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4話 簡易封印計画①

 封印開発課から、簡易封印が出来上がったと報告を受け、封印開発課に向かう。

 まさか彼らも、一つのつもりで引き受けた依頼が、数日後に三十倍に膨れ上がるとは思わなかっただろうが、それは許してほしい。


 大変だったけど、この仕事の重要性はわかるから気にしなくていい。そう言ってくれた先輩を見て、私は今後封印開発課になったときに、同じことを言えるだろうかと疑問が浮かぶ。

 多分今の私は言えないが、次の配属替えのときには言えるようになっていたらいい。



 先日の記憶から今の仕事に気持ちを切り替え、アレイシオ殿下に声をかけに上席管理官室に向かった。


「簡易封印ができたから、明日ダンジョンに行く? 私は今日でも構わないよ」

「それは、ちょっと⋯⋯ダンジョン警備課のラウル先輩にも確認してきます」


 確かに早い方がいいし、私も今日行けるけど、ラウル先輩は困るだろう。そう思いながら早足で執務室に向かう。


「ダンジョンいつなら行けるかって? 今日でもいいぞ」

「えっ? いいんですか? あっ、じゃあ今日でお願いします」


 まさかのラウル先輩からも今日行けるという返事をもらい、次は大慌てで上席管理官室に戻る。

 アレイシオ殿下に、準備が整い次第出発を伝え、自分の準備のため、もう一度執務室までの階段を駆け下りる。

 魔法工事課と同じ執務室にあるダンジョン警備課はともかく、上席管理官室、遠い!


 靴をブーツに履き替えて、ローブのポケットに杖が入っていることを確認する。

 背負い鞄に最低限の補給物資やランタンと、ダンジョンに入るための魔法鍵が入っているか最終チェックし、簡易封印を入れる。

 念のため資料と筆記用も詰め、ロッカーから箒を取り出せば、もう準備は完了だ。



 玄関に向かうべく執務室を出れば、階段を下りてきたアレイシオ殿下と会う。少し前方にはラウル先輩もいて、本当に今日行けるんだと二人の準備の早さに驚いた。

 正門前広場に出たところで合流したラウル先輩は、魔力を持っていない。だけど、事前に聞いていた通り箒を持っている。

 最近開発されたばかりの魔力がなくても乗れる箒、という魔法具。これが備品としてあり、申請すれば借りれるのは知っていた。だけど同時に使いこなすのが難しいという噂も知っている。

 ラウル先輩って努力家なんだろうな、と気づかざるを得ない。


「アレイシオ殿下、今日はよろしくお願いします」

「ラウル。打ち合わせした通り、魔法はそれなりに使えるから、必要なときは躊躇せず指示してくれ」

「はい、任せてください」

「うん、頼りにしてるよ。もちろん、セリアも」


 今回のダンジョン魔法工事自体は私の担当だが、今日はモンスターの出るダンジョンに入るという仕事だ。

 それはダンジョン警備課の仕事であり、今日はラウル先輩の指示のもと私たちは動くことになる。

 打ち合わせの時も思っていたが、ラウル先輩はアレイシオ殿下に配慮しても、指示を出す側になることに抵抗はないらしい。プロとしての自信があるのだと思う。


「あとセリア。俺は箒に乗れるだけでスピードは出せないし、言われても急には曲がれない。それを加味して飛んでくれ」

「わかりました」

「あと違うことに気を取られると落ちるときもあるから、飛んでる最中に笑かしたりもしないでくれ」

「しませんよ、そんなこと」


 誰かにされたんだろうな、と思い当たる課長の顔を思い浮かべていたら、隣でアレイシオ殿下が小さく吹き出した。

 今、私が落ちたこと、思い出しましたね。



***



「すっげぇ。マジで歪んでる」


 ラウル先輩は呑気に歪んだ壁や天井の感想を言っているが、同じ空間にホーンラビットがいる。

 大した敵ではないとはいえ、どうしてここまで落ち着き放っていられるのか。その疑問は、剣一振りでホーンラビットが薙ぎ払われ、即解決した。そんなに強かったらそうなりますね、はい。


 先日と同じく歪んだ壁を抜け、欠陥がある封印の元にたどり着けば、不思議なことに私の結界がまだ機能している。


「あれ、じゃあさっきのホーンラビットって」

「どうやら他にも解けた封印があるようだね」


 アレイシオ殿下に言われ、一番嫌なことが現実になったのだと気づく。簡易封印三十枚持ってきて良かった。


「想定外ではありますが、予定通りここに簡易封印を施しましょう。セリア、結界を解かなきゃ簡易封印はできないんだったな?」

「そうです」

「じゃあ結界を解いてくれ。あと数が多いから、ホーンラビットを捌くのを手伝うか、自分とアレイシオ殿下の身の回りに結界を張っておいてくれ」

「捌く方を手伝います」


 結界を解くと、二十匹近いホーンラビットが一斉に飛び掛ってくる。狭い結界の中に閉じ込められていたからだろう、相当おかんむりだ。

 ラウル先輩が剣でバッサバッサと斬り倒していくのを横目に、私も光の矢を飛ばしてホーンラビットを倒す。流石に一撃とはいかないけれど、三発ぐらい当てれば倒れる。期待の若手ナンバーワンとして、夏の島に引っ張られた私舐めんな!

 そんな中、水の矢が同じようにホーンラビットを貫いていて、思わずアレイシオ殿下の方を見た。


「私だって、戦力外扱いは悔しいからね。先に見せておこうかと」


 お茶目っぽくウインクされるが、本心なのだろう。うわぁ、やっぱり本当は結構、男の子なんだ。


「戦力外扱いじゃなくて、この程度ならお手を煩わせるまでもないって判断ですよ」

「じゃあそう思っておくよ」


 ラウル先輩は最後の一匹を切り捨てながら、呆れたように言う。

 モンスターを追い払った次は、ようやく簡易封印の設置だ。

 資料に載っていた通り、最初に出たホーンラビットの右後ろの方に行けば、壁の色が一部違う。

 背負鞄から簡易封印を取り出し、色の違う壁に押し当てながら魔力を流し込んだ。


「お、いけたな」


 封印完了を示す青い光が発され、ラウル先輩から声をかけられた。これで次の場所へ向かえそうだ。


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