第21話 価値ある勝利
前回のあらすじ!
創造神幹部と名乗る謎の男、シオンに見事勝利した3人!
しかし、今際の際に立ったシオンは、自爆すると言い放つ。
すぐに危険を察知した3人は、戦場の森から離れ、シオンから距離を取った。
...しかし、いくら待っても爆音は聞こえてこない。これはまさか...?
悪王討伐遠征3日目 対シオン戦後...
頭の中に、一つの可能性がよぎった。
(まさか、はったり!?)
「...チッ!やられたな!」
クレマも僕と同じことを考えたのだろうか。彼女はそう溢すと、勢いよく森へと走りだした。そのすぐ後ろをシモが追い、そのシモの後ろを僕が追った。
(自爆の宣言は嘘だったのか...?けれど、どっちにしろ今頃シオンは死体になっているんじゃ...)
先に現場に到着したクレマが、足を止めて立ち尽くしていた。
後から追いついたシモと僕も、現場を見て唖然とする。
「き、消えてる...」
そこには爆発した痕跡どころか、シオンの死体すらなかった。
「ひっかけられたな」
クレマは屈辱そうに近くの木を殴る。
「あの自爆って言ってたのは、嘘って事!?でも、シオンは両足なくなってたし、とても逃げれるような状態じゃなかったと思うけど...」
「お前はさっきから大事なことを一個忘れてんだよ」
クレマは若干苛立ったような声色で僕に語り掛ける。
「アイツの掌力だよ」
その言葉にハッとする。
確かに、シオンは戦闘中一度も掌力を使っていなかった。そもそもシオンが掌力者かも分からなかったが、彼はずっと銃を武器にしていたので、完全にその可能性が意識から抜けていた。
「ウチが立てた作戦の大きな穴は、アイツの掌力だった。アイツが仮に掌力者だった場合、どこかのタイミングで自分の掌力を使えば、ウチの立てた作戦は簡単に破綻する。けどアイツは一回も掌力を使うことが無かった。だからアイツは非掌力者か、仮に掌力を持っていたとしても弱い能力だと油断してたが.......クソっ!」
たしかに、あそこまで追い込んでも掌力を使われなかったら、誰だってクレマのように考えてしまうだろう。
「えっと、てことはシオンの掌力は移動系の力で、今消えたのもその力を使ったからってこと?」
「そう考えんのが一番自然だな」
僕は納得したが、シモが不思議そうな顔でクレマに質問をする。
「じゃあさー、なんでシオンは戦ってるときに掌力を使わなかったんだろうねー?」
確かに、移動系の掌力ならば、戦闘中に使えばよかったはずだ。そうすれば間違いなく僕たちの作戦を回避することができただろう。シモの疑問を受けたクレマは、空を見上げながら腰に手を当てため息をこぼした。
「さーな。掌力を使うのに相当な条件が必要なのか、はたまたアイツがウチらのことを舐めてたから使わなかっただけかもな。攻撃も致命傷にならない所ばっか狙ってたし」
クレマはシモの問に答えたあとも、「そもそも悪獣以外に創造神の仲間が居るなんて聞いてねぇ。アイツの正体は?いや、幹部ってことは複数人...」とかずっと1人で推理を続けている。
(はぁ...)
あと一歩、という所で『創造神幹部』というとても大きな獲物を逃がしてしまった。彼はもう何もできないだろうという僕達の慢心を突かれ、逃がしてしまったのだ。
...しかし、いつまでもへこたれてはいられない。ここはパーティーのリーダーらしく、そして一国の王子らしく、二人の士気を上げるような演説でもしておこうではないか。
僕は咳払いをして、二人の間に堂々と立った。
「みんな、一回僕の話を聞いてくれ!!...確かに、今回トドメをさしきれなかったのは、僕たちの弱点だ!!だが、」
右から、「さしてよかったならシモが殺してたよ~!」とかいうヤジが聞こえてきたが無視しよう。
「僕たちは創造神の幹部という強敵に打ち勝ったんだ!!」
左から、「相手本気じゃなかったけどな~」というヤジが聞こえてきたが無視しよう。
「僕達なら創造神の元まで必ずたどり着ける!!そして!!創造神の首を打ち取ることが可能だ!!みんな!今回の経験を糧に、更なる成長を遂げようではないか!!」
シモは「お~!」と無邪気に返事をしてくれたが、クレマはもう先に歩き始めていやがった。
まぁいいだろう。実際、このパーティは確実に成長をしている。
この調子で黒髪乙女との運命的な邂逅を果たし、ついでに世界も救ってあげようじゃないか!
僕たちは森を抜けるため、そして創造神を倒すため、この旅の歩みを再開した。
「待ってろ黒髪ロングお姉さん...フヘヘッ」
「オーゴがにやけてるの気持ち悪いね!」
「...シモ、それは普通に傷つくからやめなさい」
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その次の日の夜...
「...うし!今日は一旦ここら辺にして、晩飯でもひっ捕まえるか」
森を抜け、少し歩いたところでクレマが足を止めた。周囲は少しだけ暗くなり始めているし、狩りをするなら今のうちにしておく必要がある。
「今日は鹿がいいなー!」
「鹿かぁ...。あれ、獣臭くない?」
シモが頭の上に指を立てて、鹿のジェスチャーをしている。彼の大好物はパンだが、パンの次に肉が好きらしく、よく鹿肉を食いたがっている。
僕は牛肉は大好物だが、鹿の肉はなんだか独特の獣臭さがあって少し苦手だ。だが、クレマはシモの希望を通すつもりらしい。
「まぁたまにはシモの願いも聞き入れてやろうじゃねぇか。今日は鹿狩りじゃあ~」
「やったー!狩りなら任せて!」
シモは嬉々として小ジャンプを繰り返しながらはしゃいでいる。クレマはそんなシモの頭にチョップを食らわせ、静止させた。
「シモは狩りダメだ!お前がやると焦げ臭くなって敵わん」
「え~、焼く手間省けるのに~」
確かにシモが狩ってきた動物は、大体が焦げてしまって可食部が少なくなる。
クレマはそう言うと、僕の方を振り返った。
「ってことで、オーゴ!ヨロシク!」 ニコッ
彼女は普段ならしないような可憐な笑顔で、こちらに親指を立ててきやがった。
「...クレマは美人だから許されてる部分が多いぞ...」
「ハハッ、知ってる」
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30分後.......
「ほら~、お前たち~。お肉取ってきたぞ~」
「「わ~い」」 ワチャワチャ
僕は目の前の雑草を引きちぎって、さっき狩った鹿の体と入れ替えた。本来なら鹿の死体を引きずってこなきゃいけないのだろうが、入替の掌力を持っているとこういう時にラクチンだ。
「じゃあ、僕は狩りしてきたから!今日の仕事終わりね!!」
僕はそう言って、シモとクレマが作ってくれていた焚き火の前でゴロンと仰向けになった。
(あー、お星さまが綺麗!あれがデネブ、アルタイル、ベガ!ウフフ)
「ほら、二人共ボサっとしてないでさっさと料理作って」
僕は寝ころびながら二人に催促する。クレマが、ただでさえ鋭い目つきを更に尖らせて、僕を睨みつけた。
「お前が今度クソしたら、ソレ巻き戻して腸の中に詰めてやるよ。...まぁオーゴに料理作らせるとゲロ不味くなるし、二人でやるぞ、シモ」
「いいよ!シモ料理好き!」
クレマはぶつぶつ言いながらも鹿の死体を捌き始め、シモは焚き火にかかるように金網をセットしてくれていた。
...そう、実際この二人に料理を作らせた方がみんなの為なのだ。僕はただの王子なので、今までの人生で料理なんかしたことがない。全ての食事を使用人たちに任せっきりにしていたからだ。つまり、僕は料理力が皆無なのだ。
この間、川で釣った魚を僕が料理した時なんかは、本当に酷かった。調味料は自然由来の物しか使用していなかったのにも関わらず、焼き終えた魚が到底自然界には存在しない色に発光していたのだ。
そのダークマターを、クレマが毒見と称して僕の口にねじ込みやがった後は、しばらく原因不明の腹痛に悩まされたものだ。
それ以降、僕一人での料理は免除されているのだが...
意外なことに、シモとクレマの二人は料理の腕がある。
特に驚きなのはシモ。この子はこんなにもガサツで、狂犬じみた戦いをするような性格なのに、まるでどこかで料理を習っていたのかのように上手い。これは将来いいお嫁さんになる(確信)。
ふと、星空を見ていると、なんだか眠くなってしまった。まだご飯ができるまで時間もありそうだし、少し目を瞑っておこう......
ZZzz......
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「は~い!オーゴ!ご飯できたよ!」
シモが僕の顔をぺシっと叩く。僕はうとうとと目を開ける。
「んぁ?もうできたの...?」
体を持ち上げると、クレマが焼いた肉を3人分に切り分けてくれていた。
「今日はシンプルに塩焼きだ。オーゴのバックに調味料が大量に入ってるから、助かるぜ」
「僕は舌が肥えてるからね、必需品なんだよ」
クレマは、「はいはいそーですか」なんて受け流しながら、僕とシモに肉を渡してくれる。
さぁ、皆が座ったら、一緒に手を合わせて...
「「「いっただっきまーす!」」」
僕たちは旅の疲れを癒すように、鹿の肉に噛り付く。この瞬間がこの旅の至福だ。
まぁ僕は獣臭さが苦手なので、ちびちびと食べているが。
ふと、このお肉の元となった鹿さんの死体を見る。鹿の死体をしばらく眺めたが、今回はそれほどの感情の起伏は起こらなかった。
...けれど、確かにあの時、昨日シオンが死にかけていた時、僕の心には恐怖に似た感情が沸き上がっていた。僕が命を奪うという事実、そのことに対してきっと僕は覚悟が足りていなかったのだと思う。
それをシオンにも見透かされていたし、シオンが逃げたという事を知った後、少し安堵してしまった自分もいた。殺す相手が創造神の幹部であるのなら、このような自責の念に苛まれることは無いと思っていた。けれど実際、人は人なのだ。
鹿を自分の手で殺しておいて、創造神の幹部を殺すことにはためらう。
(結局自分が弱いだけかな...)
クレマはあの時、少なくとも僕よりは殺すことに対して覚悟ができている様子だった。(シモは.......きっとためらいなく殺すんだろうけど)
僕は何となく、敵を「倒す」と思って戦ってきたが、それじゃあこの先の戦いでは通用しないのかもしれない。
僕は敵を「殺す」んだ。...それを忘れないよう、僕たちのためにお肉となってくれた、この鹿さんに誓おう。
「鹿さん...僕、頑張るよ...!」
そしてこの鹿さんのお肉に感謝を込めながら、一口ずつ噛みしめて食べるのだ!
(モニュッ...モニュッ...)
ふとクレマが僕の皿を覗き込んだ。
「どうしたオーゴ、進んでねぇな」
「オーゴが食べないなら、シモが食べちゃうよ?」
「だぁー!それはダメ!この肉は全部僕のもんだ!!」
こうして僕達は、鹿さんを糧に英気を養うのであった。
続く!
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