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世界救済の扉は、今、開かれた ~最弱の俺が滅びゆく異世界を救うまで~  作者: 藤井めぐる
第1章 魔法防衛学院 入学準備編

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第7話 イケイケなカラスくんでも、だいぶ厳しい

家に着いたハルキは、まずカラスと作戦会議をすることにした。


「一体、誰が、田中さくらに魔力の種子を植え付けたんだろうね?」

「さあ、分からない。」


そして、カラスは続けて言った。


「でも、その誰かは、おそらく君を狙っている。まもなく、君を殺しにくるだろうね。」


部屋の空気が、一瞬で凍りつく。

カラスが発したた言葉は、

あまりにも突然で、あまりにも非情だった。


「殺しにくる」という言葉の響きが、

ハルキの鼓動を支配し、

全身の血を逆流させるようだ。


窓の外では、いつもの街の灯りが灯り、

平凡な日常の風景が広がっている。


だが、この部屋の中だけは、

その日常から切り離され、物語の最も危険な場面へと突入したかのようだ。


ハルキは、カラスの黒い瞳を見つめていた。

その瞳には、冗談の余地はなく、

むしろ、これから始まるであろう戦いへの覚悟が宿っているように見えた。



「なっ…殺しにくる?俺が?なぜだよ!」


ハルキは、思わず叫ぶような声で尋ねる。

その声は震え、恐怖を隠せていなかった。


田中さくらの話を聞いたばかりで、

その現象が自分にまで及ぶとは思ってもみなかった。


むしろ、自分は解決する側だと思っていた。

だが、カラスの言葉は、ハルキを標的だと断定した。


カラスは、ハルキの混乱を理解しているかのように、

静かに口を開いた。


「言っただろう、君が“選ばれた者”だからだ。」

「選ばれた者、だから?」


ハルキは、その言葉を反芻する。


ハルキは、部屋の隅にある自分の影を見つめた。

その影は、何の変哲もない、自分自身の姿を映していた。

だが、その影の中に、自分の知らない何かが潜んでいるような気もするのだ。



「田中さくらに植え付けられた魔力の種子が芽を出せば、やつらは本格的に行動してくるだろう。」


カラスは言った。

そしてカラスは続ける。


「そうしたらいくら、このイケイケなカラスくんでも対処するのは、だいぶ厳しい。」


「厳しい」という断言が、

ハルキの背筋に冷たい走るものを感じさせる。


本格的な行動。

それは、田中の周りで起きたペンケースの落下のような、

小さな前触れではない。


ハルキの部屋の、静まり返った空気が、

まるで刃物のように鋭く感じられる。


これは、ただの怪談ではない。

ハルキの命が懸かった、現実の問題だ。


「……じゃあ、どうすればいいんだよ」


ハルキは、絞り出すように言った。

恐怖はある。

だが、それ以上に、わけのわからなさが彼を追い詰めていた。


殺される理由も、狙われる価値も、

まだ自分の中に見つからない。


カラスは、窓辺に止まり、外の夜景を一瞥した。


街灯の光が、黒い羽に鈍い反射を落とす。


「まずは、“何もしない”ことだ」

「……は?」


ハルキは思わず声を上げる。

こんな状況で、何もしないだなんて。

殺されるのを待つようなものだ。


「正確には、“目立つことをしない”だ」


カラスは淡々と続けた。


「君が魔法を使えば使うほど、やつらは君の位置を正確に掴める。」

「じゃあ……田中さんとは、距離を置いた方がいいのか?」


その問いに、カラスは一瞬だけ黙った。

そして、首を振る。


「逆だ。君は、彼女のそばにいなければならない」

「なんでだよ……!」

「田中さくらは、言うなれば、まだ“器”だ」


カラスの声が、低くなる。


「種子は植え付けられているが、芽吹いてはいない。つまり、彼女自身はまだ“敵”ではない。だが、彼女の周囲で起きる現象は、君を誘き寄せるための“餌”でもある。君が怪奇現象を対処しようとして、魔法を使えば、ハルキの居場所は分かるだろう。」


ハルキは、唇を噛んだ。


「……俺が近くにいれば、被害が広がったりはしないのか?」

「広がる可能性はある」


カラスは即答した。


「でも、君がいなければ、彼女は一人で飲み込まれるかもしれない。それに――」


カラスは、ちらりとハルキを見る。


「君は、すでに半分、足を踏み入れている。今さら無関係を装っても、意味はない」


その言葉に、ハルキの胸が重く沈む。

またもや、 逃げ道は、最初から用意されていなかったのだ。







「……大変だな」


ぽつりと漏れたハルキの言葉に、

カラスは小さく笑った。


「ほんとだよ。」


羽を畳み、軽く肩をすくめるような仕草をする。


「君は“選ばれた者”。世界を救う唯一の希望。君は、伝説の魔法使いになるだろう。俺の役目は君を正しく導くこと。」


部屋の時計が、静かに時を刻む。

その音が、やけに大きく聞こえた。


「明日は、いつも通り学校へ行くんだ」


カラスは言った。


「田中さくらとも、自然に話すんだ。怪奇現象を“調べている高校生”のままでいろ。」


カラスは、 窓の外に視線を向け、言葉を切る。


「まだ動く段階じゃない」


夜風が、カーテンをわずかに揺らした。


ハルキは、その揺れを見つめながら、

静かに息を吐く。


日常は、まだ壊れていない。

だが、その裏側で、確実に何かがうごめいている。


そして明日もまた、何事もなかったように、

学校のドアを開けるのだ。


ーーーーーーーーーーーーー


次の日、ハルキは新聞部へ顔を出すことにした。


怪奇現象の特集を組めないか打診してもらうためだ。

新聞部の建前があれば、後々の調査が動きやすくなるかもしれない。


「おお。橘じゃん」


話しかけてきたのは佐藤だ。

彼もハルキと同じ新聞部だ。

あいかわらず、イケメンで、なぜ新聞部なのか謎だ。


新聞部の室内は、

インクと古い紙の匂いが混じり合った独特の空気に満たされていた。


乱雑に積まれた書類の山、

壁に貼られた過去のスクープの切り抜き、

そして、集中して何かを書き込んでいる部員たち。


その日常的な光景が、

昨夜のカラスとの会話とはあまりにも隔たっていて、

ハルキは一瞬、自分がこの場にいることになんだか違和感を覚えた。


「やあ、佐藤くん」


ハルキは、少し気まずそうに挨拶を返す。

佐藤は、いつものイケメンらしい笑みを浮かべ、

ハルキの肩を親しげに軽く叩いた。


「どうした?珍しく部活に顔を出してくれて。何か面白いネタでもあるのか?」


佐藤の瞳が興味を覚えてきらめいた。

彼は、何かを掴み取ることへの嗅覚が鋭い男だった。


ハルキは、昨日、田中さくらに話したのと同じ嘘を繰り返す。


「実は、怪奇現象の特集を考えててさ。」


ハルキは、できるだけ自然に、そう切り出した。


「怪奇現象か。面白そうじゃないか」


佐藤は腕を組み、少し考え込む。


その時、新聞部の部長が、

不機嫌そうな顔で近づいてきた。


「橘、そんな話は、読む価値がないぞ。小学生じゃないんだし、我々は、もっと社会性のあるテーマを…」


部長の言葉に、ハルキは肩を落としそうになるが、

佐藤がそれを制した。


「まあまあ、部長。時には読者の好奇心をくすぐるような特集も必要だろ。橘、記事にできそうな具体的に何か、実例とかあるのか?」


佐藤の介入で、ハルキは少しだけ救われる。

だが、田中の話をここですることは、なんだかためらわれるのだった。



作者からお願いがあります






面白い!




続きが気になる!




と思っていただけましたら、




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