第18話 「作戦を伝える」
前回のあらすじ!
シオンの予想以上の戦闘能力を前に、苦戦を強いられる3人!
しかし、アカデミー主席のクレマは、「作戦がある」と言い放った。
果たして、アカデミーの頭脳は創造神の幹部に通用するのか...?
「今から作戦を伝える」
その言葉は、希望と呼ぶにはあまりにも無骨で、絶望と呼ぶにはあまりにも信頼できる言葉であった。
僕は頭の中でもう一度、クレマから伝えられた作戦をイメージした。クレマはこんな状況でも、至って落ち着いた、というよりも少し面倒くさそうな表情で、話しかけてくる。
「オーゴ、さっきも言った通り、この作戦には穴がある。...もしその穴を引いちまったら、無理せず戻れよ」
「あぁ。けど、ここで勝つにはやりきるしかない...!」
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「お~い。そろそろ作戦は決まったかい?早くしないとそろそろ__!!」
シオンが待ちくたびれたように言い放った、次の瞬間、オーゴ達の隠れていた倒木の裏から、突然大量の石がシオンに向かって投げ出された。
(また爆破の石か?この量は流石に全部撃ち落とせないね...。一旦回避するか)
その時、シオンの後ろへと飛んでいった1つの石がチカリと光った。
「逃がすか!」
光った石は、まだ地面につく前にオーゴと入れ替わった。
「おぉ!この石は『爆破』の為じゃなくて、キミの『入替』の為の石だったか!」
背後のオーゴに向かって、シオンは感心したように声を上げた。けれど、そう言いながらもシオンは素早く右手の拳銃をオーゴの方に向けている。
その瞬間、オーゴも銃の動きに反応する。シオンから見て左の方に投げられたの石に入れ替わり、銃の射線から逃れたのだ。
「今度はそっちかい?」
けれどもやはり、シオンは既に動きを目で追っている。今度は左手の銃を、入れ替わった直後のオーゴに向けた。
...しかし、そのオーゴもまた、射線から逃れるように全く違う方向に入れ替わる。
「もっとだ!」
オーゴは繰り返し、途轍もない速さでシオンの周りにばら撒かれた大量の石と入替をし始めた。シオンが銃口を向けるのも速いが、それよりも更に速く、オーゴはシオンの周りを入れ替わり続けている。
シオンは常にオーゴの動きを目で追っているものの、一々銃口を合わせようとすることは諦めていた。
「ナルホド...。これが作戦か?実際この速さで動き回られていたら照準は合わせられないが」
一秒でも止まったら撃たれる。それを分かっているからこそ、オーゴは手を緩めることなく入替を繰り返す。
(入替!入替!もっと速く!もっと機敏に!!)
オーゴは高速で入れ替わりながら、徐々に剣を構え始めた。攻撃のタイミングを伺っているのだ。
そして数秒後、オーゴがシオンの右隣に入れ替わった、その時。
(...ここだ!!)
オーゴは剣を腰の横に構えた姿勢で、遂に入替を止めた。
「終わりだ!」
シオンの真横に出現したオーゴは、勢いよく彼に向かって剣を振り抜こうとする。
...まさにその瞬間。
「捉えた」
__パァン!!
さっきまで立ち尽くしていたシオンが、驚くほど素早い動きで発砲した。シオンが撃ったその銃弾は、オーゴの右胸を正確に撃ち抜いていた。
「...ぅぐっ!」
オーゴが息を詰まらせた。白色の服が、右胸から赤くなっていく。
「君は入れ替わる対象を増やせば捉えられないと思ったかもしれないが、『入替』には絶対的な弱点がある。...それは入れ替わる対象が一瞬発光することだ。光った石に絶対君が現れるのだから、これほど分かりやすいヒントはないんだよ」
胸を撃たれたオーゴは、体勢を崩した。
そしてその体が地面に倒れ込もうとする刹那。
「まだだ...!」
オーゴの眼は、まだ死んでいなかった。そして、彼の真横にあった石が発光する。
(この重傷で引くわけでもなく、真横に移動...?)
シオンはその行動に疑問を持ちながらも、銃を構える。しかし、発光した石と入れ替わって出てきたのは、オーゴではなく、クレマだった。
(重傷を負いながらの決死の入替...。3人の傷が治っていたところを見ると、彼女は恐らく治癒系の力を持っている。ワタシの目の前で堂々と傷を治す気か?)
唐突に出現したクレマは、すぐ隣のオーゴに一瞬だけ手の平で触れた。
...そして、消えた。
消えたのだ。
(消えた?しかもこれは入替の力ではない...。何より彼女は、この少年に一瞬触れただけだ。いったいどういう___)
一瞬オーゴに触れただけで消えた。ただそれだけで、消えたのだ。
シオンはその行動の真意が掴めずに困惑した。
「回復じゃなかったのか?じゃあいったい何を__...!!」
シオンの視界を、唐突に現れた”それ”が遮る。”それ”はこちらに剣で切りかかろうとする、まさにその瞬間であった。
そう。彼の目の前には、オーゴが居たのだ。それも、まるで5秒前と同じ位置、同じ体勢、同じ表情、同じ光景。しかも、服に広がった血の跡すらも綺麗に消えていた。
シオンの理解が、現実の光景に追い付けずにいる。
「ハァ!?」
さっき胸を撃ち抜かれ、とても立てる状態ではなかったオーゴが、今目の前で剣を構えている。そこに入替の石は無かったし、そもそも銃で撃たれ、入替の力を使える状態ではなかった。
(緑髪の彼女の力か...!)
「終わりだ!」
5秒前に発した台詞と、全く同じセリフがオーゴから飛び出した。
そして5秒前とは違い、横撫に斬りかかった剣がシオンに阻まれることはなかった。
オーゴが振るった剣は、シオンの胸のあたりに向かって地面と平行に突き進む。
...だが、剣の手ごたえは、人を切った時のそれではなかった。
__すかっ
虚しく空を切る剣。木漏れ日の光を鋼の剣が反射して、キラキラと光っている。
シオンは間一髪のところで避けたのだ。彼は急に出現した想定外のオーゴにも対応し、切っ先スレスレの所で剣を避けてみせた。それを可能にするのは、常人離れした動体視力に他ならない。
「クッ!どんな反射神経してるんだ...!!」
上半身を大きく後ろに逸らし、天を見上げるような姿勢になったシオンはニヤリと口角を上げた。
「いい作戦だったよ。ケド...剣筋が少し上だったね」
シオンは、自分に向かって剣を振るったオーゴの顔を見つめる。
彼の目には、悔しそうに顔を歪めるオーゴの顔が映って........
.....いなかった。
シオンの目に一瞬映っていた彼の表情は、それと真逆の表情。まるで安堵したような、そんな笑みを浮かべたオーゴの表情であった。
彼は一瞬の笑顔を見せた後、体が光り、どこかに消えた。
「...なんだ?違和感...」
シオンの脳内で今の状況が整理される。
(いや、彼らの作戦は全てかわした。まず1つ目の陽動、高速移動。これは入替の特徴を知っていたワタシが彼の出現する箇所を予測し、撃ちぬいた。そして2つ目の本命攻撃、緑髪の彼女の力。撃ちぬいた入替の彼を、どうやったかは分からないが数秒前の状態に戻し、奇襲した。...そしてそれも失敗に終わって、逃げた。ワタシの勝ちのはずだ...)
シオンはほんの1秒にも満たない時間で考察をし終えた。それでも、彼の脳内には何か見落としているような、じんわりとした嫌な感触が後を引いていた。
シオンは上体を翻し、剣を避けた姿勢のままである。
(...この子たちも、大したことは無かったな)
今となってはオーゴもどこかに消えたし、ひとまず体勢を戻そうと左足を踏ん張る。...その時、彼の左足は、たしかな熱を感じ取った。
(なんだ?足元には石しかないハズ...)
シオンは顔を逸らし、急いで足元を見る。案の定、そこには先程撒かれた石がいくつか落ちているだけだった。
それは想像通りの光景で、特段異変を感じるものではない。
........その石が、赤く膨張していなかったのなら。
続く!
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