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ゼロの創世記  作者: hayabusa_zero
第3章 かーばんくるぱにっく! ~スイーデの鼠騒動編~
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5.レイの弱点?

「…なんやて、在庫切れ?!」

 翌朝の商業ギルドカウンターに、ルナの快活な声が響き渡る。受付職員の男性は、申し訳なさそうな表情で手元の在庫票を眺めている。

「申し訳ありません。今年は冒険者ギルドでの買取数が非常に少なくてですね、一週間程前から在庫不足になっていまして…」

「買取数が少ない?」

「ええ。採取に向かった冒険者はいるらしいのですが、見つけて帰ってきたものは極少数でして…。必要であれば隣街から取り寄せますが、しばらく時間はかかるかと…」

「…まぁ、不作なんはしゃあないなあ……よし、ちょっと様子見てくるわ」

 そう言って足早に去ろうとするルナを、職員は心配そうな声で呼び止める。

「ひ、一人で行かれるんですか? 危険な魔物の出現報告もありますが…」

「なあに、心配せんでもパーティのアテもあるし、一人で行くなんてアホなことはせえへんよ」

 そう言ってルナはあの三人組がまだ出発していないことを祈りつつ、冒険者ギルドへと向かうのだった。


 一方僕たちは、数日分の食糧をバッグに詰めて冒険者ギルドを訪れていた。

「しかし、討伐依頼は久しぶりだなぁ…」

「ピンチビートルって、どんな魔物なんだろう?」

 昨日、カーバンクル駆除依頼の達成報告をした際に、ギルド職員から魔物の討伐任務に参加してほしいという話が合ったのだ。話によると、ピンチビードルという魔物がクスリの森と呼ばれている場所を荒らしているらしい。

「本によると、頑丈な顎を持つ昆虫型の魔物で、顎の力で木々を薙ぎ倒すらしいよ?」

「そんなことされたら、貴重な薬草が荒らされちゃうじゃん! 早く止めないと…」

「甲殻種は硬い殻に守られていて攻撃が通りにくい。私が注意を引き付けるから二人は関節を狙って攻撃する」

「うぇ~…甲殻種、めっちゃ厄介なんですけど……」

 などと話しながらクエストの受注手続きを済ませていると、僕たちに駆け寄ってくる人影があった。

「お、おったおった。お~い!」

「あれ、ルナちゃん? 商会での用事は終わったの?」

「いや~それが、目当てのブツは置いとらんかったんよ。それで、無いなら採りに行くかと思うてな」

「それは災難だね…。ところで、何を探していたの?」

「それはなぁ…っと、あったあった。これや!」

 そう言ってルナは、ある採集のサブクエストを持ってきた。

「ハウリンクフラワー?」

「せや。普段はクスリの森で仰山採れるんやけど、今年はさっぱりらしくてな。そ・こ・で、あんた等クスリの森に向かうんやろ? あたいも一緒に連れっててぇな」

「連れてって…と言われても、僕たちDランクの討伐クエスト受けてるからなぁ…ルナさんまだFランクでしょ? ちょっと守り切れないかと…」

 そう僕が苦言を漏らすとルナは一瞬苦い顔をしたが、すぐに何かを閃いたような表情をすると、潤んだ瞳を浮かべて僕にもたれかかってきた。

「うぅ…あたいの生まれたままの姿を見たんはあんただけなのに……昨日のあたいとのアレは遊びやったん…?」

 唐突の爆弾発言に、周囲の人々が一斉にこちらを向いた。し、視線が痛い…!

「え?! あの、ルナさん? その誤解を招く言い方やめてもろて…」

「あたいはあんたについて行くって覚悟決めたんよ? それなのに…あんたはあたいの事置いてってしまうん…?」

「ああもう、分かったから! だからもうこれ以上変なこと言うの止めて…!」

 そう言うと、ルナはにやりと笑って僕の手を取った。

「…本当? 本当にあたしも連れてってくれるん…?」

「もういいよ、これ以上変な話されたら困るし…」

「ふっふっふ。そうと決まったら早速行くで!」

 そう言うとルナは僕の手を引っ張って、ギルドの外へと連れ出した。その後ろで、リーシェとシイは小声で話し合っている。

「…成程。レイはああいう押しに弱い」

「つまり、無理矢理にでも既成事実を作ってしまえばわたしもレイさんに振り向いてもらえるかな? でも、ちょっと恥ずかしい…!」

「ただ問題は、我々に強力なライバルができる可能性ができた」

「ルナちゃんも悪い人じゃないですし…わたしたちの同盟に引き込めないかな?」

「…とりあえず、暫くは様子見。不穏な動きを見せたらその時は……」

(いったい何の話をしているんだ…?)

 そんなことを思いつつ、僕たちはクスリの森へと向かうことになったのだった。

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