第9話 新生・創造神討伐パーティー
創造神討伐遠征1日目 シモ加入後...
「よし!歩きながらでいいから、改めて1人1人自己紹介しよっか。シモも入ったことだしね」
僕は二人に自己紹介の提案をした。
数分前にパーティーメンバーが入れ替わったのだ、親睦を深める意味でも当たり前の対応だろう。
シモは大きくウンウンと頷いてくれたが、クレマはめんどくさそうに無視をして遠くを見ている。
「あはは...じゃ、じゃあ!まず僕からね!」
二人共自分からも話し出す気配がなかったので、案の定僕から自己紹介を切り出すことになる。
僕は目にかかった前髪を払って右手を胸に置き、悠然と話し始めた。
「僕はオーゴ!みなさんご存じルート国の7代目王子です!えーと歳は18歳で、好きな食べ物は仔牛ヒレ肉のステーキ、嫌いな食べ物は、豚肉。あ、掌力は『入替』って言って、触った物の場所を入れ替えられるよ!何か質問ある?!」
簡潔にまとまっている、テキパキとした口調、質問を自分から求める姿勢。
うむ、我ながら素晴らしい自己紹介だ。一方、それを聞いた二人はというと...
シモはニコニコしながらテクテク前に進むだけで、この子の脳に今の情報がどれだけ入ったのか不安は残った。しかし、ダルそうなクレマがものすごく低いテンションのまま、質問を投げかけてくれたのは不幸中の幸いであった。
「じゃあ質問。なんでオウジサマはわざわざ温室を離れて旅に出るんですかぁ~?」
「いい質問だね!ルート国の王族の長男は18になると悪王討伐の旅に出ることに決まっているんだ。勿論、必ずしも生きて帰れるとは決まってないから、もしもの時は兄弟が王座を継ぐんだって。けど、僕には兄弟が居ないから、必ず今回の旅で悪王を討伐して国に帰らないといけないんだ!(あと綺麗な黒髪ロングのお姉さんをお嫁に迎え入れないといけないんだ!)」
僕は、自分で自分の卓越した宣言に思わず感極まり、足を止めて天に拳を突き刺した。その両脇を、二人のパーティーメンバーがすたすたと通り抜ける。
このような目覚ましい喧伝を耳にして尚、歩みを止めない二人には感服するしかない。
「はーい!他質問ないねー!?次行っちゃうよ!?...はい、質問タイムしゅうりょーう!じゃあ次、クレマ!」
僕は二人に追いつくように早歩きをしながら、クレマを指名する。
クレマは未だめんどくさそうに、ポケットに手を入れながら歩いていた。
「あ?なに?自己紹介だっけ?」
クレマが少し目線を逸らせて、斜め後ろにいる僕を鋭い目尻で睨む。あまりの眼圧に、僕は貼り付けた笑顔でコクコクと頷くことしかできない。
「二人共もう知ってるだろーが、....名前はクレマ。19歳。掌力は『巻戻』。簡単に言うと、触った物の時間を巻き戻せる。勿論怪我とかを治すこともできるが...コレがちょっとややこしくて、詳しいことは今後実際に見せる時に説明してやる」
なんだかんだ言いつつ一通りの自己紹介をしてくれたクレマは、一呼吸おいて自己紹介に補足をした。
「.......旅に出た理由は、外の世界が知りたかったから。そのためにアカデミーで主席を取って、創造神討伐遠征に参加する権利を勝ち取った。それだけだ」
クレマは少しぶっきらぼうだが、なんだかんだ僕たちをパーティーメンバーとして信用してくれている気がする。そして彼女の、なんというか、一人の少女らしいその理由に、少し距離が縮まった気がした。...無論、一方的にだが。
「なるほどねぇ。...ところでクレマ、最初に会った時からずっと気になってたんだけど、そのファッション、なんか独特だよね。城下町の人達の着ているチュニックとかと全然違うし」
僕はずっと気になっていた話題を振ってみた。
頭にかけてある、薄緑色の丸い眼鏡のようなもの、スタジャンと言っていた奇妙な上着、ジーパンと呼んでいた見たことのないズボン。靴も普通の革靴ではなく、なんだかカラフルだ。
クレマは意外にも、この話題に好反応を示した。
彼女は周囲を見渡し、なにか犯罪めいたことを言うように、ひそひそと話始めた。
「ジンマが居たら話さなかったが、お前ならいいか。...実はな、ルート国には、闇市ってのがある...」
闇市。
思ったよりも不健全で犯罪めいたその響きに、思わず固唾をのむ。
「や、闇市...」
「そこには城下町じゃ見たことのないようなモンが沢山売ってんだ。しかもそこは城の関係者とアカデミー生立ち入り禁止。だから市民のフリをして忍び込むんだよ。...この『サングラス』っていうイカした眼鏡も、『スニーカー』っていうカッチョイイ靴も、そこで手に入れた。それと...」
そこでクレマが立ち止まり、自分のリュックの中ををガサガサ漁り始める。
今度は何が出てくるにかと興味と不安を抱えて見守っていると、中から黒光りした、奇妙な形の金属が出てきた。
「この『拳銃』っていう武器も、そこでゲットした」
(武器!?)
僕は、僕の父が統治しているあの平和なルート国で武器が密売されているという事実が、途轍もなく受け入れがたかった。
武器という言葉に釣られたのか、先を歩いていたシモのアホ毛がピンと立ち、彼女は目を輝かせてこちらに近づいて来た。
「拳銃は弾を装填して撃つんだが、コレがまたウチの掌力と相性が良くて、弾を撃ったら時間を戻してすぐ補充できるってことに気が付いたんだ」
クレマが珍しくペラペラと説明してくれている。しかし、闇市という我が国の闇を知ってしまった吃驚、そして単純な情報量の多さから、僕の脳は一旦これ以上の情報を門前払いにしていた。
「そんでもってこの拳銃は......ん?おいオーゴ、どうした?話聞いてるか?」
僕の呆けた表情に気づき、視界に入るようにクレマが手を振る。
「あ、あぁ、だ、大丈夫、...それで、じゃあその髪色とか、耳飾りも闇市で...?」
クレマは僕の質問を受けると、自分の緑色の髪をいじりながら答え始めた。ちょっとかわいい。
「いーや?アカデミーだってそんな自由がないわけじゃねぇから。ピアスも髪色も、普通に城下町の店でやってもらった」
そうか。確かに最近は髪を染めることのできる散髪屋や、お洒落でピアスをつけている市民を時々見かける。
僕はそういった流行りに鋭い方ではないので、あまり興味はないが。
「成程。...ま、まぁ、一旦闇市関連の話は置いといて.....、クレマさん!自己紹介ありがとうございました!続いてシモさん!お願いしま~す!」
僕はこれ以上、脳内に余計な知識を増やしたくなかったので、シモに自己紹介をさせることにした。彼女の自己紹介は簡潔に済みそうだったしな。
シモはニコニコと笑顔を作って、元気いっぱいに口を開いた。
続く!!




