を謹んでお受けいたします」
例に漏れず、彼女もイッちゃってる一人である。
「うむ。彼女ならば私の後継者として問題ない!」
何所とも無く一人の学生が彼女の方に歩みだし、彼女に向って話しかけているようだ。
しかし、彼はすぐさま教諭に抑え込まれると舞台から退場した。
「なんか邪魔が入ったようですけども、私の選挙演説を終えます」
朝日はすっかり選挙立候補者のような襷と鉢巻をした恰好になってマイクをそっと床に置いた。
さながらどこかのアイドルの引退風景である。
その変貌ぶりに殆どの生徒と教諭が唖然とする中、数人がソレを歓迎するかのように見ていた。
無事に入学式も終わり、新入生はそれぞれの教室へと移動した。
遅刻をしていたヒガシも何食わぬ顔で1年星組の教室に座っている。
「あぁ、今日からお前たちの担任となる稚内だ。ワッカ先生と呼んでくれ」
先に書いておくが、この稚内という教諭がワッカ先生と呼ばれる事は今後も金輪際ない。
20代後半での新任担当教諭である。独身であるが、独身である。
掴みを失敗した新任教諭だが、決してめげることはない。
前向きな部分だけが取り柄などこにでもいるような独身教諭である。独身である。
「じゃ、初日だし自己紹介をそれぞれして貰おうか」
独身なだけに最初のアピールに関しては拘りがあるらしい。
そんなワッカの思惑とは裏腹に、生徒どもはごく普通の挨拶に徹する。
むしろ余計な事を言うと負けな空気さえ流れていたのだ。
そんな中、ヒガシの番になった。
「東山です。独身です」
彼なりのパフォーマンスのつもりだったが、当然に教室の空気が覚めてしまった。
何よりもワッカが残念そうな顔をしている。
「あぁ東山田だっけか?お前、廊下に立っとけよ」
ワッカの下した判決は厳しい。
「北見です。よろしくお願いします」
通称エビちゃんはヒガシ以外にはそれなりに普通な言動をしているようである。
「言うの忘れてましたが、普通にバツ1です」
・・・と思ったら彼女は、言動もやはり破天荒である。
バツの悪い挨拶とは、この事である。byヒガシ




