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ハンド・リベリオン~模造物語~  作者: 人面菟葵
パーティー結成...?
2/5

パーティー結成だヨ!全員集合

前回のあらすじ


城の一室で朝食をとる少年は、このルート国の王子、『オーゴ』。

国王である父親と雑談を交わしながらも、今日が『悪王討伐遠征』のパーティーメンバー顔合わせ日だったことを思い出す。

急いで城の外へと駆けていくオーゴ。

その頃にはもう、今朝の夢の事なんか忘れていた。


国歴248年 春 ルート国  

朝食の後....




(ふぅ、待ち合わせは城の前の噴水となっていたし、ここで待っていれば大丈夫かな....)


僕は噴水の前に設置されたベンチに腰掛け、城下町を眺める。

そんな僕の目の前を、元気な子供たちが楽しそうに駆けて行った。


(城下町はいつ見ても活気があって素晴らしいなぁ。)


この国、ルート国は人口およそ20000人。


城の前に位置する、レンガ造りの大通りには店がひしめき合い、様々な野菜、果物、魚、肉などが売り捌かれている。

他にも鍛冶屋や薬屋など沢山の店があるが、中でも目を引くのは、この国で城の次に大きい建物、『アカデミー』だろう。


『アカデミー』

それは0歳~19歳の掌力を持つ子供たちが住み、学習や戦闘訓練をする施設。

全寮制で、掌力があると診断された子供たちは生まれてすぐに親元から離れてここで生活する。

他の国にもこの制度があるのかは知らないが、この国では掌力を持つ子供達はここで生活をすることが義務付けられている。

僕は王族なので、掌力を持っていてもアカデミーには通わず個別で学習や戦闘訓練をしているが、よく城下町で買い物や走り込みをしているアカデミー生を見かける。



(それにしても、...うーん、やっぱりアカデミーのシステムは謎が多いよな。)


僕は昔から、このアカデミーの制度に疑問を持っていた。

なぜ0歳から住む必要があるのだろうか?

ルート国の広さならどこに住んでいても徒歩で通える距離なのだから、果たして全寮制にする必要はあるのか?

そもそも親は、例え子供が掌力を持っていたとしても、自分の子が生まれてすぐに親元から離れることに納得しているのか?

などなど、僕はずっと考えていたのだ。


僕は、この国の王である我が父をそこそこ尊敬しているものの、このアカデミーの制度はあまり納得できないでいる。

なぜ親から子を取り上げるような施設を創ったのだろうか。



(......あー!ダメダメだ!初対面のパーティーメンバーと会おうって時に変なこと考えんな!!...アカデミーは僕が国王になった時に廃止する、今はそう考えていよう!!ウン!)



それにしても。


(もうそろそろかな...)


僕は今か今かと、来るはずの二人を待っている。

1人でソワソワしている王子はカッコ悪いだろうか....


まぁ、仮にカッコ悪くても、僕はソワソワを止められないだろうが。


なんせ僕はこれまで、人生の大半を城の中で過ごしてきた。

見知った使用人ばかりが働く城内には、新しい出会いもなければ、心ときめく交流もなかったワケだ。

そんな人生を歩んできた年頃の少年が、今回のパーティーメンバーの顔合わせで、新たに『仲間』と呼べる存在と出会う。

そりゃあソワソワするなという方が無理な話であろう。



(はぁ~、どんな人が来るのかな~?歳は何歳くらいかな~?できれば僕と近い、18前後がいいなぁ~。っていうか男性かな?女性かな?できれば女性がいいなぁ~。...もし男が来たら、最初っからタメ口でいったろ。)



因みに、パーティーメンバーは僕の父さんが選定してくれた。なので僕はどんな人が来るのかを全く把握していない。

父さん曰く、「今年はお前の為に、例年以上のツワモノも組み込んでやったから、安心しろ!」らしい。

何だか王子の僕が悪王討伐遠征に出る時だけ、権力を使ってエリートを寄せ集めているみたいで少し嫌だけど、実際、命を預ける仲間はそれなりの実力を備えてる方が心強い。



...その時だった。

そんな妄想をグルグルと張り巡らせていた僕の肩を、張りのある声が勢いよく叩いたのは。



「お待たせいたしました、オーゴ()()()()()!」



その声は予想に反し、城下町の方からではなく、僕の背にある城の方から聞こえてきた。


.....それもそのはず。

その声の主は、城で働く使用人の一人であったのだ。


僕は目を白黒させて、その使用人に恐る恐る質問をする。


「あれ...?ま、まさかとは思うけど、もしかして、悪王討伐遠征のパーティーに入ったりする....?」


「その通りございます!この()()()、オーゴぼっちゃんの御父上、()()()()から任ぜられ、馳せ参じました!」


彼の嫌になるほど溌剌(はつらつ)な声に顔を歪めながらも、僕の心は重く沈んでいった。


(うわぁ、最悪だぁ...)


僕はこの先の冒険を心機一転、まだ見ぬ『仲間』と共に歩む予定だったのだ。

しかし、この目の前の使用人、『ジンマ』は、僕が幼い頃から剣術を教わってきた人間であり、今年で50歳くらい。

目新しさもなければ、「新鮮」の「し」の字もない。


こんな人間と歩む冒険で、心機を一転なんてできる訳がない。


(ジンマには申し訳ないが、これはチェンジだな...)


僕は表面上申し訳なさそうな表情(カオ)を作り、ジンマの肩に手を掛けて言葉をかける。


「ジンマ、ごめん。ちょっと父さんに掛け合って、変えてもらうね...。」


「いや、ちょ、え!?何でですか!一緒に行きましょうよぼっちゃん!」


ジンマは焦って弁明をしだす。

彼の白髪交じりのピシッとしたオールバックが、少しだけ乱れた。

僕はジンマが伸ばしてきた手を振り払い、何とか父の元へ直談判しに行こうと躍起になる。


「いやだ!何が悲しくて50のおっさんと冒険すんだ!使用人は使用人でも、せめてあんまり面識のないメイドとかにチェンジしてくれェ!」


「ぼっちゃん!それは聞き捨てなりませんぞ!ジンマは確かにおっさんですが、城の使用人の中では一番近接戦闘に長けております!なのでパーティーの前衛としてカイ国王直々に任命されたわけです!そんじょそこらのメイドには務まりませんぞ!」


城へ足を運ぼうとする僕の行く手を阻みながら、ジンマは自身の有用性を力説している。

しかし!そんな正論はメイドを求める僕の前に鮮少の説得力も持たないのだ。


「いやだいやだ!それでもメイドがいいんだぁ!」


ワチャワチャ...


するとその時、背後から透き通った声が聞こえてきた。



「...えっと、お前らがウチと組む、悪王討伐遠征のパーティーメンバーであってる?」



中年男性と絡み合っていた僕に質問を投げかけるその声は、間違いなく女性の声であった。


(今度こそキタッ....!!)


これは黒髪ロングのお姉さんの可能性が、なくもない!

僕は目の前の中年男性を振り解き、軽やかに振り返る。

彼女のクエスチョンに、高貴なアンサーを添えて...



「はぁい!僕がカイ国王の息子で、王子の!オー...ゴ...です......」



そりゃ勢いも衰える。

僕が振り返った先にいたのは、黒髪ロングのお姉さんなんかではなく、緑髪ショート両耳ピアスのイカつめお姉さんだったからだ。



「ふーん、あっそ。ヨロシク王子。」



(お、おぉん...)



僕は彼女が差し出した右手と、恐る恐る握手を交わした。



本当にこのメンバーで行かなきゃダメなの...?

悪王討伐遠征...

最後まで読んで頂きありがとうございます!

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