第19話 決着
前回のあらすじ!
オーゴとクレマの連携した一連の攻撃を、なんと無傷で脱してしまった創造神幹部、シオン。
ついにオーゴ達の完全決着かと思われたその時、シオンの足は違和感を覚える...
創造神討伐遠征3日目 対シオン戦
(この子達も、大したことは無かったな)
今となってはオーゴもどこかに消えたし、ひとまず体勢を戻そうと、シオンは足に力を入れる。その時、彼の足は、熱を感じ取った。
(なんだ?足元には石しかないハズ...)
シオンは足元を見る。案の定、そこには先程撒かれた石がいくつか落ちているだけだった。
それは当り前の光景。特段異変を感じる光景ではない。
........その石が、鼠色のままだったなら。
「......なるほどネ」
足元に転がっていた石は、真っ赤に膨張し、高温を放っていた。そう、まさに今、爆発するように。
シモが倒木の裏から顔をひょこりとだし、楽しそうにニコニコ笑っている。
「あはっ!ボーン!!」
__ボーーーンッ!!!
森中に、爆発音が鳴り響いた。音に驚いた鳥たちが、一斉に羽ばたく。辺りを一瞬で焦げ臭いにおいが覆った。
「ゲホッゲホッ、...どうなった?」
周囲には爆煙が舞い、シオンがどうなったかすぐには確認を取れない。
...しかし、あの爆発の中で生き残るのははっきり言って無理だ。これでも倒せなかったら、その時はもう僕たちの負けだろう。
しばらくして黒煙が晴れ、そこから見えてきたものは、
シオンだった。
見えたと言っても、彼はただ横たわっていただけだ。
煤と土煙で全身が真っ黒になったシオンは、膝から下が完全に吹き飛んでいた。
「やったー!シモの爆破で殺したね!」
「いや待て、シオンの口が動いてる。アイツ、まだ生きているぞ...!」
この爆破で生きているのは異常だ。爆破の直前でできる限りの回避行動を取り、被害を最小限にしたのだろうか?つくづく恐ろしい男だ...
しかし、当然ながら彼はもう歩くことができず、今は空を仰いで口を小さく動かしているだけであった。シオンのか細くなった声が聞こえるように、僕たちは警戒しながら近くに寄る。
「........いい.....作戦.....だったね.....」
シオンは、ヒューヒューと浅い呼吸をしながら、僕達の目を見る。こんな瀕死の状態になりながらも、彼はどこか満足げな顔をしていた。
この作戦を立てたクレマは複雑そうな表情を浮かべる。
「...ありがとよ」
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およそ5分前...
「作戦を伝える」
クレマが鋭い目つきで僕とシモを見る。
彼女にしては珍しく、かなり熱意が感じられるその眼差しに、僕は思わず背筋を伸ばした。
「まず、大前提としてアイツには化け物じみた射撃能力、運動神経、そしてイカれた動体視力がある。これをどう殺すかだが...」
シモが元気に手を上げる。
「ばくさつ!」
「...うん、まぁ殺傷能力が一番高いのはシモの掌力だから、攻撃の決め手は爆破でいい。けど、さっきみたく普通に爆破する石かなんかを投げ込んだところで、撃ち壊されるか避けられるかのどっちかだ。つまり、アイツの意識の外から爆発をお見舞いするしかねぇ」
ここは森の中だが、奴がいる場所は木々が無く、少しひらけている。
それに、シモの爆破は...
「シモの爆破は、爆発する3秒前くらいから赤くなって膨らみ始めるじゃん?そこを見られたらどっちにしろ一瞬でバレるよね?」
僕はクレマに問いかけた。
「なら、爆発するまで気づかれなきゃいい。...アイツの視線を一つの物に釘付けにさせるんだ」
「一つのものって、何に?」
「お前だ」
僕かよ...
クレマは地面に木の枝で簡単な絵をかき、説明をする。
「まず、大量の石をヤツを囲うように投げ入れる。そしたらアイツはまず最初に爆破を疑い、回避行動を取ろうとすると思う。だが、これはほとんどオーゴが触った石だ。アイツが回避する前にお前が入替を使って接近し、ヤツをその場に留めろ」
「...ちょっとまって。いま、『ほとんどオーゴが触った石』って言ったよね?全部僕のじゃないの?」
「あぁ、全部じゃねぇ。いくつかはシモが触った石を混ぜる。最終的にはこれでトドメをさす」
「シモがトドメ係だね!」
シモは相変わらずウキウキだ。
「そうだ、しっかり頼むぞ。...話を戻すが、オーゴはヤツの周りにある大量の石の間を高速で入れ替わり続けろ。少しでも止まればアイツは確実に撃ち抜いてくる」
(止まったら、”死”か...)
「そして頃合いを見て、オーゴは奴に攻撃を仕掛ける。この時は真後ろからじゃなくて、真横とかがいいな」
「なんで?」
クレマは木の枝で地面に棒人間を描き、その棒人間に目を付け加えた。
「アイツが剣を避けるときの目線の問題だ。でもアイツは入替の発光のことを知ってそうだから、一回目の攻撃は避けもせずお前を撃つかもしれねぇ。ここでオーゴの頭を撃ち抜かれたら終わりだが、恐らくそれはない。アイツは今この時もウチらが作戦を立てる時間をわざわざ作っているし、さっきの言動からもヤツはこの戦いをゲーム感覚でしている。だから一瞬で殺すようなことはしない」
「け、けど万が一、頭撃たれたら...?」
僕はクレマが何か解決策をもって、こんな危険なことを言っているのだと信じていた。...いや、信じたかった。
「うーん死ぬな。けどまぁ、何もしなかったら遅かれ早かれ殺されるんだ。行動起こして死ねたら御の字だろ?」
彼女はほくそ笑みながら答えた。
「えぇ...(引き)」
つまりここで即死すれば、この作戦と僕の人生が即終了ってわけか...
...いや、ここは割り切るしかない!これも将来の伴侶、黒髪乙女の為...!
「まぁ一旦この前提で話を進めるぞ。オーゴは撃たれたらすぐにウチを一番近くの石と入れ替えろ。そうしたらウチがオーゴを触って、全身を巻き戻す。記憶も巻き戻されるだろうが、お前は最初からシオンに攻撃するとだけ考えて動いてればいい。そんでウチはウチの体も巻き戻すから、オーゴの体を触った後一瞬で消える」
クレマは地面に、目がバッテンの僕を描き、それに触れる彼女の棒人間を付け加えた。
「シオンはウチの掌力をしらねぇ。きっとさっき撃ったはずのオーゴが再び剣を振りかざして自分の目の前に出てきたら少なからず動揺する。...けど、それでもオーゴの攻撃はかわされると思う。一瞬で銃の照準を合わせることができるような動体視力だ、きっとオーゴの剣も寸前でかわす。...だが、かわさせていい。オーゴ、攻撃の時は、ヤツの胸のあたりを横から切りつけるように狙え」
「それも避けさせた時の目線の問題?」
「あぁそうだ。横振りで切ればヤツは上半身を上に向けて避けるだろう。最悪、避け方が違くてもなるべく地面を見られないように誘導する切り方をしろ。」
クレマは手に持っていた木の枝をほっぽり、そこで地面に解説を描くのをやめた。
...正直、侮っていた。これほどの戦況分析能力があるとは、アカデミー主席を舐めていたようだ。
「ここまでで、ヤツに地面の石を入替の為だけの石だと思い込ませ、これがこちらの作戦の全てだと判断させる。...今まで見せなかったウチの掌力を使った二段階攻撃が、この作戦のメインだと思い込ませる」
今回はシモも珍しく真面目に話を聞き、うんうんと頷いている。
「そのあとは簡単。ウチとオーゴの二段階目の攻撃が始まった頃から、シモが最初に触った石に爆破の力を使い、オーゴが攻撃を避けられて撤退した直後に起爆させる。上手くいけばアイツは死ぬか、確実に重傷は負わせられる」
感動した。ずっとやる気のなさそうだったクレマが、実は勝つためにずっと頭をフル回転させていたのだ。
「完璧な作戦だね!流石主席!!」
「さすがしゅせき!!」
しかしクレマの表情はいまいち晴れない。
「いや、この作戦は完璧なんかじゃねぇ。向こうが”あること”をできない前提で考えられた、綱渡りの作戦だ」
「あることって?」
「...まぁ正直、その可能性は低いから、分かんないなら分かんないままで良い。変に心配して元々の計画が上手く運べなかったりしたらそっちの方が困る」
僕は素直に教えてくれない方が不安になってしまうと思ったが、まぁクレマの言うことも一理ある。今は余計な心配はせず、目の前の作戦に集中していよう。
クレマはその鋭い目線で、僕とシモを交互に見た。けれど、今はその鋭さが心強い。
「アイツの舐めた戦い方にはもうウンザリだ。創造神幹部だかなんだか知らねぇが、ウチらの力、見せてやろうぜ」
「応!」
こうして、作戦は始動した。
続く
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