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13話 視察実施の判断

 上席管理官室で立たされ、向かいにはアレイシオ殿下、魔法局長、魔法工事課長。どうしてこうなったのかと言わざるを得ない。


「余計なことしてくれたなー、セリア」

「すみません」


 課長にお叱りを受けた内容としては、とりあえず魔法局は事なかれ主義らしい。だから正直なところは運営調整課派。

 だけどそれ以上に、組織内での遺恨を残さないよう、運営調整課とダンジョン警備課、両方に良い顔をしたいというのが本音らしい。


「セリア君、ああいうときはね。君は同期であるヴィオラ嬢の味方をしておく。そしたら課長が同期であるダンジョン警備課長を飲みに誘って、なあなあにしてくれる。それが処世術だよ」

「わかりました。次から気をつけます」


 魔法局長は、事なかれ主義のお手本みたいな処世術を教えてくれる。

 こうやって八方美人の極みみたいな魔法局が作られていったのかと、遠い目をせざるを得ない。


「私はセリアの真っ直ぐなところを買っているんだけどね」

「アレイシオ殿下⋯⋯!」


 困ったように微笑んでくれるアレイシオ殿下だけが、この空間の救いだ。


「魔法工事課としては、例のダンジョンへの視察は不可。ただダンジョン警備課の言うことも一理あると思うので、こちらから他のダンジョンの視察を提案してはどうか? と運営調整課に回答した。お前は聞かれても何も言うな」

「わかりました」


 もう全て終わった後だったらしく、課長から端的に指示を受けた。

 ではなぜ三人がこの部屋に集まっているのかと不思議に思ってしまう。もしや説教のためだけではあるまい。


「経験ゆえの勘だが、この提案は多分通る。そうなったら秋の島出身のセリアには、ルミエナ殿下の案内や、他にも話し相手など様々な仕事がまわってくると思え。日常業務はできる限り前倒しで片付けろ」


 追加で指示を出され、左手に握りしめていたメモ帳に書き留める。忙しくなるから覚悟しろって話か、なるほど。


「そうなった場合は、アレイシオ殿下にも、様々なご協力をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「もちろん。私もダンジョン保全機構の一員だからね」


 魔法局長は、アレイシオ殿下にも協力のお願いをする。なるほど、実際に視察が決まる前に下調整をしておきたかったのか、となんとなく納得した。



***




 今の私の状況としては、封印開発課が封印の完成までにどれぐらいの期間が必要か、試算しているのを待っているという状況だ。

 もともとの予定では、この試算が終わってから、魔法工事を実施する当日の計画を立てるつもりだった。

 なぜかと言うと、魔法の鍛錬や、先輩の仕事を手伝って経験を積むというような、今じゃなくてもいいけど今後に繋がることを、この待ち時間にやるつもりだったからだ。


 だけど課長から、前倒しで片付けておけ、との指示が出た。私は優先順位を入れ替え、紙とペンを手に取る。


 まず、魔法工事でやることは、全ての封印のやり直し。そして歪みを直すための、空間補正魔法をかけること。あと発生した歪みのせいで弱っているところを、土魔法で補強する。

 これについては、封印は封印開発課に同行してもらうしかないが、それは頼んでいるから大丈夫。あと他の魔法は自分でかけるから問題なし。


 それから、封印を一度解除するわけだから、当然ダンジョン警備課への協力依頼が必要。

 ダンジョン攻略時の資料を見返し、護衛対象となる人数を数える。封印開発課から二人くらいと、私。アレイシオ殿下も多分来られて、計画規模的に、課長にも来てもらわないといけない。五人か。

 一緒に来てもらう剣士は五人くらい必要そうだな、となんとなく当たりをつけることができた。



「ラウル先輩、今いいですか?」


 声をかければ、鋭めに睨まれた。わー、気が立ってるぅ。


「セリアお前、俺に頼み事したってことは、俺の味方したってことだよなぁ」

「⋯⋯課長に何も言うなって言われてるんですよねー」


 治安の悪そうな低い声を出され、慌てて視線を逸らしつつ書類を押し付ける。仕事は仕事ですよ! って言いたいよぉ。


「五人ねー。つかこの計画、日付入ってねえじゃん」

「まだ日程決まってないんですよ」

「決まってから調整した方がよくね?」

「課長に仕事前倒しで終わらせろって言われてて⋯⋯」


 私の発言に、ラウル先輩はちょっとびっくりしたような様子で「え? お前本当にこっち側だったの」と呟く。一体何の話だ?


「わかった。計画確認して、向いてそうなやつに声かけておく」

「ありがとうございます!」


 これで他の課への依頼はほぼ終わり。もちろんこの後も打ち合わせや、計画の修正は必要になるかもしれないが、一旦肩の荷が下りたと思っていいだろう。


 じゃあ次は、空間補正魔法と土魔法をかけるところを地図に落とし込むか、と自席に足を向ける。

 もともとは封印の設計図をもらってからやる作業の予定だったけど、時間かかるから先に手をつけておこう。



 そう思いながら席に着けば、折られた紙がポンと置かれている。

 なんだろう、と思いながら開いてみれば。


ーー今日の夕食、一緒に取らないかい。アレイシオ


「ぴゃ」

「どしたーセリア」

「あ、なんでもないです」


 先輩に声をかけられ、慌てて閉じる。どうしたんですかアレイシオ殿下!?

 だって、こんな、秘密の手紙みたいな!! そしてこれ、私はどうやって返事すればいいんですか!?

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