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手の平の『創造物』たち  作者: 今木照
創造神を殺す旅
30/40

第13話 巻戻治療(どこを巻き戻すかは言ってない)

国歴248年 創造神討伐遠征一日目 悪獣戦闘後...



 よし。

 このパーティは今後、作戦名『シモ』で行こう。


 シモはハイタッチに応じない僕を不満げに見つめている。

 その後、ひょいとクレマの方に体勢を向けたシモは、自信ありげに胸を膨らませて語りだした。


「ほらね?シモの作戦どーり、3体とも1人で殺したよ!」


 クレマはそんな彼のおでこをペシっと叩き、シモが「ぁいたっ」と漏らす。

 クレマは呆れたように反論した。


「あんなん作戦じゃねぇっての。大体、オーゴが入れ替えてくれてなかったら、今頃お前も悪獣諸共バラバラだったろ」


 シモは、クレマに叩かれたおでこをさすりながら、上目遣いで睨みつける。


「爆発するタイミングはある程度シモが決められるもん!悪獣と一緒にバラバラになったりしませんよーだ!」


 クレマは小さい弟を相手する姉のように、「はいはい」といなしながらこちらに視線を向けた。

 すると、僕の姿を見て何かに気づいたようだ。


「あれ?オーゴさ~ん?もしかしてだけど、戦ってもないのに怪我しちゃってる~?プププ」


 クレマが僕の左腕の怪我を発見し、愉快そうに囃し立てる。

 最近の若者はつくづく思いやりがないな。と実感しながらも、恥ずかしくて顔を背けてしまう。


「う、うるさいなぁ。クレマがもう少し早く教えてくれれば余裕で避けてたし!王子の片腕の代価は高いぞ!」

「擦り傷で代価とか言うな。...まぁいいや。ウチの『巻戻』で治すついでに、色々教えてやるよ」


 そう言うとクレマは近づいてきて、左腕の患部を出すように指示してきた。

 僕は仕方なく、名誉の傷を彼女の面前に晒した。...顔を赤らめながら。


「からかったりして悪かったって。...んじゃー、『巻戻』治療の実演といこー」


 そう言って、クレマは細く長い指で僕の左腕に触れ、押し黙った。彼女の指先は思ったよりも冷たかった。

 今のところ腕にはジンジンとした傷の痛みしか感じないが。


「じゃあ、3・2・1.......ほい」


 クレマがおもむろにカウントダウンを始めたかと思うと、次の瞬間、僕の左腕が白く光りだした。

 そして遂に腕の.......!


 向きが変わった。


 ん?と思われたかもしれないが、僕自身も(ほ?)という感じだ。

 詳しく説明すると、カウントダウンが終わり、発光した僕の左腕は次の瞬間、肘を曲げた()の字型になっていた。


 つまり、1秒前までクレマの方へ真っすぐ伸ばしていた左腕が、肘を支点に曲がったという事だ。

 そして肝心の怪我は....


 治っていた。


「ク、クレマ?これで、治ったの?っていうか、左腕の神経弄ったりしてないよね?なんか急に左腕が曲がって怖いんだけど......」


 クレマはゆっくりと腕から手を離した。

 そして丁寧に質問に答えてくれる。


「だいじょーぶ、コレできれいさっぱり元通り。腕が曲がったのに関しては、ウチが神経弄ったとかじゃなくて、...っていうか弄れねぇけど。えっと、()()()()()()()()()()から、巻き戻した時点でのお前の腕の形になっただけだ。多分、歩いてた時の形とかだな」


 成程。

 クレマの掌力まきもどしはただ物体の時間を巻き戻すだけじゃなく、その時の状態も復元するのか。


 ...と、ここで一つの疑問が沸き上がる。


「そういえばクレマのその掌力って、どんぐらいの時間巻き戻せるの?人間を赤ちゃんの頃に戻せたりもすんの?」

「いや、ウチの掌力で戻せる時間はせいぜい3時間位だな。だから怪我した後、長い時間ウチと離れてたら手遅れになるから、そこんとこヨロシク」


 流石にそこまで神のような力ではないかと、安堵に似た感情を実感する。

 しかし、城下町で「昔は美人だった」と豪語する薬屋のおばあちゃんの真相が闇の中に葬られ、僕は落胆せざるを得なかった。


(ワンチャンあのおばばの若い頃が見れるかと思ったのに...)


 薬屋のおばあちゃんの50年前を夢想する僕に、クレマが囁く。


「なぁ、ついでにもっと面白いの見せてやる。ウチの掌力で人ひとり、つまり、全身の時間を戻すとどうなるのか。クククッ...」


 クレマが邪悪に耳元で笑い、シモに視線を移す。そして、またしても何も知らないシモにクレマは手招きをした。


「おーい!シモもこっちこーい。おでこ治してやっから!」


 クレマが誘うと、悪獣の残骸を蹴って遊んでいたシモがなんだか渋々近づいてくる。彼は、擦り傷なんか全く意に介していない様子だ。


「こんな傷どうだっていいのに~」

「ダメだろ~。嫁入り前のシモが傷なんかつくっちゃ。ねぇオーゴさん?」


 クレマが僕の顔を覗き込む。

 ウンウン。それに関しては同意見だ。


「何言ってんのクレマ!シモは、お・と・こ!だからお嫁になんか行かないんだよ!オーゴも頷かないでよ」


 僕たちの反応を見たシモがプリプリと怒っている。

 ただ僕は、シモの可愛らしいその顔に傷をつけてほしくない一心でクレマを肯定しただけだ。

 まぁ実際、一部の紳士にはシモのような少年は需要があるだろう。僕は違うけどね、ウン。


 ....そんな話は良いとして、クレマがシモのおでこに手を置き、いよいよ全身の巻き戻しを行うつもりらしい。

 クレマは面白いとか言っていたが、さっきの腕の結果を鑑みると、体勢が変わるとかだけではないのだろうか。


 シモのおでこに手を置いたクレマが、シモに最終確認をする。


「じゃあ、シモ、準備はいいな?」


 シモが上目遣いでクレマの顔を見上げる。

 何故確認を取られたのか分からないシモは、不思議そうな顔をした。


「おでこ治すだけでしょ?別にいいけど?」


 やはり、シモは全身を巻き戻されることに気づいていないらしい。


「はい。じゃー行きまーす!オーゴ、見とけよー」


 クレマが合図した。

 その時!シモがクレマの隠し事に気づいてしまった!


「もしかして...!シモを全身巻き戻そうとしてる!?ヤだ!!」


 シモがその事実に気づき、逃げ出そうとする!

 しかし、クレマはシモのおでこから手を離さない。


「ざんね~ん。もう遅いで~す」


 クレマが悪魔のように「ニチャァ」と笑い、シモの体が白く光る。

 シモはその悪魔の手から逃れられなかったのだ。


 そして、次の瞬間!



 ...シモが消えた。



 はい。

 跡形もなく、綺麗さっぱり居なくなった。


 そこには元からシモなんか居なかったように、一人で突っ立っているクレマしかいなかった。


(あれ?シモが消え失せたんだが?)


 ・・・・・・・・・・


 僕の脳内で必死に目の前で起こったことを整理していく。

 すると、ある一つの回答に行きついた。



(......ん?これヤバいんじゃね?)

最後まで読んで頂きありがとうございます!

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