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世界救済の扉は、今、開かれた ~最弱の俺が滅びゆく異世界を救うまで~  作者: 藤井めぐる
第1章 魔法防衛学院 入学準備編

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第5話 君は“選ばれた側”なんだ


『ハルキ、田中さくらと仲良くなるんだ』


昼休みのざわめきの中で、カラスの声だけが、やけに鮮明に響いた。

(は???)

ハルキは思わず心の中で叫ぶ。

(無理に決まってるだろ……)


「だって、田中さんは陽キャな一軍女子だぞ!」


ハルキは、唇を動かさずに必死で反論する。


「クラスの中心だし、いつも人に囲まれてるし、佐藤みたいなイケメンが狙ってるって噂まであるんだぞ!」


視線の先では、田中さくらが友人たちに囲まれて笑っていた。

光の中で笑うその姿は、あまりにも“普通”で、あまりにも遠い。


(ああいうタイプに関わると、ろくなことにならない)


過去の記憶が、嫌な形で蘇る。

調子を合わせて、気を使って、結局振り回されるだけだ。


「陽キャに巻き込まれるのは、絶対ごめんだ」


カラスは、呆れたように小さく鳴いた。


『君の人間関係の恐怖と世界の異変を同列に扱うのはどうかと思う』

「うるさい!」


そのときだった。


ガシャン、と音を立てて、さくらの近くの机からペンケースが落ちた。

誰も触れていない。

だが、彼女の足元で、確かに“落ちた”。


「あ、ごめん」


田中は、誰に向けるでもなくそう言って、拾い上げる。

周囲の友人たちは気に留めず、会話を続けている。


だが、ハルキだけは見ていた。


(今の……)


「ほらな」


カラスの声が、低くなる。

「何か、この世界のものではないものが、彼女に干渉している。

おそらく、本人は気づいていない。

だが、周囲では確実に怪奇現象が起き始めている」


ハルキは、田中の横顔を見つめた。

笑っているのに、どこか疲れたような目。

一瞬だけ、肩に影が落ちたように見えた。


「……困ってる、かな」

『そりゃ、困っているさ。理由も分からず、世界が軋み始めているんだから』


カラスは、静かに続ける。


『だから、仲良くなれ。

 君が“選ばれた側”なら、彼女は“巻き込まれた側”だ』


ハルキは、深く息を吸った。


(……なんで、こんな役回りばっかり)


だが、目を逸らすことはできなかった。


田中さくらの周囲で、また一瞬だけ、空気が歪む。

それはもう、見間違いではなかった。


教室のざわめきが、まるで別の次元の音のように聞こえる。

ハルキの耳には、田中さくらの笑い声と、

カラスの静かな警告だけが、不協和音を奏でている。


光の輪郭が少しだけ歪んだように見えたのは、

ハルキの目の錯覚だろうか。


それとも、カラスの言う「世界の軋み」が、

田中さくらだけでなく、すでにこの教室にも及んでいるのだろうか。


ハルキの心臓が、恐怖と義務感の間で速く打っている。


これは、自分が関わるべき問題なのか。

それとも、知らないふりをして、ただの高校生を続けるべきなのか。


「ていうか、どうやって…近づくんだ」


ハルキは、唇を動かさずに心の中で尋ねた。


ハルキとは違い、友達が常に群がっている田中さくらに、

自分のような存在が声をかけることなど、考えられない。

その行為が、クラスの注目を集め、

おそらくは嘲笑の的になることだけは、確信できる。


だが、カラスの言葉が、ハルキの逃げ腰な心を少しだけ引っ張る。


「世界が軋み始めている」という重みと、

「困っている」という単純な事実。


その二つが、ハルキの足を、

不本意ながらも、田中さくらの方へ向かわせそうにさせている。


「君は“選ばれた側”なんだ、ハルキ」


カラスの声が、ハルキの迷いを断ち切るように響いた。


そして、その言葉は、春樹に突き刺さる。


確かに、しゃべるカラスが現れて以降、

春樹の日常は変わっていった。


それならば、もう何も恐れることはないのかもしれない。




-------------------------------

「あ、あの...田中さん。もし、嫌じゃなかったら一緒に帰らない?。無理だったら全然いいんだけど....」


放課後,、ハルキは田中さんに声をかける。

ひどく心臓がバクバクした。


教室が、ハルキの声と共に一瞬凍りついた。

クラスメイトたちの視線が、針のようにハルキと田中さくらに集まる。


さくらは、友人との会話を中断し、驚いたようにハルキの方を向いた。


その瞳には、戸惑いと、そして、ほんの少しの好奇心が映っている。

ハルキの心臓は、まるで飛び出さんばかりに激しく鼓動し、

手のひらに汗を感じる。


これは、自分が今まで避けてきた、最も過酷な状況だ。

陽キャ女子に話しかける。という


だが、カラスの言葉が、春樹の背中を押している。


「全然いいよ!」


田中は、少し考えた後、小さく頷いた。

その声は、ハルキが想像していたよりも、

穏やかで柔らかかった。


友人たちが、何やら意味ありげな笑みを浮かべて田中を見るが、

彼女は気にする様子もなく、自分の荷物を静かにまとめ始めた。


ハルキは、ただ呆然とその光景を見つめていた。


(いいのかよ!?てか、あとからクラスで変な噂とか立たないよな)


予想外の答えに、よくないことを想像し、ハルキの頭は真っ白になる。


『よし、決定だ!』


カラスが喜々として叫ぶ。

ハルキは、その声を無視しようとするが、

その喜びが、奇妙にも自分の心の高揚感と重なる。


田中が荷物をまとめ終え、ハルキのところへ歩いてくる。

その足音が、ハルキの鼓動と同調しているように聞こえる。


ハルキは、自分の鞄を手に取り、ゆっくりと立ち上がった。


クラスメイトたちの視線を背中に感じながら、

ハルキは田中と一緒に教室の扉へ向かう。


扉の向こうには、知らない世界が待っているような気がした。


「ハルキ!よくやった!!緊張した??心臓ドキドキしてる??」


カラスは無邪気なクリクリとした眼で聞いてくる。


「でも、話す前に、あ、とか、え、とか言う癖やめた方がいいかも!」


カラスはまた無邪気に言う。


作者からお願いがあります



面白い!


続きが気になる!


と思っていただけましたら、


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