第10話 シモ
創造神討伐遠征1日目 自己紹介中...
「クレマさん!自己紹介ありがとうございました!...続いてはシモさん!自己紹介おなしゃ~す!!」
クレマはまだ語り足らなそうにしかめっ面をしたが、これ以上僕の純粋な脳みそに未知の知識を増やしたくはなかった。だから見るからに単純そうなシモに、多少強引だが話題を逸らしたのであった。
シモはクレマの取り出した拳銃とやらに興味津々だったが、僕に名前を呼ばれてようやく気が付いてくれたようだ。彼女はピョコンとこちらに向き直った。
「シモの自己紹介??いいよ!シモの名前はシモ!!10歳!好きな食べ物は、何も味のない食パン!えっと、シモの掌力は『爆破』って言って、触った物をなんでも爆弾にできちゃうの!ほら!!」
そういうと、シモは間髪入れず近くの木の幹にチョンっと触り、触った部分を「ボン!」っと小爆発させて見せた。
シモはニコっと可愛らしい笑顔で微笑んだが、絶妙に恐怖心の方が勝った。
「あ、ウンウン!シモちゃんの掌力はさっき見たからね~!わざわざ爆発させないでいいよ~!ちょっと怖いからね~!あははははは」
一旦シモを落ち着かせよう。いやビビって落ち着いてないのは僕かもしれないけれども。
とりあえず、僕は無理矢理恐怖心の上に笑顔を貼り付けて、話題を質問コーナーに強制移行させる。
「ところで、シモは何でこのパーティーにあそこまでして入りたかったの?理由によっては、ジンマがものすごく不憫なおじさんになっちゃうけど」
正直、シモがこのパーティーに入りたいと言った時から、ずっと疑問であった。
僕の質問を聞いたシモは、考えるような仕草も見せず、きっぱりと言い放った。
「だって冒険に出たら、シモを殺してくれるような敵に会えるかもしれないじゃん!!」
その言葉を素直に脳が受信した時は、僕ももう年かと思った。
え?なんだって?
シモが敵を殺したい?
NO。
シモを悩殺してくれるようなお姉さんに会えるかもしれない?
NO。そんなお姉さん僕が会いたい。
ということは、シモは自分を殺してくれる好敵手を探してこの旅に出るのか?
なんだコイツ、戦闘民族の出か?
シモの狂気すら感じるその笑顔を前に、自分のハリボテの笑顔が通じなくなっていることに気づき、僕はクレマに助けを乞うことにした。
僕はリュックの中に拳銃を仕舞っていたクレマにおずおずと耳打ちをする。
「ちょっとぉ~...!彼女、イカレちゃってるよ!それか戦闘民族の末裔か、超ストイックな自殺願望者かの二択だよォ...!!」
僕はクレマの耳元でひそひそ訴えかけ、シモの方に人差し指を向けた。シモは僕たちが何をしているのか分からない様子で、笑顔のまま首を傾げている。
クレマはリュックの口を締め、ゆっくりと背負いながら答えてくれた。
「だからウチはシモをパーティーに入れるのに反対だったんだよ。...シモは4年前、つまり、アイツが6歳の頃に突然アカデミーにやってきたんだ。勿論、そんな奴今まで一人もいなかった。アカデミー生は全員が物心ついた頃から入ってるもんだからな。のくせにアカデミーの大人たちは、さも当たり前のようにシモを受け入れやがった。更に超が付くほどの戦闘狂ときた。とにかく、謎が多すぎんだよ、アイツは」
話を聞けば聞くほど、シモがただの少女ではないことが露呈していくが、王子の名を使ってこのパーティー加入を認めてしまった以上、この現状を覆すことは許されない。
僕は焦りと少量の絶望を混ぜたような、そんな顔をしていたと思う。
しかし、そんな僕の肩をクレマが叩き、彼女は意外にも励ましの言葉を投げかけてくれた。
「まぁそんなビビんな。シモの実力は本物だ。アカデミーでも一年足らずで模擬戦闘1位になったし、そこは間違いない。性格は......まぁ、敵対しない限り、害はないと思うぞ。多分」
僕がシモをどれだけ恐れようと、今はその言葉を信じるしかない。
何とか意識を別の場所に移そうと、僕はシモの全身を舐めるように見渡した。すると、シモの胸元で何かが光を反射していることに気が付いた。
「ん?シモ、その胸元につけてるのって、ペンダント?なんか見たことない感じだけど」
クレマもそれに気づき、シモのペンダントをまじまじと見つめる。
「ほんとだ。なんか変な文字が書いてあるな。シモも闇市行ったことあんのか?」
僕も気になって、クレマの横でシモのペンダントをよく見る。すると確かに、安っぽい金属の表面には、『Улыбайся больше!』という見たこともない文字が刻まれてあった。
...というかこれは言語なのか?こんなもの初めて見た。
「このペンダントは大事な人から貰ったの!闇市なんかじゃないよ!」
シモはペンダントを両手で覆うと、フンっとそっぽを向いてしまった。
余程大切な物なんだな。しかし、シモを観察していると、他にも気になる点が幾つか出てくる。
シモの金色の髪、青い瞳、そして明らかに他の人たちと違う、白く透き通った肌。クレマなんかも肌は白くて綺麗だが、そういった次元の話ではなく、まるで種類の違う白さだ。
「ねぇ、シモ。シモのその髪とか、目の色とか、肌って、普通の人と明らかに違うよね。それってなんで?」
聞いた後で、自分の配慮のなかった物言いに気づく。急いで詫びを挟もうとしたが、シモは気にすることなく返事をくれた。
「うーん。シモもアカデミーでよく聞かれてたけど、生まれた時からこうなんだよね~。シモもよく分かんない!」
シモは何の屈託のない笑顔を僕に向ける。さっきと違って恐怖なんて一切感じない、純粋な笑顔。
...いや、きっとシモは最初からずっと純粋だった。僕が勝手に恐れて、彼女を見る目を変えていただけなんだ。
「ほいじゃ、自己紹介はこんなもんでいいだろ。さっさと進むぞ~。」
クレマがタイミングを見て、区切りをつけてくれた。そして呼ばれたシモと僕は、クレマに追いつくよう少し駆け足になりながら「お~~!」と掛け声を上げる。
なんだかんだクレマもシモも良い奴で、きっとこの先も上手くいくんじゃないか。なんて、まだお互いのことをそこまで知らないくせにそんな妄想してしまう。
...いや、これは妄想なんかじゃなく、直感だ。
この3人なら、何とかなるような気がする。そんなどこから湧き上がって来るのかも分からない自信が、胸の底に暖かく満ちていく。
(あと2人とも、結構可愛いし!ガハハ)
僕は煩悩の極みのようなことを考えながら、歩みを進める。
...すると、クレマが何かを思い出したように立ち止まり、僕の方を振り返った。
「あ、そうだオーゴ。お前さっきシモのこと、彼女って言ってたけど、コイツ、『男』だぞ」
「......」
僕の足が止まり、呼吸が止まり、心臓の鼓動すら止まったかのように感じた、刹那。人は理解しがたい情報が脳内に舞い込んできた時、このようにしてフリーズするのだ。
「ん?あ、あれ?...あ~、だよね~......は?マジで?」
僕はシモを二度見した。
そして、脳内に軽い雷が落ちたような衝撃が走った。
(な、ななな、なんですとォォッ!!?)
おいおいおい!
この可愛さは誰がどう見ても女の子だと思っちゃうだろ!
シモは相変わらずニコニコ可愛い笑顔を振りまきながら歩いていた。
...一応、誤解なきよう弁明しておくが、僕は落胆などしていない。
例えばシモが可愛いロリっ娘じゃなくてショックだった、等の卑俗な考えは一切ないと約束しよう。僕が年上趣味なのも、この場を借りてはっきりさせておく。
(チッ...)
ま、まぁいい!気分を上げろオーゴ!!
なんだかんだ結成した、新生悪王討伐パーティー。今の所はパーティー内の前衛が剣強おじさんから爆破美少年になっただけだが、まだまだ旅は始まったばかり。
今、ここから伝説への第一歩が始まるんだ!!!
多分!
続くっ!!
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