第8話 模擬戦闘一位VS最強剣士
国歴248年 創造神討伐遠征1日目
旅が始まってわずか数分。俺達の目の前に初めて立ち塞がったのは、創造神の手勢でもなければ、大人でもない、一人の少女であった。クレマが教えてくれた彼女の名前は、『シモ』。
しかも、彼女の正体はただの少女ではなく、『アカデミー模擬戦闘部門1位』の強者であった。...しかし、シモが勝負を挑んだコチラのパーティーの前衛、『ジンマ』も、国内随一の剣豪である。
そんな、『アカデミー最強VS最強剣士』という、好カードの戦いの火蓋が今、切って落とされた。
...のだが、
その勝負の結末は、呆気ないほどに一瞬だった。
2人の戦いが始まってすぐ、シモは足元に転がっていた数個の石ころを、ジンマに向かって投げつけた。
僕はその投石の意味を理解できずに、ただその光景を眺めていた。その石ころはばらけながらも、ジンマの元へ降り注ぐ。
しかし、そこは流石ジンマである。彼は余裕な表情ですべての石ころを避け、反撃への一歩を踏み出した。
その時だった。
「ボカァーーン!!!」という、聞いたこともないような爆音が、僕の鼓膜を震わせた。
目を白黒させている僕が見た光景は、ジンマが爆炎に包まれる刹那。そして次の瞬間、ジンマは黒く立ち昇る煙の中から、吐き出されるようにして吹き飛んでいった。
何が起きたのか理解するには、数秒の時間を要した。
少ししてやっと、ジンマが避けた石ころが爆発したことを理解して、更にその後に爆発がシモの掌力によるものであると理解する。そしてその頃には全てが終わっていた。
吹き飛ばされたジンマは既に意識がなく、その時点で誰の目にも勝敗が明らかであった。勝負の女神は、ゲラだったようだ。
あまりの一瞬の出来事に、僕は開いた口が塞がらず、クレマは知っていたかのようにため息を吐き、シモは不満そうな表情をしていた。
シモは腰に手を当て、柔らかそうな白いほっぺたを膨らませる。
「弱いな~」
一体、この少女の目的は...
恐らくルート国で一番の剣豪であり、我がパーティの前衛であるジンマ。そのジンマをものの数秒で戦闘不能にさせ、「弱い」で一蹴するシモ...
「まぁいいや。これでシモがこのパーティーのぜんえいになったね!」
そういうと、シモは金色の髪を靡かせてトコトコこちらに近づいてきた。
そういえば、そうだ。この子の目的は、このパーティーの前衛になることであった。
近づいて来たシモの顔をまじまじと見てみると、本当に綺麗で繊細な顔立ちをしていることがわかった。
僕がガラス細工のようなシモの顔に見入っていると、クレマが小声で僕に耳打ちしてきた。
「おい...!まさかとは思うが、本気でシモをこのパーティーに入れるつもりじゃねぇだろうなぁ...!?」
確かに、最初はこんな小さい子をパーティに入れるなんて論外だった。
しかし...!いざシモの火力を目の当たりにすると、この子はこのパーティーの戦力を文字通り爆発的に上げるに違いないと納得せざるを得ない。
僕は脳内時間で三日ほど悩んだ後、結論を導き出した。
「よし!」
僕はシモの肩に手を置き、彼女の大きく青い瞳を見て口を開く。
「シモ、君を今日からこのパーティーの前衛として任命しよう!ルート国王子の名において!」
僕は今この時、シモをこの創造神討伐パーティーの前衛として任命した。
シモの表情が、満面の笑みに変わる。
「やたーーー!!これからよろしくね!クレマ、むすこ!」
「権力を濫用すんじゃねぇええぇ...!!!」
クレマは両手で頭を抱え、腹の底から絞り出したような呻き声で僕を罵るが、もうこの決定は覆らない。一応、クレマにはこの判断に至った経緯を説明しておこう。
「まぁ落ち着いて、クレマ。シモを選んだのには理由がある。まず一つ、あの掌力!あんな強い掌力があれば、並みの敵は一発だよ。この先、戦闘は増えるだろうし、この力を見逃すことはできない。そして二つ目、ジンマより良い!ジンマみたいに加齢臭はしないし、ジンマと違って見てて癒されるし、今後ジンマと一緒に生活するよりも全然良い!」
これだけの確固たる理由があれば、クレマも納得せざるを得まい。
クレマは暫く、目の前でニコニコしているシモと、丸焦げになって倒れているジンマを見比べていた。
そして結局は諦めたように、「まぁ...それも...そうか.......」と言って、了承してくれたのであった。
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「よいしょっと。...僕の掌力で城に帰してもよかったけど、それだとすぐに追ってきそうだからこれでいいや。通りすがりの商人かなんかが見つけてくれるっしょ」
僕は、プスプスと煙を発し続けるジンマを岩にもたれかからせ、自分の装備についた煤をパパッと掃った。
「よぉし、それじゃあ!新生創造神討伐パーティー、行くぞー!」
「おおーー!!!!」
「あー...」
シモにはジンマの荷物をそのまま持たせ、僕は早々に足踏みをすることとなったこの旅の再出発に喝を入れた。
シモと仲間としての握手を交して、僕達は再び歩き始めたのであった。
続く!!
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