記憶
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王のスピーチで沸き立つ大広間を背に、俺は一人、城の最上部へと続く時計塔の階段を駆け上がっていた。
「ハァ、ハァ……っ!」
薄暗い螺旋階段。カチコチと響く巨大な歯車の音だけが、耳障りに鼓膜を揺らす。
その時だった。
『SAN値の異常により、一時的な感覚混線ペナルティが付与加算されます』
「はぁ!? ふざけんなこのタイミングで!」
悪態をついた瞬間、首元につけられた翻訳機が、火傷しそうなほど急激に熱を持った。
「熱ッ!?」
カチャカチャと翻訳機がバグったような音を立て、ノイズに混じって『誰かの声』が直接脳内に流れ込んでくる。
『……ミノルさん、どうかご無事で。私、ずっと……』
(なんだ、これ? 女の人の声……ミノルって誰だ?)
俺の知り合いにそんな名前のやつはいない。システムのエラー音にしてはあまりにも生々しく、どこか古いラジオの音声のような響きがあった。
不気味さを振り払うように階段を駆け上がり、俺はようやく時計塔の最上階、巨大な文字盤の裏側へとたどり着いた。
そこは、異様な空間だった。
無数に噛み合う巨大な歯車。だが、よく見るとそのうちのいくつかが、猛スピードで『逆回転』している。
(時間が……戻ってるのか?)
外の時間は普通に進んでいるのに、この部屋の歯車だけが狂ったように逆行している。だから現実世界と50年ものズレが生じているのか?
ふと、逆回転する歯車の隙間に、何かが引っかかっているのが見えた。
「……ん?」
近づいて手を伸ばす。それは、このファンタジーな異世界には全く似つかわしくない、色褪せた一枚の『白黒写真』の切れ端だった。
写っているのは、日本の古い軍服のようなものを着た青年の首から下だけ。顔の部分は、鋭いペン先のようなもので執拗に、真っ黒に塗りつぶされている。
「なんだよこれ……」
ただの紙切れのはずなのに、そこから酷く禍々しい『怨念』のようなものを感じた。写真の裏側には、かすれた文字で『裏切り者の血筋』とだけ書かれている。
直感的な悪寒に襲われ、思わず写真を取り落として後ろずさりしたその時だった。
『漸くここまで登ってきたねぇ。私の可愛い坊や』
背後の暗がりから、静かで、酷く冷たい魔女の声が響いた。
魔女はニヤリと見つめ少しずつこちらに近寄ってきたーー。
花粉症辛いお(´;ω;`)
先週熱出た orz




